プレミアムミドルクラスを代表するメーカーの一つとなっているロイヤルエンフィールドだが、実は1901年にイギリスで誕生した現存する世界最古のオートバイブランド。もともとは自転車メーカーとして始まり、「Made Like a Gun(銃のように頑丈)」をスローガンに高い耐久性で評価を得たバイクメーカーだ。
2000年代以降は品質改善と開発体制を強化し、英国とインドに開発拠点を設立。近年はClassic 350、Hunter 350、Himalayan 450、650ツインシリーズなどを投入し、スペック上の「速さ」よりも鼓動感・デザイン・旅を楽しむバイクとして世界的人気を獲得している。
そんなロイヤルエンフィールドのブランドを象徴するのが「Bullet(ブリット)」シリーズだ。1932年の登場から実に90年以上の時を経て、ブリット650として新たに登場するということで、今回は実際に走った印象と共に詳しく紹介していこう。
90年を超える伝統が650ツインで蘇る! 新生ブリットの実力を試す

見るほどに惹かれる。手描きのラインが物語る“本物”のクラシック



曲線の美しいクラシカルなタンクに存在感のある647.95ccの並列二気筒エンジン、外装に施されたゴールドのピンストライプは全て手描きによるもので、シンプルなカラーリングながらもまるで芸術品のような高級感が所有感をくすぐる。
ブリット650はハード面こそオールドスクールなその見た目ながらも、ソフト面はやはり令和のマシン。
ヘッドライトは伝統的なカスケット型ランプと2つの「タイガーアイ」ランプを継承しつつも、ヘッドライトを含む灯火類は全てLEDとなっており、夜間走行時の視認性の高さやメンテナンス性も向上している。
クラシックな顔に現代の便利さを凝縮! 古さを楽しめても不便はない
また、メーター周りについてもアナログな速度計は全体の雰囲気を損なうことなく、燃料計やトリップメーターはデジタル表示とすることで視認性の高さも確保されている。

メーター周りにはロイヤルエンフィールド トリッパーナビゲーションも搭載されているので、ハンドル周りにスマホやナビを追加で取り付けなくていいのだ。手軽にナビを使用しつつも、シンプルで美しい外観を保つことができる。
足つきもブレーキも穏やか。眺めるだけで終わらない実用性
シートはブリットの特徴的な「ベンチシート」を踏襲しつつ、ボリュームのある座面の座り心地とサイドの肉抜きのバランスが絶妙で、地面へのアクセスも良好。

前後共にシングルディスクながらもABSが装備された足周りの操作性はマイルドかつ軽快で、制動力についても申し分ない性能だ。
まさに『シンプルで美しいボディラインと豊かな伝統を受け継ぐディテール』は、バイクを眺めているだけでも楽しめるのだが、それだけでなく実際に走り出した時の快適性・走行性能についても抜け目のない一台である。
美しい姿を崩さず旅仕様へ。純正オプションで広がる楽しみ方
車体色については「キャノンブラック」に加えて「バトルシップブルー」の2色の展開となっており、こちらもゴールドのピンストライプとの相性が抜群で、どちらを選ぶかは非常に悩ましい選択だ。
※写真の「バトルシップブルー」はディーラー純正オプション品装着車

写真の「バトルシップブルー」にディーラー純正オプション品として装着されているのは、可倒式ミラー・サイドバッグ・サイドステップ・エンジンガード・フォグランプ・オイルクーラーガード。

こうして純正ルックを崩さずに自分のバイクライフに合わせてアイテムを選ぶことができるロイヤルエンフィールドアクセサリーズが多数用意されているのも嬉しいポイントだ。
242kgの重さはどこへ? 走り出せば驚くほど軽快

街では400ccのように軽く、高速では大型らしい余裕を見せる
ブリット650で走り出してすぐに感じたのは、242kgという車体重量にそぐわない軽快さ。
重低音の効いた排気音とは裏腹に、気持ち良く上までスムーズに回る647.95ccの並列二気筒エンジンはトルクフルで発進時にもギクシャクすることなく、一度走り出してしまえば400ccクラスのようになんとも軽い印象で走れてしまう。
エンジンの鼓動感を楽しみながらの巡航は実に気持ち良く、ずっしりとした車体は安定感も抜群で、高速道路や登り坂でもパワー不足は一切感じることがなかった。

重いのに扱いやすい。その秘密は低速性能と素直なブレーキにあり
そして意外にも得意なのが小道や狭い駐車場などでの取り回し。押し引きに関してはやはり重さを感じるものの、クラッチの繋がり方がマイルドなので乗っている状態でのUターンや低速走行はかなりしやすい。
しっかりと制動力はありつつもブレーキタッチがピーキー過ぎないというのも好印象で、コーナリング進入時のブレーキングはもちろん、信号や交差点での停車時にもラフに握ることができる。

このブレーキの扱いやすさは、しなやかに動く前後のサスペンションとのバランスが非常に良く、フロントサスペンションは剛性感がありつつも硬すぎることがなく、リアのツインショックはワインディングを楽しみたい時にはしっかりと粘ってくれるのだ。
穏やかなのに物足りなくない。走るほど分かる650ツインの絶妙なバランス
この『扱いさすさ』こそがブリット650に初めて乗った時に感じた400ccクラス並みの軽快さを生んでおり、それでいてパワーが欲しい時には上までスムーズに回る”大型バイクらしい”エンジンが組み合わさった、まさに良いとこ取りのミドルクラスを象徴するようなバイクなのである。
小柄な女性ライダーも楽しめる! 250cc乗りが感じたブリット650の意外な親しみやすさ【桜井つぐみ impression】

