

世界のプレミアムヘルメット市場で、シェア60%を獲得しているSHOEI。そのSHOEIの中でトップセールスとなったフルフェイスヘルメット「Z-8」が、5年ぶりにモデルチェンジ。シェル形状を変更して空力性能を向上し、ネーミングも新たに「Z-9」となった。その「Z-9」の機能や特徴を詳解し、実際のライディングで「Z-9」の実力をチェックしてみた。

写真:長谷川徹
「Z-9」は、風洞実験と実走テストを繰り返して完成した
ピュアスポーツフルフェイスヘルメット
Zシリーズらしさを継承しつつ、シェル形状は一新!




SHOEI Zシリーズは、軽量コンパクトなシェルにベンチレーション機能を装備し、街乗りからワインディングでのスポーツツーリングまで、快適な被り心地を実現しているフルフェイスヘルメットだ。その基本コンセプトは受け継ぎつつ、シェルを一新したのが「Z-9」だ。シェル形状やエアインテーク/エアアウトレットの形状・配置は、過去の開発で蓄積した風洞実験や解析データを活用して設計。その後、実走テストを実施し、空力性能やベンチレーション性能などを確認・検証することで、モデルチェンジごとに熟成を重ねているという。
アッパーエアインテークからエアアウトレットまで流れるようなリブ形状を取り入れ、シンプルながら立体的なシェルデザインとなっている。その一方で側面の切り上げたカットラインは入れずに平滑な面とすることで、チンバー部の強度を確保している。
そのシェルは、強靭なガラス繊維と三次元形状とした有機繊維の複合積層構造をベースに、高い弾力性能を持った高性能有機繊維をプラスした「AIM+(Advanced Integrated Matrix Plus Multi-Fiber)」で作られ、軽量でありながら剛性・弾性にすぐれた構造を実現。国内ではJIS規格に適合している。
コンパクトなフォルムで軽い被り心地は継承


テスト車両は、コンパクトな車体でシャープなハンドリングが楽しい「スズキGSX-8S」。ライダーの身長は172cmで、「Z-9」はMサイズを着用している。車体とライダーのバランスから「Z-9」のコンパクトさが分かるだろう。頭頂部のリブ形状がシャープなイメージを強調し、「GSX-8S」のようなネイキッドからスーパースポーツまで、幅広いスタイルのバイクとマッチするデザインとなっている。
空力性能の改善で静粛性も向上

一新したシェル形状は、空力性能の向上を狙って開発された。市街地の一般道から高速道路まで走行テストし、ベンチレーション機能や静粛性についてチェックを行なったという。

後頭部にはトップエアアウトレットが配備され、シェル内部の熱気を効率よく空力性能に改善し、かつパーツの形状によって、走行風による頭の振られを低減する役割も担っている。

「Z-9」の新形状シェルは、「Z-8」との比較で、走行中にヘルメットが上方へ浮き上がろうとする「LIFT」を約13%、前方から押し付けられる「DRAG」を約3%、それぞれ低減している(いずれも自社大型風洞実験設備での参考数値)。空力性能を改善したことで空気抵抗が低減し、走行中のヘルメットの安定性も向上。首や肩にかかる負担も軽減し、快適な被り心地に寄与している。

空気抵抗の低減には、走行風をいかにスムーズに後方へ流すかが重要であり、気流の乱れを抑えることは風切り音の低減にもつながる。「Z-9」に採用された「CWR-F2シールド」の縁部には、走行風を整流する突起が設けられている。この突起は、気流に小さな渦(ボーテックス)を発生させることで流れを安定させ、シールド周辺の風切り音低減に寄与する「ボーテックスジェネレーター」である。

アゴ部分にはメッシュ状の「チンカーテンD」を標準装備。左右の「チークパッド」はヘルメット着用時に首回りを包み込むようにフィットする形状。被り口部分からの走行風の侵入を抑え、静粛性向上に寄与している。

