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ノーマルが優秀だからこそ面白い。GSX-8R×ヨシムラマフラーで変わる「鼓動」と「力感」

※記事内容は全て執筆時点の情報です。

新しいスポーツバイクのフォーマットとして、スズキが2024年に発売したGSX-8R。
完全新設計の800cc水冷並列2気筒エンジンを搭載し、従来の並列4気筒エンジンを搭載するGSX-R600/750よりも「スゴすぎない」スポーツバイクとして評価が高い。

だが、そこにヨシムラがマフラーで手を入れると、バイクの“感じ方”が変わる。

狙ったのはピークパワーだけではない。街中で多用する2000〜4000rpmの押し出し感を太らせ、低速でトコトコ走るときの息つきも抑える。

そして音量は控えめのまま、2気筒らしい鼓動をより濃く感じられるサウンドへ。普段の走りでも違いが分かるマフラーは、どう作られ、どう変わったのか。

開発者の言葉と試乗インプレで追っていこう。

文:中村浩史 撮影:富樫秀明

お話を伺ったマフラー開発課の小方康太郎さん。取材は那須モータースポーツランドで開催されたヨシムラファンミーティングで行なわれたが、小方さん、イベント準備段階でGSX-8Rでコースを走り回っていました。
目次

よくできた「ノーマル」と違いクッキリ
ヨシムラがGSX-8Rに本気な理由

世界耐久選手権に参戦しているヨシムラSERT MOTULのグラフィックをイメージしたGSX-8R。

「GSX-8R、イイですよね。軽いし力あるし、良く走る。新しいテイストのスポーツバイクだと思います」というのは、ヨシムラジャパン・マフラー開発課の小方康太郎さん。

ヨシムラでは、GSX-8Rのカスタムデモンストレーション車を組み上げるときに、世界耐久選手権に参戦しているヨシムラレーシングマシン、GSX-R1000Rイメージのカラーリングを施している。それほどGSX-8Rに力を入れていこうと考えているのかもしれない。

普段は加藤陽平社長も良く乗っている車両なのだという。
ブレーキレバーガード、ステアリングステムナット、ラジエターコアプロテクターなどがラインアップされている。
4通りのステップ位置を設定できるステップキットX-TREAD。正/逆チェンジ可能で、GSX-8Sにも使用可能。ステップバー位置は15/27mmバック、32.5/44.5mmが選択可能。操作感がグッとダイレクトになる。
写真のヨシムラロゴ入りケースカバーガードやオイルフィラーキャップなど、エンジン回りをドレスアップするパーツも豊富にラインアップされている。

完成度が高い純正マフラーに、ヨシムラの出した答えは

2-into-1集合形式を採用したGSX-8Rのノーマルマフラー。ご覧のようにショートレイアウトで、消音ボックスつき。完成度は非常に高いが、「美」までは追求できていない。そこに存在感を出すのがヨシムラマフラーだ。
ショートレイアウトで、その奥には消音ボックスがあるのがわかる。
エキゾーストパイプ集合部に2段式の触媒コンバーターを装備したノーマルマフラー。

「GSX-8Rは低回転域からトルクが出ているし、中回転、高回転とつながりよく伸びがあるパワーフィーリングですね。マフラーも、規制を余裕もってクリアするくらいキッチリ消音されているし、排出ガスもクリーン。これは手強いな、と思いました」というのはマフラー開発担当の井藤龍典さん。

厳しい排出ガス規制、騒音規制をクリアして市販されるノーマルマフラーは、ヨシムラが見てもかなり完成度が高いのだという。静かで、排出ガスがクリーン、そして全域でパワーが出ている。

「ヨシムラがマフラーを作るなら、やはりモアパワーですよね。目標は全回転域でひと山パワーカーブを乗せること。そのために、パイプ径とパイプ長を選定してレイアウトを決め、集合部の位置や連結パイプの位置を研究開発しました」(井藤さん)

10数本の試作と3Dスキャン設計で作り込んだ一本

ヨシムラでは、近年のマフラー開発にバイク全体の3Dスキャンデータを使用したCAD設計を取り入れている。特にGSX-8Rのようにカウル付きのモデルでは、測定したデータからエンジンやフレームとカウルのクリアランスを確認しつつ、どういうルートでマフラーを這わせたらスムーズなのかと決定する。そのうえで、出力を上げたいのだ。

狙いは“高回転だけじゃない”——3000〜4000rpmと扱いやすさの強化

「今回のマフラーで狙った出力特性は、もちろん高回転でパワーアップは当然、それでも800ccの並列ツインともなると、そうそう高回転域を使う機会は多くないでしょうから、日常で使う頻度が高い3000~4000rpmの力強さも狙いました。さらに、ノーマルマフラーではアイドリング域のままローギアでトコトコ進みたいときに息つきする症状が少し見られたので、そこも改善しました」(井藤さん)

