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やっぱりカワサキZには ヨシムラの哭きとストレート管がよく似合う

※記事内容は全て執筆時点の情報です。

「今どきのノーマルマフラーって、よくできているんですよ」と、のっけからヨシムラのマフラー開発のエンジニアさんが言う。けれど、まったく事前情報なしで乗ったって、ヨシムラのよさはよくわかる。カワサキZには、70年代にヨシムラが手がけたZ1を想起させるストレートサイクロンがよく似合う――それだけでも、ヨシムラを選ぶ理由には十分なのだ。
文/中村浩史 写真/森 浩輔

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現代の厳しい騒音規制と排出ガス規制をクリアして……

マフラーを替える行為というのは、今も昔も、バイク乗りのひとつの通過儀礼だ。現代のバイクに、ノーマルマフラーの性能がダメダメなんてことはほとんどなくて、つまりバイク乗りは意味がなくたって、性能差がそんなに大きくなくたって、マフラーを替えたくなってしまう、と言ってもいい。

「今のノーマルマフラーって、本当によくできています。音、性能、排出ガス規制、レイアウトや生産性まで、その要件を満たしたものがバイクに装着されるわけだから、その時点の100点なんです」というのは、ヨシムラジャパンのマフラー開発課、長谷部済さん。今回試乗させていただいたZ900RSに装着されている「手曲ストレートサイクロン」の開発担当者だ。

エンジン搭載位置が低く、かつシリンダーが前傾しているために、エキパイ長を確保するのが難しかったというZ900RS用手曲ストレートサイクロン。
エキパイ長の確保は性能を左右するのと同時に「エキパイがスラッと並ぶとカッコいいじゃないですか」(長谷部さん)という大事な項目である。

Z900RS用マフラーを作るにあたって、真っ先にプロトタイプとしてストレートサイクロンを設計、開発したのだという。まずは音や排出ガス規制値なんて気にせずに、カワサキZによく似合う、昔の無骨なストレート管をイメージさせるスタイルだ。

「一番最初はモーターサイクルショーに出展しました。ブースに来ていただいたお客様の意見を聞くと、ストレートサイクロンや、別体サイレンサーサイクロンが人気だった。スーパースポーツ用のような異形サイレンサーじゃないんです。まずはスリップオンを最初に発売して、次にストレートサイクロンの開発にかかったんです」(長谷部さん)

手曲げの美しい曲線を描くエキパイが特徴の手曲ストレートサイクロン。
こちらが「機械曲」で、ポート出口からエンジン下までの曲がり方が違うのが特徴だ。

70年代にヨシムラがカワサキZ1用に開発した集合管のデザインを彷彿とさせるストレートサイクロンは、ショーに出展した構造のままではやはり音量や排出ガス規制をパスするのが難しく、長谷部さんはそこからマフラー容量や構造を設計し直すことになる。マフラー容量とは、パイプ径やパイプ長で計算できる、マフラー内部の容積のことだ。太くて長いパイプで使えば音量面では有利だが、バイクに似合うとなると限界サイズがある。

「今まで使用したことがないサイズのパイプを使ったり、集合部の後方に消音ボックス、Duplex Shooterと呼んでいるんですが、それをレイアウトしました。実は消音ボックスにも排気口がついていて、ストレートサイクロンは排気口がふたつ、とJMCAで認証されているんです」(長谷部さん)

Duplex Shooter側にも排気口が見える。この排気口が消音とパワーアップを両立するカギだった!

いざ、ヨシムラZ900RSで試走へ!

目の前にあるストレートサイクロン付きのカワサキZ900RSは、もちろんマフラー以外のカスタムも施されているが、パッと見で時代が40~50年はさかのぼったようにも見える。実際には水冷エンジンのZ900RSだし、往年のストレート管に見える政府認証マフラーなんだけれど、気分は男、カワサキ、ヨシムラ・ストレート管――。ちょっとイキって乗り出してみたくなる。

取り回しは軽い。とはいえノーマルマフラーとストレートサイクロンの重量差は約3kgだから、マフラー以外のカスタムによる効果が大きいのだろう。

エンジンをかけてみると、ノーマルの重低音よりも軽やかだ。そのまま走り出すと、まずはピックアップの良さに驚く。アクセルと回転が完全にシンクロしているような鋭いレスポンスは、4気筒エンジンにありがちな一瞬のタメやタイムラグがない。

ストリートへ走り出してみると、軽量な車体が、レスポンスのいいエンジンフィーリングを得て、さらに身軽に走れる。もっともこれは、オーリンズ製フォークカートリッジ入りのフロントフォーク、リアのオーリンズ製サスペンションの効果が大きいのだろう。長谷部さんによると、常用回転域のトルクはノーマルとほとんど変わらないというけれど、アクセルのオンオフで車体をコントロールしながら走ると、やはりヨシムラマフラーのツキのよさからくるダイレクト感が、効果としてハッキリとわかる。

マフラーエンドは少しだけテールアップ。これはZ900RS用に発売されている純正アクセサリーのメインスタンドが使用できる高さとしてあり、ヨシムラ製X-TREADステップキットとの位置取りも考えられている。

少し回転を上げて走り始めると、やっぱりヨシムラの「哭き」がイイ。ノイズが消された、澄んだ4気筒のエキゾーストノートが気持ちいいし、これは勝手な思い込みかもしれないけれど、フラットで一定のサウンド=音質を聞かせてくれるノーマルに対して、ヨシムラサイクロンはアクセルの開け方や回転域でズ太かったり、軽快だったり、どこまでも伸びていくような瞬間もあるのだ。街中を歩いていて、サイクロン付きのバイクが走っていたら他の集合マフラーと聞き分けられてしまいそうな、そんな気持ちのいいサウンドだ。

高速道路に乗って、各ギアを引っ張り気味に走ってみると、盛り上がってきたトルクが4500rpm位で少しタメがあって、7500rpmあたりからまたひと伸び。ノーマルのパワー特性はもっとフラットカーブだけれど、ヨシムラ車はいったんタメがあってから伸びることで、より一層パワーが出ているように感じるのだ。 最高出力は約5psアップ。なかなか街中で、この5psを感じるのは難しいけれど、この中間のトルクの味付けで、もっとパワーが伸びているようにも感じるのだ。

カワサキZにヨシムラエンブレム、の正統性

「最初にノーマルマフラーがよくできている、と言いましたが、数10年前の空冷Zの時代だったら数10PSアップ、なんてこともありましたけど、今では最高出力アップもなかなか難しい。では最高出力アップまで、いかにトルクカーブを作って行くか、がマフラーの見せ所だと思うんです。Z900RSは低速からよくトルクが出ていて、スムーズに伸びながら、トップエンドにもうひと伸び欲しい――そこをサイクロンで形づくっています。トルクカーブには表れない、スムーズな伸びや回転フィーリングも、ヨシムラのウデの見せ所だと思っています」(長谷部さん)

まずは音量と排出ガスの規制をきっちり守りながら最高出力をアップさせ、出力特性をより「楽しい」ものに変えていく。これが、ヨシムラが1972年に初めて集合マフラーを発売してから、不変のポリシー。ほぼピークに達したと言える現代のノーマルエンジンやマフラーの設計技術を相手に、ヨシムラは「その上」を作り続けている。

そして、軽量化や出力特性の変化はもちろんだけれど、やっぱりカワサキの新世代Zに黒ツヤ消しのストレートサイクロン、それに赤のヨシムラエンブレムはよく似合う。これだって、リプレイスマフラーの大きな効能なのだ。

(編集協力:株式会社ヨシムラジャパン)

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