イヤースペースには「Z-8」同様の「イヤーパッド」を装備し、耳元からの音の侵入を低減している。また、「イヤーパッドプレート」にはパンチング加工を施し、インカムのスピーカーを装着して「イヤーパッド」を取り外した際にも、ヘルメット内の音の反響を防ぐ。これらの細かなこだわりに加え、今回「Z-9」に採用された新たなシェル形状による空力性能の向上が相まって、さらなる静粛性の向上を実現している。
自社大型風洞実験設備における100km/h相当の試験では、「Z-8」と比較して風切り音の低減を確認。特に低い音域の騒音が抑えられる結果となり、ライダーへの負担を軽減するとともに、より快適な走行環境を実現している。ヘルメットトップから後方へ流れるように設計されたリブ形状や、サイドのカットラインをなくした新たなシェルデザインにより、シャープで一体感のある造形を実現。さらに、これらの形状が走行風の流れを抑制することで、デザイン性だけでなく、すぐれた静粛性にも貢献している。
形状と配置を見直し、効率を向上したベンチレーション


「Z-8」のアッパーエアインテークは中央に2カ所、その左右に各1カ所の計4カ所だった。「Z-9」も4カ所だが、シェルのセンター側に1つのパーツとして配置を変更している。口元のロアインテークは2カ所で変わりないが、「Z-9」は左右それぞれ別に開閉できるようになった。また、走行時の圧力分布解析に基づき、走行風を高い圧力でエアインテークから取り込めるようになったことで、ヘルメット内のベンチレーション性能が向上。ヘルメット内の熱気は、後頭部の常時開放式エアアウトレットから効率よく排出される。


シェルのセンター側に1つのパーツとして配置されたアッパーエアインテーク。SHOEIロゴと一体となったアッパーエアインテークシャッターは面積が広く、厚手のグローブでも開閉操作がしやすいデザインとなっている。エアインテークホールは4カ所と「Z-8」と同じだが、より効率的に走行風を取り入れられる位置を検証した結果、「Z-9」の流入量は約1.9倍に向上している。


左右に配置したロアインテークは、かつての「Z-III」から「Z-6」を彷彿とさせるデザインを採用。左右独立式のフラップ開閉式シャッターを採用し、流入量は「Z-8」の約1.4倍を実現している。

エアアウトレットは後頭部に設置された1カ所のみだが、空力性能と換気効率を両立したスポイラー形状のおかげで、ヘルメット着用時の高い安定性を維持しつつ、ヘルメット内の熱気をスムーズに排出する。


シールドはクリアな視界を確保した「CWR-F2シールド」を継続採用している。そのシールドが曇った際は、「シールド微開ポジション」に設定することでシールドをわずかに開けた状態に維持できる。そして、微開ポジションで低速走行することでヘルメット内の換気を促進できる。

シールドはセンターロックシステムを採用し、シールド開閉操作時のたわみを抑えて操作性を向上している。さらにシールドロックボタンを大型化し、厚手のグローブでもボタン位置が見つけやすくなり、操作性も向上。シールドと窓ゴム(ウィンドウビーディング)の密着性も高められている。


使用過程や経年変化によって、シールドと窓ゴムに隙間が生じることもある。その際はシールドベースに装備された「シールド調整レバー」を調整位置に動かすことで、シールドの左右ともに1mm程度の微調整が行なえ、シールドと窓ゴムの密着性を高めることができる。シールド調整レバーを動かしたことで、シールドベースが微妙に動いているのが分かるだろうか?
快適性と利便性を向上する内装

内装表面生地は、汗をかきやすい部分には吸水速乾性にすぐれた生地を使用。ヘルメット着脱時に肌と擦れやすい部分には柔らかい起毛生地を使用。また、チークパッド底面には2種類の汚れにくいレザー調生地を使用し、防風性向上に寄与している。内装は取り外して洗濯でき、清潔な被り心地を維持できる。

インカムのスピーカー装着に対応した「イヤースペース」と、マイク装着に対応した「マイクスペース」を標準装備。さらに、左右のスイッチユニット用アダプターパーツ・後頭部のバッテリーユニット用アダプターパーツの計3点で構成され、クリップ式で「Z-9」のシェルに装着できる「SHOEI COMLINKアダプター」をオプションパーツとして設定(価格3300円)。その「SHOEI COMLINKアダプター」を使用することで、サイン・ハウス製B+COM SX1およびSENA製SRL3の装着に対応している。ただし、現時点ではXXXL・XXXXLサイズには非対応となっている。

