今回は現役二輪指導員による「運転ブランク期間」後のメンテナンス箇所をご紹介します。さて、多くのベテランライダーは日々の点検整備という土台の上に、思い出に残るツーリングや安全なバイク旅が成立することを理解しています。

なぜその点検作業が必要なのか???
と、実施するメンテナンスについて根本的な理由を理解しないままにしている方もいるかもしれません。そもそも、私たちが愛でるバイクは常に自然の影響(例えば、摩擦や気温など)により状態が変化しているのです。次に紹介する車両点検を参考に、単に実施するだけでなく、メンテナンスの本質や意味について「そうなんだ!」と理解を深めていただけると幸いです。
久々のツーリング……しかしバイクも「久々の状態」。怠ってはいけない車両点検5選
①タイヤの空気圧低下は事故・転倒を引き寄せる可能性大。まずはチェックを。
放置するだけでもタイヤの空気圧は少しずつ減ります。とくに気温変化が大きい季節の節目は、タイヤ空気圧も大きく変化するのです。定められた基準値より大幅に空気圧が低下していることもあります。さて、無用な事故を防ぐためタイヤ空気圧の管理に迫りましょう。

「空気」もバイクの大事なパーツだと思え!!
空気圧が低下した状態でカーブを曲がると「いつもより倒れない」「グラつく気がする」という印象を受けることがあります。「空気」は気温により膨張や収縮することはご存じと思います。タイヤ空気圧については規定値から0.5~1.0hpaほど低下すると、多くのライダーは乗り味の変化に気付くはず……。問題は「乗り味の変化」について自覚症状があるかということ。

バイクの安定した走行には、適切な「空気圧」が欠かせません。いつものように曲がらない、なぜか調子が出ない……その感覚は黄信号が灯ったサインかもしれません。季節の変わり目には必ずタイヤ空気圧をチェックしましょう。

空気圧をチェックするための3つの手順
1.指定空気圧を確認する。
車体に記載されている空気圧表示や取扱説明書で、指定空気圧「〇〇kPa」の数値を確認する。
手のひらでタイヤを押して、いつもとの違いを感じることもあります。ただし、感触だけでは正確な空気圧は分かりません。空気圧計を使って、きちんと測定しましょう。
2.空気圧計で測定し、必要に応じて調整する。
タイヤが冷えている状態で空気圧を測定し、指定値より低い場合は空気を充填する。
※空気の入れすぎにも注意。指定値を守ることが大切。
3.エアバルブキャップを忘れずに装着する。

空気充填の前と後では、フィーリングが劇的に変化することもあります。ただし、楽しくなりすぎて周りが見えなくなってしまう……「事故った……」は避けてくださいね。
②バッテリーの状態に注目。乗っていなくても気温の変化はバイクに様々な影響を与えている?
メンテナンス箇所としては定番ともいえるのがバッテリーのチェック。エンジン始動時、セルモーターが弱々しいと感じたらバッテリーを疑ってみます。「バッテリーチェッカー」などでバッテリーの状態を確認し、充電が必要であれば事前に済ませてエンジン始動の確認も行っておきましょう。

「納期」に注意。すぐには交換できない!
充電しても復活しない場合は交換が必要になることもあります。バイクショップへ交換を依頼するか、自分で交換作業をする事になると思いますが、問題は「すぐに交換できない」という点。ツーリング予定日から逆算してメンテナンスを行う必要がありそうですね。

③ドライブチェーンの脱落は重大事故になる恐れ
ドライブチェーンについては常に見えている為、かえって異常に気付きにくいパーツかもしれません。まず停止時に赤サビが浮いていないか確認し、さらに適度なたるみがあるかチェックしておきましょう。

走行中にドライブチェーンの音に注目し、「ジャラジャラ」「ガシャガシャ」という異音があるときは、安全な場所に駐車してチェーンのたるみを確認します。車種によって適正なたるみ量は異なるため、取扱説明書などで指定値を確認しましょう。以前よりたるみが大きい場合は要注意。異常がある場合は、バイクショップに相談することをおススメします。

