【ホンダ原チャリ列伝】昭和の原付は3輪、アメリカンなど個性強烈！

2023年4月17日

「原チャリ」と呼ばれ、親しまれてきた排気量50ccのバイクが、排ガス規制や販売台数の減少によって消滅しようとしています。125ccクラスを原付扱いにすることも健闘されており、ますます縮小傾向になることでしょう。強烈な個性を放ったホンダの原チャリを紹介します。

アニマル梯団もビックリ！　悲劇の三輪車「ロードフォックス」

ロードフォックスは、「モンキーやゴリラがあるなら、キツネがあってもいいじゃないか！」と、1984年7月に発売されたオトナの三輪車です。「ストリーム」「ジャイロ・X」「ジョイ」「ジャスト」と続くスリーターシリーズ第5弾で、コンポーネントはジョイ・ジャストと共用。テールユニットも初代VT250Fと共用していたことから、「お尻がVT」などと呼ばれていました。

当時のカタログには、バスケットをする黒人男性とともに、「8ビートのプレイ・スリータ―」や「スイング天国だ」など、走りをイメージした意味不明なコピーが踊っています。カートのような走行とスタイリッシュなデザインは一部に支持されましたが、約1年で販売終了になりました。

メーカー名：ホンダ
車名：ロードフォックス
重量：63kg
エンジン：TB08E・空冷2サイクル単気筒
排気量： 49cc
最高出力：4.0ps/6,000rpm

オーマイガーな原チャリ★アメリカン「JAZZ」

1986年に発売されたJAZZは、「アメリカン（クルーザー）は、堂々とした車格にゆったりとしたポジション」という概念を覆した一台です。ロー&ワイドな車体に、スーパーカブ系の空冷4サイクル・OHC単気筒エンジンが搭載され、タンクの下はスカスカ。リアショックやスイングアームにカブっぽさを感じます。しかし細部の作りは手抜きなし。ビートやS660などの軽スポーツカーにも全力投球するホンダらしさが現れています。

イメージキャラクターに採用されたのはJAZZ界の大御所、渡辺貞夫…ではなくローリー寺西（現在はローリー）。「すかんち」というバンドのボーカリストで、日本屈指のギタリストですが、その見た目と逆から読むとオゲレツなバンド名で過少評価されています。ちなみに彼、槇原敬之のいとこです。

メーカー名：ホンダ
車名：JAZZ
重量：83kg
エンジン：AC09E・空冷4サイクル
排気量： 49cc
最高出力：4.0ps/7500rpm
※1986年販売当時

スニーカーを「ズック」と呼ぶダサさがたまらない「ズーク」

1989年に開催された第28回東京モーターショーに参考出品された「MS50」が市販化され、翌年「ZOOK（ズーク）」として販売されました。ホンダの公式サイトには「高付加価値化の進むスクーターに飽き足りない都会派ヤング向けのトレンディなニューモデルとして二輪車の原点に立ち帰り、「乗って楽しく」「見て楽しく」を徹底追求した新しいスタイルの原付タウンビークルである」と書かれています。

メインキャラクターに所ジョージを起用し、カタログにも「ヘンテコリンは、気持ちいい」「ズークはこれからの普通です」というコピーが並んでいます。しかし、チャリンコのサドルのようなシートや、猫背を矯正するような直角的なポジション、何よりもスニーカーをズックと呼ぶセンスでは、都会派ヤングの心はつかめません。スタンダードになることはできず、1年後には姿を消してしまいました。

メーカー名：ホンダ
車名：ズーク
重量：43kg
エンジン：AF05E(空冷・2サイクル・単気筒)
排気量： 49cc
最高出力：3.3ps/6000rpm

♪イージーナイン　フォウ！ ♪イージーナイン　フォウ！　踊る君を見てる～（TRFのEZ DO DANCEのノリ）

「踊る君」どころか、EZ-9を見たことがある人は、どれくらいいるのでしょうか。なぜなら年間販売計画台数は、たったの500台。しかも公道走行ができないという究極のバイクなのです。1989年に開催された第28回東京モーターショーに参考出品されたコンセプトモデルEZ-90をベースに、1990年9月に市販化されました。エンジンから排気管、チェーン、燃料タンクやオイルタンクなどがフルカバーされるとともに、操作が簡単なオートマチック機能を搭載し、運転免許なしでも気軽に楽しめる設計になっています。