ツーリングも街乗りも、いつでも手ぶらで出かけられたらなぁと思いつつも、実際にはそうはいかないのが悩ましい──そんな風に考えるライダーって一定数いると思うんです。事実、バイク歴20年超の筆者はずっとそう考えてきましたし、いまでも出来ることなら最小限の荷物で出かけたいと思っています。その裏には、自分のバイクに似合うバッグが少ないから……そんな現実的な理由もあったりします。
世の中にはツーリングなどに特化したバイク積載用のバッグが山ほどありますが、昔からその手の「バイク用ツーリングバッグ」のデザインが大の苦手な筆者。かつては70年代の旧車を愛機とし、現在ではヘリテイジ系のモデルをメインに使用していることもあって、バッグを積載する時の条件では「バイクのデザインに似合うかどうか」をいちばん重視しているからです。
荷物積めなかったら意味ないし、そこは諦めろよ、と思う方も多いでしょうし、実際に妥協している方もいらっしゃるかもしれません。でもやっぱり諦めたくないんですよね。だからいまの愛車のBMWには純正や後付けの社外バッグは装着していませんし、使用していないときにもフレームが残るサイドケースや固定型のトップケースなどは、選択肢としては絶対に入ってこないわけです。
では長旅の際にどうしているか。完全防水バックパックを背負い、リアシートの上には同じブランドの防水バッグを汎用ストラップで固定する──もちろん、いずれもバイク用ではありません。でも変に主張するデザインでもないからバイクにすっと溶け込む。つまり、最低限の荷物が積めて、メーカーの主張が少ないデザイン、それが自分の求めるツーリングバッグなのです。
そんな折、モトメガネ編集部から新しいツーリングバッグのテスト依頼がありました。それが「FURCHTLOS(フルヒトロス)」というブランドの汎用ツーリングバッグです。見た感じ、タクティカル&ミリタリー系にも見えるフルヒトロスのバッグ。デザイン的には過度な主張もなく、なんとなく愛車にも似合いそう。ということで今回は実際にお借りして装着してみました。
フルヒトロス:レガシーダッフルバッグシリーズ
容量:17リットル/32リットル/46リットル
こちらがフルヒトロスのレガシーダッフルバッグです。フルヒトロスはドイツ生まれのバイク用バッグ&ケースのブランドで、汎用性の高いデザインとシンプルな機能が特徴。リーズナブルな価格帯も魅力的です。今回愛車(BMW R nineT Urban G/S)に装着するのはこの3タイプで、左から容量46リットル、容量**リットル、容量30リットルの3種類です。
基本的なバッグの構造は共通で、ナイロン製の本体に防水性のあるフラップ(上蓋)をセット。前後と左右にはタクティカルギアなどで採用される「PALSウェビング(ポーチなどを取り付けるためのストラップ)」に似たベルトが縫い付けてあり、ここにストラップを固定してバイクに車載するという仕組みです。
使い方は簡単で下記のように取り付けます。
バッグには縦・横2タイプのベルトが縫い付けられていて、付属の積載方法に応じてストラップを引っ掛けて使用します。もちろん、こうした作りに対応するタクティカルギアやストラップを利用したアイテムの追加にも対応できる汎用性です。
こちらが付属のストラップ。先端は金属製でストラップ本体はナイロン。フルヒトロスのバッグはユニバーサル(汎用品)のため、ストラップは長めに設定してあります。
実際にバッグを装着してみる
ではここからは実際に3タイプのダッフルバッグを装着します。4本のストラップを使用してシートの上にバッグを固定してみました。
容量別のサイズ感は上の写真の通りです。装着車のR nineTシリーズは、デザイン優先のシート構造ゆえ、積載性は悪く、多くのユーザーは長旅時にどう荷物を積むかあれこれ工夫しているでしょう。特にタンデムシート部分が狭いので大型のバッグだと不安定になりやすく、底板のないシートバッグではシート左右の端から飛び出る部分が垂れ下りやすいのです。筆者もバイク用ではないダッフルバッグを使用する際は、バッグの底に三脚などの長ものを入れて、それを底板代わりにしてバッグの形状をキープするなど、それなりに工夫が必要なのです。
ただ、フルヒトロスのバッグではどのダッフルにもバッグ底面には底板が入っており、バッグをシートに載せてもバッグ両端が垂れ下がったりすることはありません。これはナイスなポイントです。
上はバッグの底面。金属ではありませんが、剛性のある底板が入っており、バッグの形状は内容量に関係なくキープできます。筆者はこれまで欧州製のバイク用防水バッグ(袋状のロール式)も試したことがありますが、あの手のバッグはある程度の荷物を入れておかないと形状をキープできず、固定も不安定になりがちで(要は最大容量に対して荷物が少ないと固定しづらい)、結局使うことをやめてしまいました。そういう意味では底板付きでバッグ本体もある程度の剛性があるフルヒトロスのようなバッグなら、内容量を問わず安定して固定することができます。
上は容量**リットルの一番コンパクトなタイプ。日帰り〜1泊程度のツーリングにもピッタリ。
上は容量30リットルのタイプ。4-5泊程度のツーリングならハッキリ言ってこれで十分でしょう。