オフロードバイクなどは、チェーンのたるみを多めに設定している車種もあります。とはいえ、指定値を超えるたるみがあったり、チェーン下側が大きく垂れ下がっていたりするときは、点検・調整が必要です。
④ブレーキローターやキャリパー付近も要チェック。

ブレーキ周りには、法律で「特定整備」に該当する作業もあります。だからこそ、日頃の点検は欠かさず実施しておきましょう。とはいえ、数日放置した程度で「ブレーキが利かなくなる」というトラブルは少ないかもしれません。しかし、日々蓄積していく赤サビや汚れが「トラブル予備軍」になることを知っておきましょう。日々のメンテや清掃は、大事故の予防になるのです。
参考
道路運送車両法の改正により2020年(令和2年)4月1日に導入された制度
道路運送車両法施行規則第三条(特定整備の定義)https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000800074
国土交通省特定整備概要https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001332203.pdf

自分のバイクを整備することは違法になりません。ただし、ブレーキは安全に直結する重要な装置。不安な方はバイクショップに依頼しましょう。
⑤可動部になぜ注油が必要なのか?(その効果と防ぐリスク)
自身のバイクについて、可動部がいくつあるか数えたことはありますか?「動くからよし!」「回るから大丈夫!」と放置していると、思いもよらない事故を起こすかもしれません。

注油が防ぐ3つの危険とは?
①金属パーツの「削れ・焼き付き」を予防
注油を怠ってしまうと、油膜のない金属同士がこすれ合うことになり、摩耗が進んだり、操作パーツ本体が損壊したりする可能性があります。
②注油切れは重さ・引っ掛かりを生む原因
「可動部」には、ライダー自身が直接操作するクラッチレバーなども含まれます。操作系パーツの注油切れは重さ・引っ掛かりを生む原因と言えます。私自身、スロットルが戻らなくなり暴走した経験があるからこそ「潤滑」には手を抜けないのです。
③赤サビは金属パーツに残るダメージ
雨や洗車による水分は、残ると金属を一気にサビさせます。ワックスがけや適切な箇所への注油による油膜形成には、水分が金属に触れるのを防ぐ、いわば車体をラッピングするような効果もあります。
久しぶりのバイクこそ、出発前の点検が大切!

「前回乗ったときは問題なかったから、今回も大丈夫!」は要注意です。バイクは乗っていない間も、気温や湿気などの影響を受け、少しずつ状態が変化しています。久しぶりのツーリングだからこそ、出発前に次の5つを確認しておきましょう。
- タイヤの空気圧:指定空気圧になっているか?
- バッテリー:エンジンは問題なく始動するか?
- ドライブチェーン:サビや異音、たるみに異常はないか?
- ブレーキ周り:ローターやキャリパー付近に異常はないか?
- 可動部:クラッチレバーやスロットルはスムーズに動くか?
5つの点検で「いつもと違う」に気付けるかどうかが、トラブルを防ぐ第一歩になります。異常があれば無理に出発せず、必要に応じてバイクショップへ相談しましょう。
さらに、もう一つ忘れてはいけない「メンテナンス」があります。
久々なのはバイクだけではない。ライダー自身の「メンテナンス」も忘れずに。

バイクの点検・メンテナンスは万全でしょうか? しかし、忘れてはいけないことがもう一つあります。そもそもツーリングは「人(ライダー)」がいてこそのアクティビティ。久しぶりのツーリングへ出発する前は、軽い準備運動を行うようにしましょう。(全身を動かす軽めのジョギングも効果的かも!)
ライダーは走り始めると「足を伸ばす」「背伸び」「柔軟体操」はしばらくできません。あらかじめ身体を動かすことで疲れにくい状態になると思いませんか?
久しぶりのツーリングはライダーの身体も、バイク車体の状態も「寝起き状態」のようなものです。出発前の車両点検を怠らず、そしてライダー自身の「潤滑」も忘れずに「真のライダー状態」で秋のツーリングを楽しんでくださいね。







