令和8年7月21日に施行された「改正自動車運転致死傷処罰法」に、ドリフト、ウィリー、ジャックナイフなどの走行方法に関係する「殊更(ことさら)滑走等類型(法第2条第6号)」が追加されたことはご存じでしょうか?

そもそも、こうした危険な走行を公道上で行えば、道路交通法違反として処罰の対象となり得ます。
さらに今回の法改正では、殊更にタイヤを滑らせたり浮かせたりすることで、進行を制御することが困難な状態にさせて自動車を走行させ、その結果として人を死傷させた場合、「危険運転致死傷罪」の対象となり得ることが明確になりました。
今回は、新設された「殊更滑走等類型」にスポットを当てて解説してみます。
「殊更滑走等類型」とは?ドリフトやウイリーはどう扱われる?

殊更(ことさら)とは「意図的」「故意」といった意味です。
今回の法改正では、わざとドリフトやウイリー走行を行い、タイヤを滑らせたり浮かせたりすることで進行を制御することが困難な状態にさせ、その結果、他人を死傷させた場合には危険運転致死傷罪の対象となり得るということになりました。
したがって令和8年7月21日以降は、一般道路における「曲芸走行」で人を死傷させた場合、これまで以上に重い罪に問われる可能性がある……ということを知っておきましょう。
ウイリー走行やドリフトした場合の違反点数・反則金(青切符)の程度とは?

道路を運転している方であれば、一般道路で意図的にウイリー走行やドリフトなどの危険な走行を行った場合、走行状況によっては「安全運転義務違反」に問われる可能性があることはご存じかと思います。
警視庁「反則行為の種別及び反則金一覧表」参照
| 車種区分 | 違反点数 | 反則金 |
|---|---|---|
| 大型車 (大型・中型等) | 2点 | 12,000円 |
| 普通車 | 2点 | 9,000円 |
| 二輪車 (バイク) | 2点 | 7,000円 |
| 原付・小型特殊 | 2点 | 6,000円 |
参考サイト:警視庁「反則行為の種別及び反則金一覧表」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/torishimari/tetsuzuki/hansoku.html
「2点」という違反点数だけを見ると、安全運転義務違反は比較的点数の低い違反です。
しかし、走行の状況によって同時に複数の違反に該当してしまう場合もあるので、安全運転義務違反だけでなく、速度超過など別の交通違反が成立する可能性もあります。複数の違反が成立した場合には、違反点数が加算される場合もあります。
また、ほかの車両等の通行を妨害する目的で危険な運転を行った場合には、「妨害運転罪(あおり運転)」が適用される可能性もあり、一発免許取り消しとなり得るのです。
SNSや動画共有サイトへの投稿も注意!公園や商業施設の駐車場も「道路」になる?
例えば公園や商業施設の駐車場など、誰でも自由に出入りできる場所は、利用状況などによって道路交通法上の「道路」に該当する場合があります。
そのような場所でドリフトやウイリー走行をした結果、死傷者が出てしまうと殊更滑走等類型に該当し、運転者に対して危険運転致死傷罪が適用される可能性も考えられます。
例えば公園や商業施設の駐車場など、誰でも自由に出入りできる場所は「道路」に定義されている為、交通取り締まりの対象になります。そのような場所で、ドリフトやウイリー走行した結果、死傷が出てしまうと殊更滑走等類型に該当し、運転者に対しては危険運転致死傷罪が不可避・・・という事態も考えられます。
令和8年7月21日 施行 現在施行
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律及び道路交通法の一部を改正する法律(令和八年法律第五十二号)
参考サイト:e-Gov法令検索「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」
https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105
「うっかりスリップ」「偶発的ウイリー」の場合はどうなるの?過失と故意の違いとは
「殊更」にあたらないと考えられるケース

①雨の日のマンホールや凍結路でタイヤが滑った。
→ 雨や路面凍結などの環境的要因によって意図せずタイヤが滑ったのであれば、故意にタイヤを滑らせたわけではないため、「殊更滑走」には当たらないと考えられます。
②登り勾配を走行中、何らかの原因により前輪が浮き上がった。
→バイクの運転特性(後輪駆動)を考えると、山道などの急勾配においては思いがけず前輪が浮いてしまうこともあるかもしれません。これについても、意図的に前輪を浮かせたものでなければ「殊更」には当たらないと考えられます。

③積雪道路を日常的に運転しているため、交差点やカーブなどを曲がるときにドリフト状態になってしまう。
→積雪・凍結路面という外的要因によって、やむを得ず滑ってしまう車体を「滑らないようにコントロール」しているのであれば、意図的にタイヤを滑らせているわけではないため、「殊更」には該当しないと考えられます。

参考サイト:法務省「危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法)の法改正 Q&A」
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00239.html#Q5
ただし、「殊更滑走等類型」に該当しないからといって、事故を起こしても責任を問われないということではありません。事故が発生した場合は、状況によって「安全運転義務違反」や「過失運転致死傷罪」に問われる場合があるので、悪条件下での運転は控えるというのがセオリーでしょう。
故意に当たるケース
空き地や公道で意図的にアクセルを吹かしてリアタイヤを滑らせた、ウイリーを見せつけた。
意図的にタイヤを滑らせたり浮かせたりすることで、進行を制御することが困難な状態にさせた場合は「殊更滑走等」に該当し、その結果として人身事故を起こせば、非常に重い罪に問われる可能性があります。
殊更滑走(故意)とは、意図的にタイヤを滑らせたり浮かせたりすることで、進行を制御することが困難な状態にさせて走行する行為をいいます。その結果として人を死傷させた場合、「危険運転致死傷罪(負傷:15年以下、死亡:1年以上20年以下の拘禁刑)」が適用される可能性があります。
この部分が今回の法改正のポイントと言えるでしょう。
参考サイト:法務省「危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法)の法改正 Q&A」
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00239.html?utm_source=chatgpt.com
憧れるのは「真のプロフェッショナル」。一般公道では試さないライディング美学

私自身もライダーなので、ウイリーやジャックナイフなどのパフォーマンス走行に憧れる気持ちは心から理解できます。 実際に成功すると「達成感」「高揚感」が湧き出すなど、バイクコントロールの楽しみが高まることを知っています。

これがレースやエクストリームスポーツであれば称賛され、大会によっては高額な賞金が出るほど名誉なことです。しかし、一般道路においては大ケガはもちろん、訴訟問題など取り返しのつかない事態に陥ることも考えられます。
ベテランライダーだからこそ、今回の改正自動車運転死傷処罰法と、新設された「自動車運転死傷処罰法第2条第6号 殊更滑走等類型(ことさらかっそうとうるいけい)」の内容について理解し、「できるけど、しない」というマインドセットをしておきたいですね。








