こりゃ、もう、えらいこっちゃ!
カワサキがシェルパの発売を発表したかと思ったら、今度は延期だそうです!(2024年11月25日現在)しかしながら姿を消してから17年も経過しているので「シェルパってナニ?」と思っている人も少なくないはず。ヤマハ・セローの独壇場に一矢報いた「カワサキ・スーパーシェルパ」の記憶を辿ります。
KDXシリーズに代わる新コンセプトバイク
かつてカワサキのダートバイクは、2ストの「KDXシリーズ」と、戦う4ストがキャッチコピーの「KLXシリーズ」が二枚看板でした。レースシーンはライムグリーンで埋め尽くされるほど、多くのライダーから高い評価を得ていました。しかし出会いがあれば、別れもあります。時代は環境問題を重視するようになり、排ガス性能が劣る2ストロークは姿を消していきます。1999年の排ガス規制により、KDXシリーズが生産終了しました。
1997年、KDXシリーズの穴を埋めるように「スーパーシェルパ」が発売されました。バリバリのレーサーKDXから一転して、スーパーシェルパはトコトコ走るのんびり屋。このクラスはヤマハ・セロー225(1985年発売)が独占していましたが、カワサキは牙城を崩すべく殴り込みをかけました。
後だしジャンケンの強みを発揮
車名のシェルパとは、ヒマラヤ山麓に住むシェルパ族という少数民族のこと。選び抜かれたシェルパ族は、ヒマラヤ登山において案内や荷物運搬を行っています。シェルパは後出しジャンケンらしく、セロー225を上回る性能が与えられています。
エンジンはKLXの水冷エンジンを空冷化。セロー225のSOHC /排気量233cc/最大出力20馬力に対し、スーパーシェルパはDOHC/排気量249 cc/26馬力を発揮するなど、ぐうの音も出ないほどのアドバンテージを示しています。
私はセロー225に満足できなかった!
「バカにするな、セロー225こそ最高のトレッキングマシンだ!」と目くじらを立てる人もいると思いますが、私もセロー225を所有していたので異論はありません。ちなみに「目くじら」は、目尻を吊り上げて怒る表情を意味しています。クジラとは関係ありません。
話が脱線しました。セロー225は低いシート高と粘りのあるトルクで荒れ地をガンガン走ってくれますが、振動が激しく車格が小さいため、ダートにたどり着くまでにフラストレーションが溜まりました。我慢できず、わずか3カ月で新車を売却してしまい大損しました。
ライバルの排気量を引き上げさせた!?
スーパーシェルパは、本格的ダートモデルのKLXのエンジンをベースに粘りと速さを両立したセッティングが行われています。これによって高速走行など、ダートへ向かう舗装路もストレスなくライディングが楽しめます。スーパーシェルパに触発されたかどうかはわかりませんが、セローは2005年のモデルチェンジで排気量250ccに引き上げられました。
セローに一矢報いたスーパーシェルパでしたが、2008年にKLX250がモデルチェンジして、キャブレター方式からインジェクション方式に変更されたのを機に、2007年をもって生産終了となりました。KLX250の兄弟モデルのDトラッカーの売れ行きが良かったので、エンジンを空冷化しなくてはならないスーパーシェルパを続けるのがメンドクサクなったのでしょうかね?
国内唯一無二のトレッキングバイクはヒットの予感
今回発売される予定のKLXシェルパは、その名の通りKLX230の派生モデルに位置づけられています。ベースであるKLX230が新設計の空冷エンジンとなったことで、統一感を持たせています。
排ガス規制をクリアするためにインジェクションを搭載し、排気量232cc、最高出力18馬力に落とされています。記事を書いている2024年11月25日時点では「11月27日の発売は延期」とインフォメーションされていますが、何らかの問題が解決すれば、デリバリーが始まるはずです。各社にライバルは見当たらないので、人気を独占するかも知れませんね。
撮影協力:イーグルモーターサイクル(札幌市白石区)