モトメガネの皆様こんにちは! 「モーサイ(MOTORCYCLIST)」は、オートバイを中心としたモビリティライフを楽しむための情報を発信する専門メディアです。
最新モデルのインプレッションやツーリング情報、メンテナンス・カスタムの知識、ライダーのライフスタイル提案まで、幅広い視点からバイクの魅力を深掘りしています。
長年にわたり培われた編集力を活かし、初心者から経験豊富なライダーまで信頼できる情報を届けています。
モーサイ掲載日:2025年9月20日
新機軸「違いの分かる男の4気筒路線」


1970年代を間近に控えた69年、バイク界に衝撃を与え、世界的な性能の基準を揺るがしたホンダCB750FOUR(フォア)。ナナハンブームの先駆けとなり、公道モデルとして初めて200㎞/hの世界を現実に引き寄せ、世界的ヒットを博すなどその影響は多大だった。
しかし、ホンダの創業者、本田宗一郎が同車にまたがり「こんなデカいバイク、だれが乗るんだ?」と驚いたように、その高性能を込めた車体が、標準的な日本人の体格では、持て余し気味だったのも事実だろう。
それゆえ、フラッグシップとしてのCBナナハンが君臨する一方、ホンダがそのイメージを継ぐCBフォア(4気筒)を、小さな排気量へ波及させたのはある意味自然な方向だったに違いない。その第1弾となったのが’71年に登場したCB500フォアだった。
同車登場時のカタログに書かれた有名なキャッチフレーズは「静かなる男のための500」。それに続き「……正統を好む男。虚飾を見抜く男。機能を洞察しうる男。男のスポーツの何たるかを知る男。そして限りなくモーターサイクルを愛する男。その男たちにおくる……」とも記された。

いわば、違いのわかる男の選ぶマシンだ。その言外には、無理のない車格、扱いやすく十分なパワーといった、ライダーフレンドリーな500で、肩肘張らずに相対せるというメッセージがあり、それが硬派なイメージを崩さずにアピールされた。フラッグシップ的な存在もいいが、常に必要ではない。そんなユーザー層に対し、500フォアの主張はうまく浸透した。高性能至上主義に突っ走っていた70年代の機運の中、このアピールが琴線に触れたライダーは案外存在しただろう。
ナナハンと同じOHC4気筒の500は、従来に見られた下位機種というイメージでない独自性も感じられた。エンジンは専用のボア・ストロークの498㏄で、前傾搭載のナナハンに対して500フォアは直立配置(当時の記事には、CB125Sの直立単気筒を4つ並べたようなとの記述がある)。潤滑方式はウェットサンプ(ナナハンはドライサンプ)で、プレス鋼板とパイプを組み合わせたダブルクレードルフレームも含め、エンジン/車体ともにコンパクト化が意識された。
また動力面では、冒頭のキャッチフレーズ「静かなる……」にも重点が置かれ、エンジンは「静粛かつ振動の少ない4気筒」で、4本出しマフラーには当時のヒット曲(洋楽)からの引用と思しき"サウンド・オブ・サイレンス"のキャッチフレーズに続き「CB500FOURは騒音を嫌います。粛々と廻る4サイクル4気筒エンジンとともに、そのエキゾーストノートもまた低く、静かです。爆音を轟かせて性能を誇示するような空しいデモンストレーションは必要ありません」と書かれる。
性能と音を誇示し、ともすると"出る杭"になりがちな高性能車(奇しくもその筆頭が自社のナナハンだったか)と一線を画し、実直なライダーの好みに寄り添ったことも、新しい手法だ。下位機種なら、上級機種と肩を並べるボリュームをアピールし、見劣りしない性能や装備を誇りたいところを、500フォアはあえて踏襲しない。そんな立ち位置も、当時の中間排気量車では斬新な存在と言えた。

