「九州までツーリングに行ってみたいけれど、往復の移動だけで疲れてしまいそう……。」そんな方におすすめしたいのが、長距離フェリーという選択肢です。今回は大阪南港から新門司港を結ぶ「名門大洋フェリー」を利用し、実際にバイクで乗船してみました。
バイク仲間に話をすると、「船旅って楽しそう」「寝ている間に移動できるから疲れないし良いね!」「船旅ってドラクエみたいだな」という声がある一方で、「乗船手続きが難しそう」「船酔いしない?」「揺れや海からの『しけ』が気になる」といった不安の声も聞かれます。

そこで今回は、フェリー旅がライダーに向いている理由や、実際に利用して感じた船内の雰囲気を前編としてご紹介します。長距離ツーリングの新しい選択肢として、参考になれば幸いです。
体力MAXで旅の幕が開ける!フェリー移動のメリット5選
①体力を温存したまま目的地へ到着できる

移動距離が長くなるほど事故のリスクが高まります。大阪から九州まで自走で向かうとなると、目的地へ着く前に疲れてしまうことも少なくありません。特に高速道路を長時間走り続けると、知らないうちに疲労が蓄積していきます。
フェリーなら、寝ている間に目的地付近まで移動できるため、体力を温存した状態でツーリングをスタートできます。ライダーの安全運転マインドには、ルート選びも含まれているのです。
「移動もツーリングの楽しみ」という考え方もありますが、限られた休日を有効に使いたい方には、フェリーという選択肢も魅力的ではないでしょうか。
疲労は安全運転にも影響する
疲れていると集中力が低下し、認知・判断・操作といった運転に必要な動作にも影響が出やすくなります。疲労やストレスが溜まってしまうと「操作ミス」「判断不良」につながります。
目的地へ着くことがゴールではなく、そこからツーリングを楽しむことを考えると、体力を残しておけることは大きなメリットと言えるでしょう。

目的地へ着く前に疲れてしまっては、せっかくのツーリングも少しもったいないですよね。
フェリーを利用すれば「移動時間=休憩時間」に変えられるので、翌日を気持ちよくスタートできました。

②渋滞を避けて時間を有効活用できる
長距離ツーリングでは、渋滞に巻き込まれて予定が大きく変わってしまうこともあります。フェリーを利用すれば、長距離の高速道路を走る必要がないため、渋滞によるストレスを減らせるのも魅力です。
もちろん天候や運航状況に左右されることはありますが、予定を立てやすくなるという点でもメリットを感じました。
移動時間を「休憩時間」に変えられる
高速道路を何時間も走る代わりに、フェリーの中では自由に過ごすことができます。食事を楽しんだり、お風呂で疲れを癒したり、景色を眺めたり、そのまま眠ったり……。普段なら「運転している時間」が、そのまま旅の時間になるのはフェリーならではの魅力です。

「移動も旅の一部」。
そんな言葉がありますが、フェリーに乗るとまさにその意味が分かります。目的地へ向かう時間さえ、思い出のひとつになりました。
③ 船旅そのものが思い出になる
フェリーの魅力は、単なる移動手段ではないことです。
夕暮れの港を出航し、夜景を眺めながら甲板で風を感じる。
翌朝、デッキへ出ると九州の景色が広がっている。
飛行機や高速道路では味わえない、「船で旅をする楽しさ」がありました。
船内は想像以上に快適!移動時間そのものが旅になる
「フェリー」や「船」と聞くと、狭くて窮屈な船内をイメージする方もいるかもしれません。しかし、実際に乗船してみると、その印象は良い意味で裏切られました。
船内は清潔感があり、広々としたパブリックスペースが設けられています。乗客が行き交う通路も十分な幅が確保されており、長時間過ごしても圧迫感はほとんど感じませんでした。

