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全力すぎたホンダ単気筒の挑戦 1970~80年代の名機たちを振り返る

※記事内容は全て執筆時点の情報です。

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■タイトル写真:熟成された空冷単気筒OHC4バルブエンジンに前輪23インチの初採用で大ヒットとなったトレールモデルXL250S(1978)

モーサイ掲載日:2025年12月17日

目次

V2やV4に勝るとも劣らない、シングルエンジンへの情熱

2025年10月に八重洲出版が発売した車種専用ブック「GB350 FUN&CUTOM」で、僕(筆者の中村)はホンダ製4ストローク単気筒車の変遷をまとめるヒストリーページを担当した。そして数多くの車両の詳細を調べる中で改めて感心したのが、1970年代後半~1980年代前半のXLシリーズとCBX250RSである。

1980 CB250RS:XL250Sの基本設計を転用して生まれたシングルロードスポーツ。抜群の軽快感が評価され、大人気を獲得

誤解を恐れずに表現するなら、「そこまでやるのか‼」と言いたくなるほど、当時のホンダは4ストローク単気筒の改革に熱心だったのだ。と言っても、1970年代後半~1980年代中盤の同社を代表する革新的なエンジンと言ったら、V型2気筒とV型4気筒のイメージが強いものの、単気筒にかける意気込みも相当以上だったように思う。

1982 VT250F:1980年代のホンダは各排気量帯でV型攻勢を展開。250ccクラスには1982年からVT250シリーズを投入

トレールバイクで行われた改革

1955年型ドリームSA/SB(250/350cc)や1958年以降のスーパーカブシリーズという前例は存在したけれど、軽量コンパクトという単気筒エンジンならではの美点を、ホンダが初めて積極的に追求した量産車は、1972年から発売を開始したトレールバイクのSL250Sである。

1972 SL250S:並列2気筒を搭載するCL250の後継車にして、後に続々と登場する4スト250cc単気筒トレールバイクの原点

SL250Sの最大の特徴は、当時としては画期的なOHC4バルブヘッドだ。おそらくその背景には、自社で開発中だったエルシノアMT250も含めて、市場でライバルとなる2ストローク単気筒勢への対抗意識があったのだろう。

1978 XL250S:既存のSL250SやXL250とは、別次元の運動性能を獲得したトレールバイク。ただし、ボア×ストローク:74×57.8mm、最高出力:22psという数値は不変

もっとも、ホンダが4ストローク単気筒の本格的な改革に乗り出すのは、1978年にデビューしたXL250Sからである。23インチの前輪に注目が集まりがちだが、XL250Sのエンジンは、排気効率を高めるツインエキゾーストパイプと、独創的な構成の2軸バランサー(リヤバランサーをミッションのメインシャフト同軸に配置する構成は、2021年以降のGB350と同様)を採用していたのだ。

このエンジン透視図はCB250RSだが、ツインエキゾーストパイプの取り回しを除けば、XL250Sも構成はほぼ同じ
XL-Sシリーズの2軸バランサーの配置は、現代のGB350シリーズと同様。ただし動力伝達は、XL-S:チェーン、GB350:ギヤ

そしてXL250Rを経て、1983年に登場したXLX250Rは、半球形燃焼室の形成とバルブサイズの拡大を実現するため、4本のバルブを放射状に配置したRFVC:Radial Four Valve Combustion Chamberを導入。さらにエキゾーストパイプと歩調を合わせるような形で、キャブレターのシングル→ツイン化も実施していた(XL250S/RとXLX250Rで話題を呼んだ革新的な技術は、同時代の兄貴分に当たるXR350RやXL500S・XR500Rなども採用)。

1983 XLX250R:シリーズ初のセミダブルクレードルフレームを採用。ボア×ストロークは72×61.3mmで、最高出力は26ps
RFVCの導入でロッカーアームの配置が複雑になった、XLX250Rのエンジン透視図。キャブレターはハの字配置で、バランサーはギヤ駆動の1軸式(リヤバランサーはXL250Rの時点で廃止)
RFVCの利点は、吸排気バルブのサイズを極限まで拡大できること、半球形の燃焼室が形成できること、効率のいいスワール(渦流)が起こせることなど

ちなみに、ツインエキゾーストパイプと4本のバルブを放射状に配置する手法は、すでに1930年代にイギリスのラッジが実用化していたのだけれど、ホンダがラッジを参考にしたのかと言うと、それは何とも言い難いところ。

XLX250Rが導入したツインキャブレターは、小口径と大口径の利点を両立。低中回転域では左のみ、高回転域では左右が作動
1979年から世界GP500への参戦を開始したNR。中央吸気・前後排気という構成は、後に登場するVT/VFシリーズが継承

個人的な印象を述べると、初期のXLシリーズの改革には、当時のホンダが開発していた世界グランプリ用の4ストローク500ccレーサーで、V型4気筒でありながら圧倒的なパワーを求めてV型8気筒的な構成とした、長円ピストンのNR(キャブレターは2バレル×4機で、エキゾーストパイプは各気筒2本ずつ)からの影響があったような気がしている。

DOHCヘッドを導入したCBX250RS

1983 CBX250RS:250ccシングルロードスポーツの頂点を目指して生まれた意欲作。最高出力は前任車+4psとなる30ps

さて、前段で何だか話をまとめてしまった感があるけれど、僕が考える当時のホンダ製4ストローク単気筒の究極形は、1983年型CBX250RSである(同年にデビューしたGB250クラブマンも基本構成は同じ)。この車両のエンジンはXLX250Rとの共通点が多かったものの、オンロードでのパフォーマンスを徹底的に追及した結果として、カムシャフトを1→2本に変更し、その駆動にはセミカムギアトレインを採用していた。

1983 GB250クラブマン:CBX250RSの基本設計を転用して生まれたネオクラシックモデル。数々の改良を受けながら、1997年まで販売が続いた
CBX250RSのカタログから転載。DOHCヘッドとセミカムギアトレインは、同年に登場したXLX250Rとは異なる装備だった

また、吸気通路のストレート化を実現するため、2つのキャブレターを平行に配置したことも、CBX250RSのパワーユニットの特徴である(XLX250Rのキャブレターはハの字で配置)。

もっともここまでに述べた技術の中で、以後のホンダ製4ストローク単気筒の定番になったのはツインエキゾーストとRFVCのみで、2軸バランサーやツインキャブレター、セミカムギアトレインを他機種が踏襲することはなかった。とはいえ僕のように、当時のホンダの意気込みに心を動かされる人は少なくないんじゃないだろうか。

文●中村友彦  写真●八重洲出版アーカイブ

【著者プロフィール】
 中村友彦(なかむら・ともひこ)
1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車から最新スーパースポーツまで、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車でロングランに出かけている。

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