「手に入るうちに乗っておけばよかった…!」
欲しかった絶版バイクの価格が高騰→買えずに後悔。そんな経験ばかりしてきたボク(サブロー)は2ストロークのバイクがずっと欲しかったのです。でも、グズグズしている間に2スト車の人気&価格は上がり続け、ホンダ・NSR250Rなどは100万円前後で取引される高嶺の花になってしまいました。

250~400㏄の2ストはどれも高いなぁ…。でも原付なら安い車種があるかも!!
探し続けた結果、カワサキ・KSR-Ⅱ(79㏄)がリーズナブルであることが分かりました。そして偶然にも近所の解体屋さんでその車両が売られていたので迷わず購入。





もちろん納車整備なんて気の利いたモノはなし。現状渡しです。「あとは自分で整備してね。トラブってもウチは知らないよ」というメッセージ込みの大特価15万円。かろうじてエンジンはかかりましたが吹け上がりがかなり怪しい…。
というワケで、キャブレターをオーバーホールしてKSR-Ⅱを復活させよう、というのが本記事の趣旨でございます。
文:片岡 裕介
写真:中尾 憲文/片岡 裕介
現状チェック

乗ってみた症状は以下のとおり。
・始動性が悪い→ エンジンスタートにキック5回以上は必要
・吹け上がりでボコつく→ 2スト特有の低回転域の弱さではなく明らかにおかしい
・回転落ちが遅い→ 吹け上がったあと、アクセルを戻しても回転がダラダラと落ちる
・一定の回転数でドッカン加速→ 2スト特有の加速? にしては唐突すぎて危ないレベル
ドッカン加速の原因は不明ですが(記事後半で判明)、それ以外の症状はキャブレターの異常かな? 長期間放置された車両によくあるパターンのようです。続いてエアクリーナーをチェック。


本来ならこのカゴみたいなパーツにスポンジのフィルターが付いているのですが、跡形もなく崩れ去っていました。この崩れたスポンジはキャブに吸い込まれた可能性が高いですね…。
キースター燃調キット
あちこちガッタガタのバイクなので、キャブのオーバーホールは必至。そこで今回もモトメガネでおなじみのキースター燃調キットにお世話になることにしました。

キースター燃調キットは、岸田精密工業が手がけるキャブレター用リペア&セッティングキットです。
キャブレターを構成する主要なインナーパーツがすべてそろっていて、これらを交換することでキャブレターの修復ができるというスグレモノです。しかもお値段4,400円!(一部車種除く)
ジェットやニードルはもちろんガスケットまでメーカー純正品を100%に近い形で再現。ほとんどの製品を自社工場で製造するメイドインジャパンの信頼性もあります。
また、燃料の濃さを決める3つのパーツ、メインジェット、パイロットジェット、ジェットニードルは複数のサイズが用意されているので、乗り手の好みに合わせてセッティングできるんです。
対応車種は今も増え続き、メジャーからマイナーなバイクまでその数はなんと500車種以上! 気になるあのバイクも対応しているハズ(※)!
※対応する燃調キットが見つからない場合は、問い合わせフォームや電話で相談すると、可能な限り対応してくれるとのこと!
ニードルバルブ(フロートバルブ)の長さが違う⁉
キャブを分解すると意外とキレイ。でもキースター燃調キットを開封したところ気づきました。
ニードルバルブの長さが全然違います。


ニードルバルブとは、燃料タンクとキャブレターをつなぐ経路にある「弁(フタ)」の役割をもつパーツ。キャブの中に蓄えられたガソリンが減ると開き、増えると閉じる重要なパーツです。
このニードルバルブが純正よりもキースター燃調キットの方が長い? なんで?
キャブに詳しい人ならわかるとおり、ここの長さは超重要で、数ミリ違うだけで油面が変化し、セッティングがガラっと変わってしまうんです。ひどい場合はキャブからオーバーフローを起こす(ガソリンが漏れること)ケースも…。


心配になったボクは「純正に勝るモノなし!」と、キースター燃調キットを無視。元から組まれていた古いニードルバルブを組み付けました。すると…
キック3~4回でエンジン始動。「ほ~らね」と、このときは純正を信じ切っていましたが、何かおかしい。よく見るとキャブがオーバーフローを起こしていました。
キャブレターを再び分解し、フロートレベルを計ってみたところ。19.4mmしかありません。サービスマニュアルによると適正値は19.9~23.9mm。つまり油面が高すぎました。



岸田精密工業に凸してみた
なにが正しいのかチンプンカンプンになり、製造元の岸田精密工業に電話しました。対応してくれた人は広報部長の藤原さん。

もしもし! おたくのキット、ニードルバルブの長さが純正と違うんですけど!

