深みのあるエメラルドグリーンとスポークホイールを組み合わせ、シックな佇まいに仕上げたスクランブラー・ナイトシフト。803ccのL型空冷2気筒エンジンを搭載し、街乗りでの扱いやすさと、郊外で楽しめる力強い走りを両立している。
バーエンドミラーやブラウンシートなど、個性的な装備も魅力的な1台で、夜のベイサイドをクルージング。
Impression:横田和彦 Photo:関野 温
速さだけじゃない。ナイトステージが似合う大人のDUCATI
DUCATIと聞くと、赤いフルカウルのスーパースポーツを想像する人が多いのではないだろうか。レースの世界でも活躍するそれは、とてもわかりやすいアイコンだ。しかしDUCATIはイタリアンレッドのバイクばかりを販売しているわけではない。もっと落ち着いた、玄人好みのバイクもリリースしている。

DUCATIというブランドがレースで勝つための “速さ” を追求する一方で、日常でより気軽にバイクを楽しんでもらいたいという想いから生まれたのがスクランブラーシリーズだ。
コンパクトで軽く、ストリートから郊外まで自然体で走れる。それでいて、単なる入門車には終わらない。
今回乗ったナイトシフトは、鮮やかでありながら深みのあるエメラルドグリーンをまとい、華やかなベイサイドの夜景にも負けない存在感を見せる。速さを主張するのではなく、大自然や夜の街などさまざまなフィールドでセンスを感じさせる。そんな大人のためのDUCATIといっても良いだろう。

エメラルドグリーンとスポークホイールが描く、
シティライトに映える造形美
車体の中心に収まるのは、DUCATIの伝統を色濃く受け継ぐ803cc空冷デスモドロミックL型2気筒エンジン。シンプルかつ細身の車体に搭載されているため、聞かなければ400ccクラスと見間違えるほどのサイズ感だ。周囲を圧倒するような威圧感はないが、そのパワーユニットにはDUCATIの血がしっかりと流れている。

エメラルドグリーンのタンクやサイドカバーは、昼間には落ち着いたクラシックカラーに見える。しかし夜になると街灯やネオンを受けて独特の陰影が浮かび上がり、ぐっと艶っぽくなる。
ブラウンの専用シート、フラットなハンドル、バーエンドミラー、スポークホイールなどの組み合わせも実に巧みだ。カフェレーサーにもフラットトラッカーにも見えるが、ひとつのカテゴリーに縛られない自由さこそDUCATIがリリースするスクランブラーシリーズらしいといえる。

また細部にデザインセンスを感じるポイントもある。例えばスクエアな4.3インチTFTカラーメーターを内蔵しつつ、片側に丸みを持たせたメーターケース。四角い液晶メーターを四角いメーターケースに収めただけのバイクが多い中、ちゃんと造形してフェイスデザインに表情を持たせている。さすがイタリア車だと満足感を高めてくれるポイントだ。

市街地を流すだけで得られる満足感
またがると、803ccの排気量があるバイクとは思えないほどスリムで足つきも良い。フラットハンドルは見た目ほど前傾姿勢を強いられない。軽く手前へ引かれているため、手を伸ばした場所へ自然にグリップがあるイメージだ。初めて乗った瞬間から身体に馴染むポジションで、取り回しはもちろん低速でUターンするときにも不安を感じない。

エンジンを始動すると、空冷Lツインらしい太い排気音が響く。油圧クラッチをつなぐと低回転から太いトルクが生み出され、スムーズにスタート。鼓動を感じながら夜の街をゆっくり流していく。
ペースを上げなくても自然体で楽しめる。ライディングモードは「ロード」では優しい反応だが、個人的にはアクセル操作に対してダイレクトに反応する「スポーツ」のほうが好み。「スポーツ」であっても低〜中速域が神経質になるわけではないので、信号の多い市街地でも扱いやすい。