あご紐は、微調整と確実なロックを両立したDリング式。さらに、アクシデント時にチークパッドを簡単に引き抜け、ライダーから容易にヘルメットを脱がすことができる「E.Q.R.S.(Emergency Quick Release System)」も装備。高い安全性を実現している。

こめかみ部分の内装にスリットがあるので、メガネを着用しやすくなっている。
軽くて静か! 高い快適性と安心感のあるフルフェイスヘルメット

「空力性能が快適な被り心地を実現する」のを体感できる
筆者は普段、国内メーカーのMサイズを使用しているので、「Z-9」もMサイズを着用してみたが、まさにジャストフィットだった。頭のハチが締め付けられたり、部分的に痛みを感じるといったことが皆無で、頭全体が内装に包み込まれるような心地よさのあるフィット感だった。頬もチークパッドに圧迫されすぎないが、試しに頭を上下左右に振ってみてもヘルメットがズレず、しっかりとサポート力が発揮されて安心も感じられる被り心地になっている。この安心感はSHOEI独自の「AIM+」構造による堅牢さも要因で、シェルにはしっかりした強度と剛性も体感できる。それでいて「Z-9」を手に持ってみると軽く、着用しても軽い被り心地になっている。
アイポート(開口部)はフルフェイスヘルメットとして標準的な広さで、充分な視界の広さになっている。シールドの歪みもなく、標準装備の防曇シートを装着した状態でもクリアな視界が確保されている(実は試乗後に防曇シートが装着されていたのに気付いた)。今回は晴天で気温が高く、シールドが曇る状況ではなかったが、「シールド微開ポジション」は走行中にシールドを少し開いた位置に確実に留められるので、万一シールドが曇った場合も迅速に対応できる。個人的にはシールドの左下側を持って開けようとしてしまうのだが、「シールドセンターロックシステム」の操作性は良好なので、少し経てばスムーズにシールドを開けられるようになるだろう。
ベンチレーションは、エアインテークをアッパー/ロアともに開けた状態で走行すると、30km/hからシェル内に走行風が流入してくるのを感じる。そして40km/hでは走行風が抜けるのをハッキリと体感できて涼しい。ちなみにアッパーのみ開けた場合は40km/h~、ロアのみ開けた場合は50km/h~走行風が流入してくるのが体感できた。また、エアインテークのシャッターはアッパー/ロアともにグローブをしたままでも操作しやすかった。
軽い被り心地でフィット感もよく、視界はクリアでベンチレーションも効果的。シェルにはしっかりした強度と剛性もある。と、「Z-9」は快適性と安全性の高さが体感できるフルフェイスヘルメットになっていた。そうした特徴に加えて、さらに印象的だったのが静粛性の高さだった。市街地の交通の流れにのって走行している際は、風切り音に気付かなかったほどで、新形状のシェル、ボーテックスジェネレーターが走行風の流れをスムーズにすることで風切り音の発生を抑制しているのだろう。さらに、チンカーテンDとチークパッドが被り口からの走行風の侵入を防いでいて、不快な巻き込み音も発生していない。風切り音を認識したのは70km/h~で、それでも音は抑えられていて不快には思わなかった。
さらに、被り口からの走行風の侵入がないことで、ヘルメットを内側から持ち上げる「LIFT」が低減しているのも体感できた。速度域が上がることで風切り音も増えていくが、空力性能のよさでヘルメットは振られず、フィット感がよく軽快で快適な被り心地はキープされている。市街地、ワインディング、高速道路と幅広い状況で被り心地のよさが変わらず、つねに快適なライディングをサポートしてくれる。この完成度の高さが「Z-9」の特徴だと思った。

クリアな視界、堅牢だが軽いシェル構造、涼しさを感じる換気性能、軽くてフィット感のいい被り心地を実現している「Z-9」。Zシリーズらしい軽さとコンパクトさを受け継ぎつつ、快適性と利便性を従来モデルから大きく向上している。初めてのフルフェイスとしても、従来モデルや他モデルからの買い替えとしてもオススメできる、SHOEI渾身の新型ピュアスポーツフルフェイスヘルメットだ。
(編集協力:株式会社SHOEI)








