バイクに乗る上で避けて通れない「保険」。
特に「自賠責保険」と「任意保険」の違いについて、正確に理解しているライダーは意外と少ないかもしれません。
どちらも事故に備えるものですが、義務かどうか、補償される範囲、加入しないとどうなるかなど、大きな違いがあります。
では、これら2つの保険は、何がどう違うのでしょうか。
公道を走るすべてのバイクは自賠責保険に加入する義務がある

バイクの保険には「自賠責保険」と「任意保険」があり、それぞれの役割が異なります。
特に、自賠責保険は強制力のある保険として知られていますが、その内容や、未加入時の罰則については、十分に理解していない人も多いようです。
では、自賠責保険とはどのような保険なのでしょうか。
自賠責保険の意味
自賠責保険とは、正式名称を「自動車損害賠償責任保険」といい、自動車損害賠償保障法に基づき制度化された保険です。
この保険は、同法第5条によって、公道を走るすべてのバイクが加入することを義務付けられている、いわゆる強制保険とされています。
自賠責保険は、クルマやバイクが公道を走行するうえで、事故によって他人の生命や身体に損害を与えた際の「最低限の補償」を目的として設けられています。
被害者救済を第一に考えた制度であり、加害者に支払い能力がない場合でも、被害者が一定の補償を受けられるよう国が枠組みを整えたものです。
加入手続きは、バイクを登録・検査する際や原付などの標識交付時にあわせて実施されます。
契約期間は1年、2年などから選択でき、車検が必要なバイクは通常車検と同じタイミングで更新するようです。
自賠責保険に入らないとどうなる?
上述の通り、自賠責保険は必ず入る必要のある保険です。
万が一加入していなかった場合、自動車損害賠償保障法違反や交通違反として処罰の対象になるおそれがあります。
自賠責保険に加入せずにバイクで公道を走行した場合、自動車損害賠償保障法第86条の3によれば、「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」が科されるとされています。
さらに、自賠責保険に加入しないバイクで公道を走行すると、交通違反として6点の違反点数が加算されます。
6点の違反点数は即座に免許停止処分を受けるほどの重い処分です。
仮に自賠責保険に加入していても、保険証明書を携帯していない場合は、同法第88条に基づいて30万円以下の罰金が課される可能性があります。
たとえ短距離の移動や近所の買い物でも、保険が切れた状態で公道を走れば違法行為に該当します。
もし検挙された場合、罰金や免許停止、拘禁刑などの重い処分を受けるおそれがあります。
そのため、バイクの保険証の有効期限と車検の有無を常に確認し、更新を怠らないことが基本的な安全管理といえます。
自賠責保険が補償する範囲
自賠責保険がカバーするのは、あくまでも「対人賠償」のみです。
事故により、歩行者や他の運転者にケガを負わせた、または死亡させてしまった場合に補償が適用されます。
具体的には、傷害事故での補償限度額は120万円、死亡事故では最大3000万円、後遺障害については最大4000万円が上限と定められています。
一方で、相手のバイクやクルマに与えた物的損害、ガードレールや電柱など公共物への損壊、自分自身のケガやバイクの修理費といった「対物・自損」については一切補償されません。
そのため、事故によって生じた責任や費用をカバーするには、自賠責保険だけでは不十分な場合があります。
任意保険は自賠責保険では保障されない部分をカバーする保険

上述のように、最低限の被害者救済を目的に作られた強制保険が自賠責保険です。
その性質上、事故を起こしてしまったとき、自賠責保険だけでは実際の損害をカバーできないこともしばしばあるといわれています。
たとえば、事故を起こしたときは相手のクルマやガードレールを破損させるなど、物的損害を伴うケースも多く、自賠責保険だけでは十分に対応できない場面もあります。
こうした補償の「空白」を埋めるために用意されているのが、任意で加入する自動車保険です。
では、任意保険とはどのような補償を担っているのでしょうか。
任意保険の意味
任意保険とは、自賠責保険でカバーできない範囲の損害を補償することを目的に、個人や法人が任意で加入する自動車保険のことです。
バイク事故においては、自分自身のけがやバイクの修理費用、相手の車両や所有物への損害など、自賠責保険では補償されないケースが数多く存在します。
これらの損害を広くカバーする手段として、任意保険は非常に重要な役割を担っています。
特に、加害者となってしまった場合には、被害者の損害だけでなく、自分自身のバイクや身体にも大きな経済的損失が発生します。
そのようなリスクに備えるため、多くのライダーが自賠責保険に加えて任意保険にも加入しています。
任意保険は、あくまで契約者の判断に委ねられており、加入は法的義務ではありません。
しかし、補償範囲が限定される自賠責保険のみでは、万が一の事故の際に十分な補償を受けることができないという現実があります。
そのため、安全運転を心がけると同時に、任意保険によって経済的なリスクも抑えておくことが望まれます。
任意保険の種類
任意保険には、さまざまな補償内容があります。主なものとして、対物賠償保険、対人賠償保険、搭乗者傷害保険、人身傷害保険、車両保険などが挙げられます。
対物賠償保険は、他人の車両や建物、店舗の壁など、物に損害を与えた場合に補償が適用される保険です。
自賠責保険では物損に対する補償がないため、任意保険での対物補償は非常に現実的な補償内容といえるでしょう。
対人賠償保険は、自賠責保険の補償限度額を超える損害に対応します。
たとえば、死亡や重度の後遺障害を負わせてしまった際、多額の賠償金が必要になるケースでも任意保険でカバーできます。
さらに、自分自身や同乗者のけがに対する補償として、人身傷害保険や搭乗者傷害保険が存在します。
これらは治療費や休業損害などに対応し、事故後の生活を支える役割を持っています。
また、車両保険は、自分のバイクが事故・盗難・自然災害などによって損害を受けた際に、その修理費用や買い替え費用などを補償する保険です。
高額なバイクを所有しているライダーにとって、車両保険は安心材料のひとつとなります。
これらの保険は、補償内容や条件、免責金額などを比較し、自分の使い方やリスクに見合った内容を選ぶことが大切です。
まとめ
このように、自賠責保険と任意保険は、どちらもバイクに乗るライダーにとって万が一事故を起こしたときに自らを守ってくれる大切な存在といえます。
自賠責保険は、すべてのライダーが最低限の対人補償を賄えるようにするための強制保険です。
これは物損や自損などの幅広い損害には対応していないものの、対人事故のときには頼りになる保険といえます。
一方、任意保険は自賠責では補えないリスクに備える補償制度で、事故に対する経済的な備えとして非常に重要な存在です。
事故の加害者にも被害者にもなり得るライダーこそ、自身の保険内容を見直すことが求められます。