夜のベイサイドを走り、きれいな夜景を見つけたら止まって一休みし、また次の場所へ向かう。このバイクはそんな走り方がよく似合う。
しばらく走って気になったのは、L型エンジンのリアシリンダーがライダーに近いため、内腿にかなり強く熱が伝わってくること。もちろん走っているときは問題ないが、夏場の信号待ちなどではアイドリングを止めたいと感じることも。だが、これも空冷であることの証か。逆に冬場は暖かいだろうから、良し悪しだと考えよう。
低速では扱いやすく、回せば力強い。
アクセルを開けると伝わってくる、DUCATIらしさ
2500rpm付近からスロットルを開ければ、Lツインらしい鼓動を伴いながら力強くダッシュ。4000rpmを超えていくと振動が減っていき、内に秘めたDUCATIらしい “速さ” が顔を出す。
軽量・コンパクトな車体と相まって、伸びの良い加速感を味わわせてくれる。ペースが上がると車体の安定感が際立つ。直進安定性が高く、一定速度での巡航は肩の力を抜いてできるのが好ましい。

コーナーでは、スーパースポーツのように鋭く向きを変えるタイプではない。寝かし始めや切り返しにはわずかな粘りがあり、動きはしっとり。最初はわずかにアンダーステアなイメージだったが、それもすぐに慣れる。なによりライダーの入力に対して素直な挙動なので、夜のワインディングを流すにはむしろ心地よい。
ブレンボ製のブレーキシステムはタッチが明確で、サスペンションの動きもしなやか。多少路面が荒れている交差点であっても焦らず減速して曲がっていける。

速度を競うのではなく、夜景を眺めながら自分にとって気持ち良いリズムで走る。ベイサイドで輝くビル街の光を背景に車体を眺め、深夜まで営業しているハンバーガーショップへ向かう。そんな“大人の夜走り”が自然にできるバイクだ。

街では気軽に、郊外では力強く。
充実した夜走りを約束してくれる “ナイトシフト”
ナイトシフトは、速さだけを追求したDUCATIではない。街中をゆっくり流しても楽しく、郊外へ出れば伝統のLツインが威力を発揮し、パワフルさも存分に味わえる。いわば2つのキャラクターを兼ね備えた存在だといえよう。

仕事を終えて帰宅したあと、そのまま寝てしまうのが少し惜しい夜。ベイサイドの夜景の中を走り、美しく輝くビル街を眺め、愛車の写真を撮り、最後は美味いハンバーガーを頬張る。そんな目的のない夜走りにこそ、このバイクはよく似合う。



夏は夜。そんな出だしの随筆もあった。時代が変わっても暑さを避けて過ごすのは変わらないんだなぁ。スクランブラー ナイトシフトで短時間の非日常感を味わっている最中、ふとそんな考えが頭をよぎった。

基本スタイル




SPECIFICATION
モデル名:スクランブラー ナイトシフト
エンジン型式:空冷L型2気筒、デスモドロミック・バルブ駆動システム 2バルブ
排気量:803cc
ボア×ストローク:88×66(mm)
最高出力:73PS(53.6 kW)/ 8,250 rpm
最大トルク:65.2 Nm(6.7kgm)/7,000 rpm
システム:電子燃料噴射、50mm径スロットルボディ、ライド・バイ・ワイヤ・システム
エキゾースト:ステンレス・スチール・サイレンサー、アルミニウム製テールパイプ
トランスミッション:6速
クラッチ:油圧制御式、スリッパー/セルフサーボ機能付き湿式多板クラッチ
フレーム:スチール製トレリスフレーム
フロントサスペンション:KYB製41mm径 倒立フォーク
リアサスペンション:KYB製プリロード調整機構付モノショック
ホイールトラベル(フロント/リア):150 mm / 150 mm
フロントブレーキ:330mm径ディスク、4ピストン・ラジアルマウントキャリパー、 ボッシュ製コーナリングABS
リアブレーキ:245mm径ディスク、1ピストン・フローティングキャリパー、 ボッシュ製コーナリングABS
タイヤ(F/R):ピレリ製MT 60 RS、110/80 R18・ピレリ製MT 60 RS、180/55 R17
メーターパネル:4.3インチTFTカラー・ディスプレイ
装備重量(燃料を除く):182 kg
シート高:795 mm
ホイールベース:1,449 mm
キャスター角:24°
トレール:108 mm
燃料タンク容量:14.5 リットル
装備:ライディングモード、パワーモード、コーナリングABS、ドゥカティ・トラクション・コントロール、デイタイム・ランニング・ライト
メーカー希望小売価格:159万円(税込)
【問い合わせ】
ドゥカティジャパン
TEL:0120(030)292
URL:https://www.ducati.com/jp/ja/home