こちらが最大サイズの46リットル。これなら2週間程度のツーリングでも問題ないでしょう。かなり大きなサイズですが、積載した感じは安定している印象です。実際には左右の重量バランスに気を配りながら荷物を積むことが大事になってきます。ただ、バッグが大きいのでバックパックを背負うスタイルには向きません。もしバックパックと併用なら、シート後方に固定するなどひと工夫が必要です。ただ、荷物を積む場合はバイクの重心位置からなるべく離さないようにする方がベターです。
実際の固定方法例:R nineT
実際にどうやってバッグを固定したか。R nineTを例に解説します。R nineTでは荷かけフックはリアシート裏の2箇所しかありません。そのため、バッグの前方のストラップはシートレールを利用します。なお、付属のフラップ(四角い合皮パーツ)はシートやフレームなどストラップが直接当たる部分に使用すると擦れを防ぐことができます。
上が純正の荷かけフック。バッグ後方のストラップはこのフックを利用して引っ掛けます。ストラップは4本すべて使用して、バッグがシート中心からずれないように均等に締め付ければOK。使っているうちにストラップの適正な長さが把握できると思うので、その時点でストラップのあまりはカットするのがおすすめ。無駄に長いストラップはホイールへの巻き込みなどのリスクもあるので、この辺は早めに判断してくださいね。なお、付属ストラップは折り返しにも対応するゴムバンドを装備しているので、あまったストラップはここに畳んで入れ込んでおきましょう。
バッグの仕様、収納力をチェック
ここからはフルヒトロス・ダッフルバッグの基本仕様や収納力について解説します。3タイプのバッグは容量の違いはありますが、基本的に同じ構造です。
標準仕様としてすべてのバッグにキャリーハンドルが付属しています。手持ち部分は写真のようにひとまとめにする合皮のハンドル付き。容量17リットルの方では、マグネットが仕込んであり、バッグのフラップに置くだけで固定できます。ただ、このキャリーハンドルは取り外し不可です。
標準装備のひとつ、ショルダーストラップ。容量30リットル、46リットル版には標準装備で、こちらも金属製のフックを使って脱着が可能です。宿泊先でバッグを持ち運びする際には便利なアイテムです。
ダッフルバッグシリーズは、ブラックのマグネット付きフラップ、ファスナー付きフラップ、荷室という構成が基本です。マグネット付きフラップは、ロゴ部分にマグネットが仕込んであり、簡単に開け閉めができます。その下にはダブル仕様のファスナーを設けています。
ファスナーはスーツケースなどと同様にロックを装着できる穴が設けてあるので、ちょっと車両を離れる際にも安心です。引き手は樹脂カバー付きなのでグローブをしたままでも開閉しやすいつくり。
中を開くとこんな感じ。似室内部全体は起毛素材を張り巡らせていて、ある程度のクッション性が期待できます。クッション性のあるカメラバッグとの併用なら撮影機材を運ぶのもOKな印象です。
内部にはサイズに合わせて仕切り板が用意されています。写真左は30リットル、右は17リットル。いずれの容量でもファスナー付きフラップの裏側にはクッション素材を使用したメッシュポケットを付属しているので、見た目以上に積載力は十分です。
上は容量17リットル、一番コンパクトなダッフルを使って、日帰りツーリングを想定したパッキングサンプルを作ってみました。左からGORE-TEXジャケット、同レインパンツ、同グローブ、必要最小限の工具と財布、ウエスを収納。ファスナー付きフラップのメッシュポケットにはモバイルバッテリーとケーブルを入れています。これでもまだ余裕がありますが、日帰りツーリングなら十分すぎる容量です。
こちらは最大容量となる46リットルバージョン。バッグ両サイドに大型のポケットが付属しています。ご覧のようにレインウエアならここに収納できてしまうほどの大容量。なお、この46リットル版の左右ポケットのみ、内側はナイロンになっているので、濡れたレインウエアを収納するのにもピッタリ。
この46リットル版はなんといっても収納力が圧倒的。試しにオフロードヘルメットを2タイプ入れてみましたがどちらもすっぽり入る大きさ!左はSHOEIのHORNET-ADVで、右は帽体がひとまわり以上大きなBMW純正のGSカーボンヘルメット。どちらも問題なく収納可能です。オフロードヘルメットが入るですからオンロード用のフルフェイスはまったく問題ありません。出先でヘルメットを置いておく場合にもロックとの併用なら安心ですね。
また、3タイプともに背面にもファスナー付きポケットを装備しています。ちょっとした小物やスマホ、チケットなどの収納にも便利です。さらにどのバッグにも撥水性のあるレインカバーも付属しています。バッグ本体にもある程度の撥水性はありますが、完全防水ではないので、ゲリラ豪雨や高速走行など雨天走行ではレインカバーの併用がベターです。
レインカバーはゴムバンド付きでバッグの底面までしっかりカバーしてくれるので安心です。
今回はフルヒトロスのダッフルバッグシリーズについてご紹介しました。シンプルなデザインで車種を選ばず、メーカーオリジナルデザインという主張も少ないバッグは、荷物の積載で車両の雰囲気を壊したくないと願うライダーにとっては嬉しいアイテムと言えるでしょう。バッグ選びに迷っている方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。