手の内でコントロールできる好性能

今の基準から言えばかなり大アップのハンドルは、存在感を主張する。だがまたがれば、手を添えたハンドル下の車体は案外幅もスリムでコンパクト。173cmの体格で両足を下ろすと、足裏はほぼべったりと接地する。
500フォアのカタログには「体格、年齢を選ばない人間工学を追求したライポジ」とうたわれているが、シート高、タンク幅、その下に収まる4気筒のエンジン幅(750より40mm狭い)、ペダル位置ともによく考えられている。この時代のマシンでは、シートの縁が角張っていたり、足を下ろすとステップやキックペダルが干渉したりといった場合も多々あるが、500フォアは実に違和感のない取っ付きやすさだ。
また「振動も騒音も静か」とデビュー当時の試乗記に書かれたエンジンは、70年代初頭の750フォアやCB450系のように低回転からゴウッゴウッとした野性的な音は発しない。かといってスロットルを開ければ、フオーンフオーンと、4気筒らしいサウンドがラッパ形状の排気エンドから聞こえてくる。まさにホンダサウンドだ。
発進も気負う必要はない。適度な反力のクラッチをミートして割と手応えのあるスロットルを開けていけば、乗り手を驚かせることなく、スッと出て行く。発売当時の意見には開け閉じともにスプリングでコントロールされるスロットルは「意外に重めで、スロットルの開け代も多め」とあるが、確かにその傾向はあり、乗り手の想像以上に車体が出ることはなく、750フォアにある過激さとは反対の、常に乗り手のコントロール下にある性能を意図したようにも感じる。
トップ5速のメーター読みでは60㎞/h≒2800rpm、80㎞/h≒3700rpm、100㎞/h≒4600rpmと増速するエンジンは、フラットなトルク特性。ピークトルクは7500rpmで発生するが、低回転の3000rpmでも7割強のトルク(3kgm)を引き出しているというから、さもありなん。手応えのあるスロットルでもって、乗り手は意図して元気に開けたとしても、エンジンも車体もじゃじゃ馬になることはない。それに加えて、穏やかな効きのフロントディスクブレーキと、それよりはシャープに効くリヤブレーキでコントロールすれば、乗り手の意図に反して500フォアが暴れるシーンは、まずないだろう。
……と書いてしまうと、まるで大人しく刺激の薄いマシンに思われてしまうが、そうではない。乗り手に忠実な動きでありながら、実はシレッと速いのだ。これは500フォアならではの部分(抑制された振動と騒音)と、排気量なりのアドバンテージを実感できるからだろう。以前に試乗した4気筒のCB350/400フォアのように音の割に前に進まない感じもなく、乗り手には過不足ないパワーで、案外速度は乗っている感覚か。
48psという最高出力は、今や特別に刺激的な速さを見せる性能ではなく、しかも従順さが持ち味の4気筒となれば、車体がズドンと猛進するわけでもない。しかし、当時の試乗記にもあるように160㎞/hを普通に絞り出せ、そのレベルでも気になる振動がなく、安定した直進性だという記述に、この500フォアの真髄がある。
乗り手に従順で、過剰な主張をせず、しかも過不足ない。静かなる500フォアは、出しゃばらない性能でもって、バイクに過分なものを求めず、背伸びをしない男の乗り物として、一定の評価を得た。そうして、いつの時代でも過激なモデルが求められる一方、行き過ぎない性能を支持する層があることを、積極的にアピールした初の国産500㏄モデルだったのかもしれない。

CB500FOUR各部紹介


■CB750FOURの前傾配置に対し、500フォアは直立搭載で潤滑はウェットサンプ式の4気筒OHCエンジン。独自のカム軸受け加工方式でエンジン高を抑え、軽量化と小型化を実施。静かなるマシンのアピールどおり、71年4月施行の新型車騒音規制に対応し、マフラー内部構造改良やエンジンメカノイズ低減をねらった。クランクは5点でプレーンメタル支持。

■キャブレターは強制開閉式4連の京浜製PW22を採用。スロットルバルブ開閉には独自のリンク・連結機構を採用し、特に閉じ側を独立した2系統の戻し機構として、確実なスロットル操作をねらった。

