こんにちは。ライターのサブローです。
今回の記事は、不動のバリオス(バリオスⅡじゃないほう)を復活させる奮闘記となっています。
要約すると「キースター燃調キット」という製品を使ってキャブレターのオーバーホールをしたよ、という内容です。

ただ皆さんも周知のとおり、バリオスは4気筒エンジン+4連キャブです。しかしボクはこれまで単気筒エンジンのシングルキャブしか触ったことがありません。
4連キャブって同調を取らないと(1~4番のキャブレターにかかる負圧を均一にすること)いけないし、専用工具も持っていません。そんな状態でキャブレターのオーバーホール…。できるのでしょうか?
バリオスの状態

「これなら3万円だね」。車両を見せるなりバイク屋さんからズバっと言われました。つまりそんな状態です。
不動という状態に加えてサビ&キズだらけだし、塗装もハガレあり。そのうえ中途半端にカスタムされていて万人受けするビジュアルではありません。バイク屋さんいわく「純正マフラーが残っていれば高額なんだけどね~」とのこと。もちろん残っていません。



実はこのバイクは知人の愛車なんです。人気モデルのバリオスがたった3万円という査定額にショックを受けて「それなら直してもう一度乗りたい」と言い始めました。
で、そのお手伝いをボクがすることになった…ということです。
目標はエンジンがかかるようにすること!
キャブレターの中は…



知人いわく3年間ほど放置しており、その間はエンジンを1度も始動していないとのこと。
空けてみると穴という穴が汚れで埋まっていて、パーツの一部は腐食によって変形していました…。最初は「内部洗浄だけで済めばラッキー」くらいに考えていましたが、もはやそんなお気楽も言えない状態です。
こうなっては中のパーツをすべて交換しなければいけません。

こんなときに役立つ製品が「キースター燃調キット」。モトメガネで数々の不調バイクをよみがえらせてきた実績をもつ製品! …なのですが、キャブの惨状を見ると怪しくなってきました。
キースター燃調キット

キースター燃調キットは、岸田精密工業が手がけるキャブレター用リペア&セッティングキットです。
キャブレターを構成する主要なインナーパーツがすべてそろっていて、これらを交換することでキャブレターの修復ができるというスグレモノです。しかもお値段4,400円!(一部車種除く)
ジェットやニードルはもちろんガスケットまでメーカー純正品を100%に近い形で再現。ほとんどの製品を自社工場で製造するメイドインジャパンの信頼性もあります。
また、燃料の濃さを決める3つのパーツ、メインジェット、パイロットジェット、ジェットニードルは複数のサイズが用意されているので、乗り手の好みに合わせてセッティングできるんです。
対応車種は今も増え続き、メジャーからマイナーなバイクまでその数はなんと500車種以上! 気になるあのバイクも対応しているハズ(※)!
※対応する燃調キットが見つからない場合は、問い合わせフォームや電話で相談すると、可能な限り対応してくれるとのこと!
純正+プロ=10万円、DIY+キースター燃調キット=1万7,600円
1キャブあたり4,400円で購入できるので、今回は4,400円×4セット=1万7,600円です。対して純正パーツはどうでしょうか? ざっと調べたところ、キャブのインナーパーツを新品でそろえようとすると約8,000円×4セットで=約3万2,000円。2倍の価格です。
しかもショップに作業を依頼すると工賃が4万~7万円(編集部調べ)ですので、最大10万円かかってしまう計算。こう考えるとキースター燃調キットをDIYで使うことがものすごくオトクに感じます。
◆キースター+DIY=1万7,600円
◆純正パーツ+プロに依頼=最大10万円
汚れたキャブレター内部を洗浄+新品交換
順序が前後しましたが、タンクやエアクリーナーボックスを外してキャブレターを取り出す作業について。実はこの作業がキャブメンテナンスで一番の難関です。
この作業って設計が新しいバイクほど難しくなると思っています。スロットルセンサーやブローバイ還元装置、エアインジェクション(どちらも未燃焼ガスを大気中に放出しないための機構)なんかが付いていて、取り外すパーツが多い上に構造が入り組んでい知恵の輪状態だからです。さらに作業スペースもギチギチで整備性がよくありません。しかし意外にも…?


なおこのバリオスは93年式。エアクリーナーを取り外すだけでキャブレターまで簡単にアクセスできました。古いバイクだから? 新しい年式のシングルキャブよりも難易度は低かったです。
洗浄+交換作業はシングルキャブと同じ
4連キャブのオーバーホールに自信がなかったため、実は前もってプロの整備士さんに相談していました。その整備士さんは「シングルも4連も作業は同じだよ? 大丈夫だって!」と言っていました。
そのときは信じられませんでしたが、いざ作業してみるとその言葉どおりでした。考えてみれば当たり前のことなのですが…。
ただ、ここで問題になる作業が4連キャブの「同調」です。これは1~4番キャブにかかる負圧をそろえる作業で、バキュームゲージという専用工具を使う方法が一般的です。
ただ、その整備士さんはバキュームゲージを使わず、目視とデプス(すき間)ゲージで同調をとるそうです。

10円玉と結束バンドで同調をとってみた

整備士さんが言うには矢印のすき間が4つとも同じになっていればOKとのこと。その人は裏から光をあててすき間を確認するのだとか。
ただ、ボクは見ただけじゃまったくわからなかったので、バタフライバルブを固定するようにスロットルに10円玉をはさんで固定。するとバタフライバルブのすき間が安定するので、中に結束バンドを差し込んでその感触で開き具合判断することにしました。


まとめ
同調も無事にとれて、キャブレターを車体にセットしたところ、エンジンが始動しました! 吹け上がりも悪くありません。オーバーホール大成功です!
実は今回、単にオーバーホールをするだけでなく「どこの家庭にもありそうな工具だけを使うこと」をテーマに作業してみました。
4連キャブのオーバーホールはハードルが高い作業です。その理由に「費用」と「工具」という2つの問題があると思います。
でも費用に関しては、今回はキースター燃調キット(1万7,600円相当)と10円玉2枚のみ、工具もありふれたドライバーやレンチしか使っていません。

キースター燃調キットを使って、少しの工夫を凝らすことで4気筒エンジンのオーバーホールも夢ではありません!…ということをお伝えしたかったのです。
もっと言うと、80~90年代の4気筒バイクは整備性がよく(車種によりますが…)、いまだ人気が高いモデルも多いです。そうした不動or不調バイクを安く購入して、復活させて楽しむという最高の遊びだってできちゃうんです。そう、キースター燃調キットがあれば。しかも格安で!
あなたの身近に、眠っているオートバイはありませんか?
(編集協力:岸田精密工業株式会社)