普段はVT250やCRF250といった250ccクラスのバイクに乗っているので、ブリット650を最初に見たときは「大きくて、かなり重そうだな」と思いました。
でも、黒いボディにゴールドのラインを組み合わせたカラーリングは、すごく私好みです。カラフルで元気な雰囲気というより、大人っぽくて高級感がありますよね。
金属製のパーツがたくさん使われているところも、今のバイクではあまり見かけない重厚感があって格好いいです。タンクやサイドカバーのピンストライプが手描きだと聞いたときは、「これを手で描いているんだ!」と感動しました。
押し引きは、正直かなり重い!
実際に車体を押してみると、242kgという重さはしっかり感じます。
身体をバイクに押し付けながら、骨盤のあたりをシートに当てて、「グーッ」と力をかけて、ようやく動かせるような感覚です。私が普段乗っている250ccのバイクとは、やっぱり全然違いますね。
ただ、ハンドルが高めで、比較的まっすぐな形をしているので、力はかけやすかったです。
セパレートハンドルのバイクだと上体が前に倒れた姿勢で押すことになるので、押すのに力をかけにくかったり、バランスを取るのが難しいことがあります。でも、ブリット650はハンドルの形状から上体を起こしたまま車体を支えられるので、その点にはかなり助けられました。
気になったのは、ステップが少し外側へ張り出しているところ。バイクのすぐ近くに立って押すと、スネに当たりそうなので、押し引きするときはステップの位置を少し意識した方がいいと思います。
身長157cmでも、足は真下へ下ろしやすいです
私の身長は157cmですが、ブリット650に跨がると、両足はつま先が着くくらい。それでも足つきに関しては、思っていたほど不安を感じません。

私はいつもシートの前の方に座るのですが、その位置ならサイドカバーをうまく避けられて、足をほぼ真下へ下ろせます。エンジンや車体のパーツに足を外側へ広げられるような感じもありません。
左右で足つきの差もあまりなく、信号で止まるときに、とっさにパッと足を出す動作もスムーズ。停車中に右足から左足へ軸足を入れ替えるときも、特に怖さはなかったです。
私は普段、シート高が880mmあるオフロードバイクに乗っているので、足つきにはかなり鍛えられているほうだとは思います。同じくらいの身長でも、背の高いバイクに慣れていない人は、両足を無理に着こうとするより、お尻を少しずらして片足をしっかり着いた方が安心ですよ。
走り出せば、中型バイクのように扱える!
押し引きでは本当に重かったのですが、走り出すと印象が大きく変わりました。
今回の撮影場所は道幅が狭くて、何度もUターンをしました。でも、ブリット650はバイクから降りなくても、乗ったままスルッと向きを変えられたんです。
バイクで低速走行をしていると、エンジンが急にストンと止まりそうになって、そのままバランスを崩してしまいそうで怖いことがありますよね。
でも、ブリット650には、その不安がほとんどありません。

Uターンで速度がかなり落ちても、低回転からしっかりと力が出ているから、エンストしそうな気配が全然ないんです。エンジンが粘り強く車体を前へ進めてくれるので、安心して操作できました。
アクセルを開けたときも、急に「ドカン」とパワーが出るのではなくて、回転と速度がじんわり上がっていく感じ。
低回転域から力はあるけど穏やかな特性だから、アクセルを開けた分だけ、少しずつ力が出てくるので、低速でも反応を予想しやすかったですね。Uターンを10回、20回と繰り返しても、たぶん同じように扱えると思えるくらい、疲れずに操作できました。
押し引きしているときは間違いなく大型バイクなのですが、乗ってしまうと中型バイクのような感覚で扱えます。このギャップには驚きました。
「ドコドコドコ」と響く低い排気音が気持ちいい
マフラーからの音は「ドコドコドコ」と低く響く、少し渋い音。耳に刺さるようなはじける音ではなくて、深い音が身体の周りで響くような感じ。
特に気持ちよかったのが、トンネルの中を走ったとき。

私は以前ドラムをやっていたのですが、トンネルに反響した排気音が、バスドラムの重低音みたいに聞こえました。低い音が「ドコドコドコ」と響いて、ずっと聞いていたいと思うくらい好みの音でした。
エンジンの鼓動は感じられますが、ハンドルやステップから嫌な振動が伝わってきたり、手がしびれたりすることはありません。
気持ちいい音や鼓動は楽しめるのに、不快な振動は残らない。このバランスはとても良かったです。
ブレーキも急に効かず、低速で調整しやすいです
ブレーキも扱いやすかったですね。
レバーを握った瞬間に急激に効くのではなく、操作に合わせて自然に「スーッ」と減速していく感覚でした。信号で止まるときはもちろん、Uターン中に少しだけ速度を落としたい場面でも、自分が狙った分だけブレーキを使いやすかったです。
ブレーキをかけたときに、フロントサスペンションが必要以上に沈み込むこともありません。サスペンションは硬すぎず、柔らかすぎず、程よく動いてくれる印象です。
今回は大きな段差や荒れた路面をあまり走っていないので、強い衝撃を受けたときの動きまでは分かりませんでした。ただ、低速で走ったり、止まったり、曲がったりする場面では、とてもコントロールしやすいバイクだと感じました。
速さだけでは語れない、ブリット650がもたらす豊かな時間

個人的には、「最高出力がどう」とか「パワーウェイトレシオがどう」といった難しいことは考えず、ブリット650が持つ雰囲気やオーラを楽しんでほしいですね。ツーリング先で眺める姿や、自宅のガレージに停まっている姿、そして、そんな素敵なバイクに乗る自分を想像するだけでワクワクするはず。ブリット650は、そんなバイクライフへの憧れを膨らませてくれる一台です。
このブリット650で長距離ツーリングに行きたいな!
(編集協力:ピーシーアイ株式会社)







