街中やツーリング先で、制服や装備が本物そっくりのライダーを見かけたことはないでしょうか。
帽子やジャケットのデザイン、さらには車体の色や装備まで、まるで警察官が乗る白バイのように見える場合もあります。
こうした「警察官コスプレ」は、見た目の面白さや趣味の観点から楽しむ人もいますが、本物の警察官と誤解を与えかねません。
では、警官のマネをしながらバイクに乗ることは、法的に問題ないのでしょうか。
警察官ごっこは法律や規制に抵触するおそれがある!

ライダーの中には、見た目や雰囲気を本物の警察官や白バイに似せて楽しむ人がいます。
この行為自体は咎められるものではありませんが、実は法的な問題が生じる場合があります。
では、具体的にどのような問題があるのでしょうか。
警察官になりきったライダーは軽犯罪法違反になるおそれ
警察に似た格好でバイクに乗ろうとする際、まず考えられる問題が軽犯罪法に該当するか否かです。
同法でこの問題に関わる条文は、第1条第15号の「資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作った物を用いた者」を処罰対象とするものです。
また、昭和31年3月1日の東京高等裁判所の判決では、被告人が飲食店や路上で自らを警察官と称した事案について、相手が本物と信じる状況での身分詐称は、一時的な冗談や座興であっても違法性が否定されないと判断されました。
つまり、発言だけであっても、状況次第では軽犯罪法違反となる恐れがあるということです。
そのため、警察の格好を模した姿でバイクに乗ることは、軽犯罪法に抵触する恐れがあるといえます。
バイクの見た目によっては刑法に触れるおそれ
さらに、バイクを白バイに寄せた姿に改造するときは、刑法に抵触しないかどうか注意が必要です。
刑法第166条第2項は、公務所の記号(警察の名称やエンブレムなど)を不正に使用することを禁止しています。
これにより、バイクや制服に「○○県警」などの文字を表示すれば、たとえ販売や展示などの目的であっても違法となる可能性があります。
実際、神奈川県警名を記した偽の白バイをネットオークションに出品した事案では、出品者が「より本物に似せるため」として文字を貼付し、偽造公記号使用の疑いで書類送検されています。
このように、外見の一部を再現しただけでも、法的リスクは無視できないといえます。
バイクの改造の度合いによっては保安基準に適合しない恐れも
また、外観を白バイ風に近づける改造は、道路運送車両の保安基準に抵触する場合があります。
たとえば、緊急自動車以外への赤色警光灯の装着は禁じられており、これを装着した状態で公道を走れば保安基準違反となります。
そのため、白バイを再現するために赤色灯をバイクに装着することは、保安基準に適合しないことが多いです。
保安基準に適合しない改造がなされたバイクは車検を通過できないほか、その状態で公道で走行すると、整備不良等で取り締まりを受けることがあります。
このように、自分のバイクを改造して白バイの見た目を再現することは、それ自体が違法になる場合もあるため、改造前に法令適合性を必ず確認する必要があります。
警察のコスプレを楽しむために必要な配慮

上述のように、ライダーが警察官に似た格好をしたり、バイクを白バイに似た見た目に改造するときには、法的なリスクが存在します。
では、犯罪にならない形で警察官や白バイのコスプレを楽しむには、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。
ライダーの配慮
ライダーが警察官のコスプレをする際は、まず服装やアクセサリーが日本の警察官の制服と誤解されないようにすることが大切です。
例えば、警察官の階級章やエンブレム、警察名の入った腕章などは使用せず、色やデザインを大きく変えることで誤認防止につながります。
また、公道や人前で「警察です」「取り締まります」など、身分を詐称する発言を避けることも必須です。
明確な詐称だけでなく、警察官でないのに警察官であることをほのめかすような発言も控えることで、軽犯罪法違反や誤解によるトラブルを防ぐことができます。
また、第三者から警察官と誤解された場合、必ず誤解を解く必要があります。
警察官のコスプレをする際は、あくまで、警察官のコスプレをしているだけであることを念頭に置いて、身分を詐称することなく正直でいることが大切です。
バイクの配慮
ライダーだけでなく、バイクについても、白バイと誤認される外観を避けることが重要です。
具体的には、「〇〇県警」などの文字やエンブレムを貼付しないこと、赤色警光灯や保安基準に適合しない灯火を装着しないことが挙げられます。
もし警察車両風の演出をしたい場合は、法令で認められた灯火や装飾の範囲内でアレンジを行う必要があります。
また、どうしても白バイを再現したい場合、そのバイクの使用をイベント会場など公道外に限定するとよいでしょう。
まとめ
警察官や白バイを模した装い・車両は、気分がよくなったり、楽しいものかもしれませんが、軽犯罪法や刑法、保安基準など複数の法律に抵触する恐れがあります。
安全に楽しむためには、日本の警察と誤認されない工夫や、改造の法令適合性を確認することが不可欠です。
法の範囲を理解し、その中で演出を工夫することが、安心してコスプレを楽しむための鍵といえるでしょう。