テストを重ね、まずはエキパイを径違いで2種類使用。集合部までの管長を長く取ることで高回転域のパワーを確保し、2本のエキパイの連結パイプ位置も変えつつ、試作マフラーは10数本

低回転域でトルクを出し、高回転域の伸びを出しつつ、オーバーレブ特性といわれる回転レブリミットを超えてのパワー落ち特性も穏やかにすることができたという。

写真はサテンフィニッシュ、ほかに黒サイレンサーボディのメタルマジックカバー、美しく焼き色のグラデーションがあるチタンブルーカバーもラインアップしている。

試乗で分かる変化——音質、押し出し、力感、そして伸び

実際に試乗すると、まずは音質がまるで違うことに気づく。音量は控えめのまま、アイドリング域、アクセル開け始めのエリアでパルス感が増している。ノーマルマフラーでは感じられなかった2気筒らしい鼓動を感じられる

走り出しは、クラッチミートから前に押し出す力が強い。スッと出るか、グッと出るかの違いだけれど、これもノーマルマフラーとの大きな違いだ。

ヨシムラ機械曲R-11 サイクロン 1エンドのパワーグラフ。アイドリング域から4000rpmくらいまでにトルクがひと乗せされて、6000rpmからグッとパワーが上がっている。グラフの少しの差が、体感ではハッキリわかるものだ。

走っていて感じるのは、常用回転域の2000~4000回転あたりが力強いこと。サウンドで感じていた鼓動感はパンチ力に現われていて、爆発の一発一発がクッキリしている感じ。パワーがスムーズに出るというより、力強くスピードが乗っていく感じで、同じスピードで走っていても、力強さを感じられるから、ヨシムラマフラー装着車の方が速く感じる。それもまた、マフラー交換の楽しさだ。

高回転域の力強さは、6000回転くらいからパワーが盛り上がってくる。この回転域では、ノーマルマフラー車が少しずつパワーの盛り上がりを感じるところ、ヨシムラマフラー車ではもっと一気に、パワーの盛り上がり方が大きい感じ。

データを見てみると、ノーマルマフラーが7000rpmを超えたあたりからパワーダウンするところ、ヨシムラ車はまだ伸びる。小方さんによると、2~5psくらいアップしているそうだが、パワーアップよりむしろ、普段の街乗りですら感じられる力感の方が楽しかった。

【機械曲R-11 サイクロン 1エンド EXPORT SPEC 政府認証】
◆対応車種:GSX-8R(2024〜)
◆重量:6.0kg(サテンフィニッシュカバー、メタルマジックカバー)、5.8kg(チタンブルーカバー) ※ノーマルマフラー重量 7.8kg
◆メイン素材:ステンレス
◆近接排気騒音:92dB/4,250rpm
◆加速騒音:82dB
◆価格:サテンフィニッシュカバー / 205,700円(税込)、メタルマジックカバー / 215,600円(税込)、チタンブルーカバー / 220,000円(税込)

GSX-8Sにも使える設計と、これからの展開

GSX-8Sにも使用できるヨシムラサイクロンR-11。写真のように、スズキ純正パーツとしてラインアップされているパニアケースも装着可能な位置、形状としてある。

「スキャンデータを残すことで、仕様変更も楽ですし、実はスズキのラインアップ展開にも対応しやすいというメリットがあるんです。このマフラーはカウル付きのGSX-8R用ですが、カウルのない、つまりマフラー全体が露出しているGSX-8Sにも使用できるんです。そのためノーマルの消音ボックスや、むき出しのO2センサーも移設して見えにくくしてあります」(井藤さん)

2-1の集合部と、排出ガスをクリーンにするキャタライザー部分。ノーマルではここに排出ガスを測定するO2センサーの取り出し口が露出しているものの、ヨシムラでは見た目をすっきりさせるよう、わざわざ逆サイドに移設している。

井藤さんが言うように、現代のノーマルマフラーは、消音と排出ガスの厳しい規制を余裕持ってパスしてあり、なおきちんとパワーも出ている完成度の高いものだ。

だからヨシムラでは、パワーそのものはもちろん、パワー特性と「感じ方」の違いがハッキリ分かるマフラーを作る。ノーマルのショートマフラーを、サイレンサー別体としたのも同じ理由で、その狙いがはっきり分かるのが、今回のマフラーなのだ。もちろん、今後発売されるGSX-8T/8TTのマフラーを作る時も、このデータが生きてくる。

それにしてもヨシムラカラーのGSX-8R、カッコいいなー!

(編集協力:株式会社ヨシムラジャパン)

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