それは不安になりますよね…。でも心配ありません。
ニードルバルブは経年劣化でバネ部分が縮んでしまうことがあるんですよ。古い純正を外し、キースターの新品を組んでフロートレベルを計ってみてください

岸田精密工業さん、疑ってすみませんでした…。純正ニードルバルブが短かった原因は、劣化で縮んでいたからなんですね。つまりキースター燃調キットの方が正しかったと…。

油面はキャブの命ですからね。ニードルバルブは正常な純正品の寸法を忠実に再現しているので大丈夫ですよ。車種によってはフロートレベルまでキッチリ合わせてニードルバルブを製作しています
オーバーホール完了
藤原さんの助言もあり、オーバーホールは無事に完了。古いジェットやOリングなどもすべて新品に交換しました。





オーバーホール後のKSR-Ⅱの調子は…?
ここで、最初に起こっていたトラブルをもう一度まとめました。
数々の症状がオーバーホールでどう改善したのでしょうか…?
・始動性が悪い→ ◎キック1回でエンジン始動
・吹け上がりでボコつく→ ◎低回転域での吹け上がりが改善
・回転落ちが遅い→ ×原因はキャブではない?
・一定の回転数でドッカン加速→ ×同じく原因はキャブではない?
始動性と吹け上がりはキースター燃調キットのおかげで改善しました! とくに始動性はバツグン! 冬でもチョークを引けばキック1回でエンジンがかかるようになりました!
でも「回転落ちが遅い」「一定の回転数でドッカン加速」は原因が他にありました。
ドッカン加速の原因
なんとエアクリーナーとキャブをつなぐダクトが劣化して縮んでいる! キャブにハマっていませんでした。つまりレーサーのような直キャブ状態です。エアクリーナーの抵抗がないから低回転域でトルクが出ず、高回転になったとたんに一気に加速したんでしょうね。


回転落ちが遅い症状も燃料が薄いときに起こるそうです。空気を吸いすぎて燃料が薄かったのかな?
ともあれパーツを交換して、キャブレターオーバーホールは完成です。
テスト走行!
発進したところ、低回転域では「うびびびび…」とフツーの加速。あれ? こんなもんか? と思った刹那、回転数が上がり「パキーーーン!!」と矢のようにすっ飛んでいきます! 速い! 原付の加速とは思えないほど。そして面白い! バイクを運転していて顔がこんなにニヤけた経験は初めてでした。

乾燥車重が86㎏しかなく、最大出力は10馬力(ホントかな?)も出ているのでそりゃあ速いでしょう。体感では20馬力くらいの加速です。
今まで4ストエンジンの原付でマスツーリングに行くと、中型以上のバイク仲間がペースを合わせてゆっくり走ってくれていたのですが、2ストエンジンのKSR-Ⅱなら問題ないでしょう。高速道路に乗れないこと、2人乗りができないことを除けばスキのないバイクです。買ってよかった!

まとめ
キースター燃調キットでキャブの調子はよくなりました。が、なにしろ32年も前のバイクです。他にも直すべき箇所はたくさんあるでしょう。新車と乗り比べればいろんなことが分かるのですが、それができないことは旧車のつらいところですね。
なので、ボクが「速い!」と思っているKSR-Ⅱのキャブも実はまだまだで、セッティングすればもっと元気になるかもしれません。今回はオーバーホールに必要なパーツのみ使用しましたが、キースター燃調キットにはセッティング用のパーツも同梱されています。これらを駆使して、ベストの状態を目指したいです。
2スト原付、すごく楽しいですよ? 探せばKSR-Ⅱのように安く変える車種もたくさんあります。キースター燃調キットでキャブレターメンテナンスを覚えて、あなたも2ストエンジンの面白さに触れてみませんか?
(編集協力:岸田精密工業株式会社)