展望ラウンジやデッキで、ゆったりとした時間を過ごせる
船内を歩いていると、「ただ移動している」という感覚はほとんどありません。展望ラウンジで景色を眺めたり、デッキへ出て潮風を感じたりと、それぞれが思い思いの時間を過ごしています。
眠くなれば客室へ戻って休み、お腹が空けば食事へ。自由に過ごせる時間そのものが、フェリー旅の魅力だと感じました。
ライダーにはうれしい大浴場も完備

長距離ツーリングでは、乗船するまでにすでに数百キロ走っているライダーも珍しくありません。そんな疲れた身体を癒やしてくれるのが、大浴場です。
追加料金は不要で、シャンプーやボディソープも備え付けられているため、タオルさえ持参すれば気軽に利用できます。
足を伸ばしてゆっくり湯船につかると、それまでの疲れが一気にほぐれていくようでした。翌朝も身体が軽く感じられ、「まだまだ走れる」という気持ちでツーリングをスタートできます。
売店も意外と充実している
船内の売店はコンパクトですが、品ぞろえは想像以上でした。九州や関西のお土産はもちろん、歯ブラシやタオル、USBケーブルなど、旅行中に「あったら助かる」というアイテムも販売されていて、旅人のニーズに応えてくれます。
今回購入したのは、福岡名物の「めんべい」。旅の途中でお土産を買い忘れても、船内で購入できるのはうれしいポイントです。
また、客室にはコンセントも用意されているため、スマートフォンやインカムなどを充電しながら翌日に備えることができます。

ツーリング中だからこそ味わえる、最高の夕食時間
今回の夕食は、乗船前に購入した唐揚げ弁当とビール。ツーリングの途中でバイクを降り、お酒を飲みながら目的地へ向かっているという状況が、とても贅沢に感じました。お酒をたしなむ方であれば、幸福感を理解できると思います。
好きなものを食べて、好きなお酒を飲み、ゆっくりと流れる船の時間を楽しむ。これこそ、フェリー旅ならではの醍醐味ではないでしょうか。

もちろん、船内にはブッフェ形式のレストランも用意されています。今回は利用しませんでしたが、温かい食事を楽しみたい方にはこちらもおすすめです。
非日常を味わう。船旅ならではの景色も楽しみのひとつ
船旅はRPG(ロールプレイングゲーム)を彷彿とさせますね。船内探訪をしたくなってきます。
展望デッキから眺める夜景は、陸とはまったく違う
大阪南港を出港してしばらくすると、フェリーはゆっくりと大阪湾を進んでいきます。展望デッキへ出ると、街の灯りが海面に映り込み、陸地とは違った表情の夜景が広がっていました。
大阪はもちろん、神戸~六甲山、遠くは関西空港のネオンも眺めることができます。

フェリー旅の魅力には、船上だからこそ見られる景色も含まれます。通常のツーリングではまず見る事のない、海の上から眺める景色はどれも新鮮でした。
橋の真下をくぐる迫力は想像以上
瀬戸内海航路の見どころの一つが、巨大な橋の下を通過する瞬間です。名門大洋フェリーでは、航路や時間帯によって明石海峡大橋、瀬戸大橋、来島海峡大橋の近くを航行します。通過時間が近づくと船内アナウンスも流れるので、見逃す心配はありません。
デッキへ出ると橋の大迫力に圧倒されます。その大きさに思わず見入ってしまいました。さらに「23.2ノット」(時速約43km)で進むフェリーの速度が「予想以上に速い!」と体感できます。おそらく誰もがそう思う瞬間でしょう。

バイクで橋を渡ることはあっても、「真下から見上げる」体験はなかなかありません。このインパクトはツーリングを「忘れられない思い出」にしてくれると思います。
朝は船の上で迎える、少し特別な一日の始まり
目を覚ますと、そこはもう九州のすぐ近く。客室を出てデッキへ向かうと、朝の澄んだ空気と海の景色が迎えてくれます。いつも迎える朝とはまた違う、少し贅沢な時間です。身体はしっかり休まり、気持ちもリフレッシュ。
朝食を食べたら、いよいよツーリングスタート
今回は船内レストランで朝食ブッフェを利用しました。おかずなどを好みに合わせて選べます。長距離ツーリングでは朝食を軽く済ませがちですが、今回はしっかり食べて大移動に備えておきましょう。