■左右2眼の速度&回転計と特徴的な独立パイロットランプパネルには、ウインカー、ハイビーム、オイル、ニュートラルの各警告灯を配置。ステアリングステム上の赤灯は80㎞/hでの速度警告灯。

■十分な制動力をうたう250mm径ローター&片押しシングルポットの油圧式ディスクブレーキは、当時としては非凡な制動力ながら、雨天時はだいぶ物足りない性能だとオーナー氏は語る。

■後端が独特なラッパ形状のサイレンサーは、内部構造のほか上下連結による大型消音室の採用で、排気騒音低減をねらったものの、高回転時には程よい4気筒サウンドを奏でる。リヤドラムブレーキは、安定した制動力を確保。

■あらゆる体格に対応し、角を落としたシート形状は、足着き性への配慮が見られる部分。

■開閉式シートのロック機構で施錠可能なヘルメットホルダーを装備。当時としては目新しい装備。
1970年代のホンダ500/550シリーズ

■CB500T(74):CB450(65~)の系統を受け継ぐDOHCツイン車の最終形が500T。CB450系の発展版のCB450エクスポート(68)、前ディスク採用のCB450セニア(70)と異なり、排気量を上げつつ中低速重視の味付けで出力はデチューン(45→41ps)。クラシックな英国車風の意匠と座面の低いシートなどを採用したが、翌75年の免許制度改正やCB550FOURとの差別化の曖昧さなどが逆風となり、販売では苦戦。

■CB550FOUR(1974):500からボア+2.5mmの544ccに排気量アップされ、最高出力2psアップほか、高いトータルバランスを維持して登場の550フォア。

■CB550FOUR II(1976):CB400FOURと同様のカフェレーサーイメージとして、4into1の集合マフラーを採用したフォアⅡ。

■CB550FOUR K(1977):CB550シリーズはその後、マフラーとシートなどに重厚感を増したCB550FOUR Kへとモデル変遷。その後79年からはOHC4気筒のCB650へモデルチェンジ。
CB500FOUR主要諸元
■エンジン 空冷4サイクル並列4気筒OHC2バルブ ボア・ストローク56×50.6㎜ 総排気量498cc 圧縮比9 燃料供給装置:キャブレター京浜PW22 点火方式バッテリー 始動方式セル・キック
■性能 最高出力48ps/9000rpm 最大トルク4.1kgm/7500rpm
■変速機 5段リターン 変速比1速2.353 2速1.636 3速1.269 4速1.036 5速0.900 一次減速比3.246 二次減速比2.000
■寸法・重量 全長2105 全幅825 全高1115 軸距1405 シート高780(各mm) キャスター26度 トレール105㎜ タイヤサイズF3.25-19 R3.50-18 乾燥重量184kg
■容量 燃料タンク14L オイル3L
■価格 33万5000円(1971年)

文●モーサイ編集部・阪本一史 写真●岡 拓、八重洲出版アーカイブ
※本記事は、「MC CLASSIC No.1」(2017年10月号)の特集「’70年代国産500/550の世界」の記事より一部を抜粋し、再構成したものです。
モーターサイクルの「本質」を伝える専門メディア
八重洲出版が運営する「モーサイ(MOTO CYCLIST)」は、オートバイとともにある豊かな時間や文化を伝える専門メディアです。
最新バイクの試乗インプレッションやツーリングルート紹介、メンテナンス・装備の解説に加え、ライダーの視点に立った深い考察記事まで、多彩なコンテンツを展開しています。
紙媒体で培われた確かな取材力と編集力を背景に、Webでも信頼性の高い情報を発信し続けており、日々のバイクライフに役立つヒントが満載です。
モトメガネでは、オートバイに関するニュースやノウハウ、楽しみ方を幅広く紹介しています。今回は、八重洲出版「モーサイ」のご協力のもと、同メディアの記事をモトメガネにてご紹介しました。
今後も、ライダーの皆さまに役立つ情報をお届けしてまいります。






