愛知県名古屋市天白区に店舗を構える旧車・絶版車専門ショップ「コンボイ」は、空冷ZやCBを中心とした国産旧車に特化し、整備・販売・カスタム・オリジナルパーツ開発まで手がけるプロショップだ。

キャブレターモデルであるZやCBの人気はとどまることを知らず、コンボイには絶え間なく旧車ファンからカスタム・レストアの依頼が続いている。しかしその一方、巷ではバイクを選ぶ際に「キャブレター車はトラブルが多い」といった理由から避けべきとする意見もある。
キャブレターだからという理由で旧車を敬遠する考えは正しいのか? 40~50年前の車両を今も現役マシンとして走らせ続けるコンボイにその疑問を投げかけてみた。
コンボイとキースター燃調キットの関連性

コンボイではキャブレターをはじめとする主要機関のオーバーホールの前提として「使える部品を見極め、使えないなら交換」という基本方針が徹底されている。しかしその交換が年式の古いバイクでは容易でない。
コンボイ:
「キャブレターは消耗品の点数が多く、すべて純正部品に交換するとかなりの数になります。しかも4連キャブの場合、総額は数万円。お金で解決できる問題ならいいのですが、すでにメーカーが生産が終了しているパーツもありますから、そろえることは困難でしょう」

そうした問題を解決するため、コンボイが活用している製品が「キースター燃調キット」だ。1キャブレターあたり4,400円(税込)というリーズナブルな価格設定(※)ながら、500車種以上の対応車種をラインナップし、キャブの型式・年式に応じて、必要なジェット類・パッキン・ニードル・フロートバルブなどが一式でそろう。まさに旧車整備の救世主とも言える存在だ。
(※)一部の車種を除く
キースター燃調キット

キースター燃調キットは、兵庫県に本拠を構える岸田精密工業が手がけるキャブレターのリペア&セッティングキットだ。500を超える幅広い車種に対応しており、旧車を取り扱うプロショップやサンデーメカニックから高く評価されている。
製品の特長は以下のとおり。
◆純正パーツを徹底再現
→純正キャブレターのインナーパーツの寸法・形状を忠実に再現している
◆オーバーホールに必要なパーツ構成
→ガスケットやOリングなど、キャブレターのオーバーホールに必要なパーツがそろっている
◆多様なセッティングパーツ
→ジェット類やニードルが複数同梱されており、エンジンの状態やカスタム内容に応じたセッティングができる



つまり、キャブレター1つあたりに必要なパーツが車種ごとに用意されたキットで、これらを交換することで新品キャブレター並みの性能を取り戻せるというモノだ。
キースター燃調キットで絶版バイクが当時の性能を取り戻す
── キースター燃調キットを使っていて「よかった」と感じることは?
コンボイ:
「燃調キットとは少し違うのですが、キースターには「フロートバルブ バルブシート蘇生キット」という製品があります。これにすごく助けられていますね」

コンボイ:
「フロートバルブの受け部分をバルブシートといいます。ここが摩耗するとフロートバルブを新品にしてもガソリンの流れが止まらずオーバーフローするんです。
かなり重要な部品なのに、車種によってはキャブ本体に圧入されていて取り外せない構造なんですよ。
つまり、数百円のバルブシートを交換するために何万円もする新品のキャブボディ(廃盤になっている車種がほとんど)を買わないといけないんです。

(引用:岸田精密工業 公式Youtube)
でも、この蘇生キットを使えばバルブシートだけを抜き取って、新品に交換できます。
こうした細かいパーツまで対応してくれているので本当に助かっています」
キャブセッティングの魅力は「プロの90点より、自分の100点」
── 燃調セッティングについてはどうでしょうか?
コンボイ:
「キャブレターは個体差によって同じセッティングでも、走りに違いが出ることがあります。古い車両だとそれが顕著ですね。キースター燃調キットは、そうしたところも見越して複数のジェットやニードルが用意されているのだと思います。

ちなみに、100点のキャブセッティングは乗り手によって違います。プロが100点のつもりでセッティングしても、オーナーにとっては90点だと感じるケースがあり、その逆もめずらしくありません。
キースター燃調キットは細かくセッティングを詰められますので、ぜひ自分だけの100点のセッティングを見つけてほしいですね」
── キャブレター車の面白さはそこにある?
コンボイ:
「面白さのひとつであることは間違いないですね。たとえばマフラーを交換すると走りが変わりますよね。そこからジェット番手を変えるだけでさらにもう一段階違いを感じられます。こうやって自分の手でセッティングを突き詰めることも、旧車を所有する醍醐味の一つだと考えています」
キャブ・インジェクションそれぞれにいいところがある
── インジェクション車とキャブ車のそれぞれ「いいこと」「悪いこと」は?
コンボイ:
「まず『キャブ車はトラブルが多い』という点について。乗らずに放置したりセッティング不良などで調子を崩しやすい。これはキャブ車の弱点といえるでしょう。ですが、構造がシンプルなうえ、旧車専門店ならトラブルの原因を突き止めるノウハウを持っています。キースター燃調キットのようなリペアキットもありますし、修理すること自体は難しいことではありません」
── ではインジェクション車は?
コンボイ:
「インジェクションは安定した燃料供給をしてくれますし、ある程度なら乗らずに放置していてもエンジンをすぐ始動できることが大きな魅力です。
ただ、一度トラブルを起こすと手がかかることが多い。診断機がないと分からない不調があるうえ、やっかいなことに診断機でも特定できないケース(燃料ポンプの電圧不足など)もあります。ECUが壊れたらユニットごと交換。当然修理費用も高くつきます。
あとは、何の前触れもなく突然故障することがあります。徐々に調子を崩すのではなく突然死というケースです。そうなるとツーリング先で乗って帰れないこともありますね。対してキャブ車は、燃料さえ流れ込んでいれば調子が悪くてもなんとか走れる利点があります」
まとめ:燃調キット・旧車ショップがキャブレター車を支える
インジェクション車が全盛の今、キャブレターのネガな部分が取り沙汰されることもあるが、両車ともに一長一短であって同列に比べることは難しい。ただ「トラブルが多い」といった先入観だけでキャブレター車を敬遠する選択は正しいとはいえない。
キャブレターには、単なる古い機械という枠を超えた魅力がある。オーナーが手をかけて調整する楽しさやトラブルシュートのしやすさ、そしてシンプルな構造から生まれる乗り手との一体感などだ。
メンテナンスフリーで乗り続けることはさすがに難しいが、手をかけた分だけ応えてくれることがキャブレター車の魅力。ユーザーがそうした楽しみを長く続けられるよう、キースター燃調キットや、コンボイをはじめとする旧車のプロフェッショナルがある。
こうしたバックボーンのおかげで、キャブレター車はいつまでも現役選手でいられるのだ。
取材協力:絶版車・旧車パーツ専門店コンボイ

コンボイが取り扱う車両は、空冷ZやCBど、1970~80年代を代表する車種が中心。車両の販売・修理・レストアのほか、さまざまなオリジナル製品も展開している。
古い空冷エンジンと相性がいい固めの鉱物油をベースとした同社オリジナルオイルや、オリジナルマフラー・シート・バッグ類も多数展開している。気になる人はコンボイ公式サイトをチェック!



住所:愛知県名古屋市天白区中平五丁目2104
TEL:052-805-7210
営業時間:10:00~19:00
定休日:火曜日、水曜日、第4日・月曜日
(編集協力:岸田精密工業株式会社)