いよいよ下船。最後まで気を抜かずに
九州へ到着すると、いよいよ下船です。船内アナウンスに従って車両甲板へ向かいますが、一度バイクのもとへ戻ると客室へは戻れません。財布やスマートフォン、ETCカードなどの忘れ物がないか確認し、荷物の固定も済ませておきましょう。
車両甲板では取り回しに注意
下船前の車両甲板は、余裕があると言えるほど広い場所ではありません。実際は人や車両が行き交うため、慌てずゆっくり取り回すことが大切です。特に大型バイクは無理をせず、周囲を確認しながら移動しましょう。

スロープはゆっくり、慎重に走行しよう
フェリーを降りる際は、登りのスロープを走行します。ある程度勢いをつけて、途中で停止しないように一定の速度で通過すると安心です。
「滑りやすそうな路面」ですので、移動には細心の注意を払いましょう。
また、継ぎ目には多少の段差もあるため、実力のあるライダーは、やや腰を浮かし「中腰姿勢」で走行して、段差の衝撃を吸収するのもいいかもしれません。
ここは旅の最後ではなく、ツーリングのスタート地点。最後まで気を抜かず、安全第一で下船しましょう。
初めてフェリーを利用するなら知っておきたいポイント
実際に利用して感じた、初めての方へ伝えたいポイントをまとめました。
乗船時間には余裕を持って到着する
フェリーは飛行機と同じように、時間どおりの手続きが必要です。
電車やバスと違い、フェリーの乗船時間についてはややシビア。少なくとも1時間前にはターミナルの待機場に到着しておきましょう。遅れると乗船拒否されることもあるとか。
余裕を持ってターミナルへ到着しておけば、手続きも落ち着いて進められます。

今回のカーフェリーは乗用車や物流トラック、バイクそれぞれの車両甲板の階層は異なっており、出発前から積み込みが始まります。この段取りがあるので時間厳守という事なのかもしれません。
海上ではスマホの電波は届かない
沖へ出ると携帯電話は基本的に電波が届きません。船内Wi-Fiも利用できますが、通信速度や利用時間には制限があります。必要最低限の連絡や情報確認用と考えておくとよいでしょう。
逆に、スマートフォンから少し離れて「デジタルデトックス」するにはいい機会かもしれません。

船内用のスリッパがあると快適
ライディングブーツやシューズのまま船内を歩き回るのは、煩わしい上に意外と疲れます。そこでオススメしたいのが、船内の売店で販売されている「折り畳みスリッパ」。

船内の使用はもちろん、下船後もカバンの隅に忍ばせておけば、復路のフェリーでも使うことができます。ただし、屋外の展望デッキは滑る可能性があるので用心しなければいけません。
まとめ|フェリーは「移動」ではなく「旅の一部」
フェリーは、目的地まで運んでくれる交通手段というだけではありません。身体を休める時間があり、景色を楽しみ、美味しい食事を味わい、ゆったりとした時間を過ごせる。その時間すべてが、ツーリングの思い出になるため、ライダーにとってはメリットが多い交通手段であるといえます。
長距離ツーリングでは、「どう目的地へ行くか」も旅の楽しさを左右します。もし九州や北海道など遠方へのツーリングを計画しているなら、フェリーという選択肢をぜひ一度検討してみてください。
「非日常」のすべてがアトラクションに感じる事でしょう。きっと、これまでとは少し違ったツーリングの楽しさに出会えるはずです。

今回は、船内設備や乗船中の過ごし方を中心にご紹介しました。次回は移動コストや移動時間や、陸路と海路の比較を考察してみようと思います。







