石狩市は、日本海と石狩川が育んだ豊かな自然に包まれたまちです。日本海沿岸から内陸部へと細長く広がるエリアを有し、旧石狩市・厚田村・浜益村の合併によって現在の姿となりました。新鮮な海の幸に恵まれ、古くから続く文化が今も息づいています。知っているようで意外と知らない石狩の魅力を探しに出かけましょう。
開けるとおいしい老舗洋食店「ぱんどら」

旅は市役所本庁があるエリアからスタートします。まずは住宅街にひっそり佇むレストラン「ぱんどら」で腹ごしらえしましょう。店名はギリシャ神話の「パンドラの箱」に由来し、「最後に希望が残った」という物語になぞらえ、「料理で元気になってほしい」という願いが込められています。

開業当初は「パン屋?どら焼き屋?」と勘違いされることもあったそうですが、手頃な価格で楽しめる本格洋食が評判となり、今では地域を代表する老舗洋食店になりました。ハンバーグやカレー、パスタ、ドリアなどが人気。札幌から通うファンが多いのも納得です。
難読名が続く国道231号

国道231号を北へ走ると、花畔(ばんなぐろ)、生振(おやふる)、濃昼(ごきびる)、毘砂別(びしゃべつ)など、思わず二度見してしまう難読地名が続きます。その多くはアイヌ語に由来しており、全部読めたらかなりの北海道ツウです。
道の駅で「柔らか蛸DEたこ飯炊きました。」を食らう

日本海を一望できる高台に建つ「道の駅 石狩 あいろーど厚田」は、ドライブやツーリングの定番スポットです。地元の特産品や海産加工品が並び、食事処や休憩スペースも充実しています。展望デッキから眺める石狩湾と日本海の景色は爽快そのもの。札幌から近いのに、ちょっとした旅気分が味わえます。

道の駅で人気なのが「タコ飯」。正式名は「柔らか蛸DEたこ飯炊きました。」というユニークな一品です。ワンコインで提供されているので”タコたっぷり”とはいきませんが、タコの旨味がご飯に染み込んでいます。展望テラスで海を眺めながら食べれば、気分はもうリゾート。日本海がエーゲ海に見えてきました。(バカな!?)
オンロードはやめておけ!「送毛山道」テクニカルコース

国道に飽きたら、送毛(おくりげ)山道を走ってみましょう。この山道は、江戸末期以前から浜益の送毛や毘砂別などを結んでいた山越えの徒歩道がルーツと考えられています。海沿いは断崖が多く、「そっちを行くくらいなら山を越えよう」と先人たちが選んだ生活路で、いわば昔のインフラと言えます。

送毛山道のダート区間はわずか約2km。しかし短いからといって油断すると、途中で言葉を失うことになります。急こう配が続き、タイトなコーナーが連続、路面は玉砂利で、容赦なく打ちのめされます。オフロードバイクなら楽しめる区間ですが、ロード系では常に祈りながら走ることに。短いのに密度が高い『凝縮型ビビらせコース』です。
浜益村のシンボル「黄金山」といつかの記憶

浜益のシンボルといえば黄金山(こがねやま)です。標高739.1mながら鋭く美しい山容で、「浜益富士」とも呼ばれています。黄金山という名の由来には、かつて金が採れたという説などがあり、アイヌの英雄叙事詩「ユカラ」にも登場するとされる山です。

私の母は浜益出身で、認知症により私の顔も名前も忘れましたが、この山の写真を見せると一瞬で「黄金山だ」と答えました。名前も関係も手放してしまったはずの母の中に、それでも消えずに残っていたのは、息子よりも幼いころに過ごした風景だったのでしょう。
いにしえの記憶をここに残す「はまます郷土資料館」

はまます郷土資料館には、かつてニシン漁で栄えた時代の漁具や生活用品、開拓期の資料が展示されています。今は静かな浜益ですが、かつてはニシン景気で大いに賑わっていました。展示を通じて、当時の暮らしや活気を身近に感じることができます。
消えゆく集落「床丹」

国道を何気なく曲がった先に、ひっそりと消え入りそうな集落があります。その名は床丹。かつては日本海の豊かな漁場に支えられ、ニシン漁や沿岸漁業で活気に満ちていました。海辺には番屋や民家が並び、子どもたちの声も響いていたといいます。学校や商店も機能し、人々は海とともに確かな暮らしを築いていました。しかし時代の流れとともに人口は減少し、今では静けさだけが残る場所となっています。

現在の床丹は高齢化と人口減少が進み、残る世帯もわずかです。訪れるたびに住人の姿が見えなくなり、倒壊した空き家が目立つようになりました。バス停や郵便の集配も姿を消し、集落は静かに縮小しています。人の営みと自然の境界で、集落は静かに時間を止めています。
風を追いかけて、石狩へ

海を眺め、山を望み、歴史に触れ、土地の味を楽しむ。石狩には、走る理由になる風景があります。日本海沿いの道を愛車で流せば、見慣れた日常はバックミラーの向こうへ。地図では伝わらない空気や景色が、この街には息づいています。さあ、石狩へ。新しい景色を見つけに行きましょう。








