250/500/1100という3種類の排気量を展開している人気クルーザー・レブルシリーズ。前半ではおもに足着き、取りまわしといった静的要素を中心にレビューした。後半の今回はエンジン特性の解説と、市街地や幹線道路、高速道路での走行性能、各モデルの得意シーンやおすすめユーザー像について詳しく解説するぞ。
三機種三様のエンジン特性
| モデル | エンジン | 最高出力 (PS/rpm) | 最大トルク(kgf・m/rpm) |
|---|---|---|---|
| 250 | 単気筒 | 26 / 9,500 | 2.2 / 6,500 |
| 500 | 直列2気筒 | 46 / 8,500 | 4.4 / 6,000 |
| 1100 | 直列2気筒 | 88 / 7,250 | 10.0 / 4,750 |



250が単気筒エンジン、500と1100が直列2気筒エンジンを採用する。
それぞれに共通エンジンを持つモデルが存在し、オンロードスポーツからスクランブラーまで幅広い。図表はCLシリーズやCRF1100Lアフリカツインとのスペックを比べたものだ。
| 排気量 | 共通モデル | 最高出力 (PS/rpm) | 最大トルク (kgf・m/rpm) |
|---|---|---|---|
| 250 | レブル250 | 26 / 9,500 | 2.2 / 6,500 |
| CL250 | 24 / 8,500 | 2.3 / 6,250 | |
| 500 | レブル500 | 46 / 8,500 | 4.4 / 6,000 |
| CL500 | 46 / 8,500 | 4.4 / 6,250 | |
| 1100 | レブル1100 | 88 / 7,250 | 10.0 / 4,750 |
| アフリカツイン | 102 / 7,500 | 11.4 / 5,500 |
レブル250/500とCL250/500は基本設計が同じなので、スペックにも大きな差はない。レブル1100とアフリカツインに明確な差がある理由は、レブル1100専用のカムシャフトを採用してバルブタイミングとリフト量を変更したり、フライホイールを重くして慣性モーメントをアップさせるなど、クルーザーらしさを追求した大きな変更が加えられているためだ。
【パワーとトルク】

自転車でたとえると、「ペダルを回す速さ=パワー」「ペダルを踏みこむ強さ=トルク」と考えればいい。
もうひとつ付け加えるなら、パワー(最高出力)と最大トルクの発生回転数にも注目するといい。
2つの発生回転数が近いか離れているかで、エンジン特性をある程度読み取れる。
・回転数が近い→パワーとトルクが近い領域で発生するため、ピーク域での爆発的な加速が得やすい(レブル500 / 1100)
・回転数が離れている→低回転域で爆発によるトルクを稼ぎ、高回転域で回転馬力を生むという構成になり、街乗りから高速まで対応幅が広い。(レブル250)
今回は排気量が250~1100㏄と大きく異なるため、上記の理屈だけで3車を同列に語れないが、近い排気量に乗った経験があるなら比較材料になるハズだ(例:CBR250Rとレブル250の比較など)。
【エンジンの滑らかさと振動】
いわゆる「フィーリング」を決定づける要素が、エンジンの滑らかさ、振動(音)などである。
カタログスペックやエンジン設計からわかる要素を見てみよう。
【レブル250】

ベースエンジンがオンロードスポーツのCBRシリーズだけあって、本来は高回転型エンジンとしての特性をもつ。しかしレブル250は低回転域の力強さを引き出すために吸気ポート形状とFIセッティングを変更し、マフラーによる排気抵抗を調整することで鼓動感とパルスフィールを演出。これにより、街乗りや低速巡航での快適性とトルク感を実現している。
【レブル500】

250と同様にオンロードスポーツのエンジンがベースだが、ボア×ストロークが67.0mm × 66.8mmとほぼ同値のスクエアエンジンとなっている(250は76.0mm × 55.0mmのショートストロークエンジン)。スクエアエンジンは高回転域と低回転域のバランスがよく、ピストン速度が安定しているためムダな振動が抑えられるうえ、燃費にもすぐれるといったオールマイティさが特長だ。さらに180度クランクの採用によって、スムーズな吹け上がりと伸びのあるパワーフィールで扱いやすい特性に仕上げられている。
【レブル1100】

レブル500と同じ並列2気筒エンジンだが、こちらは270度クランクを採用する。違いをカンタンに解説すると、2つのシリンダー内で交互に起こる爆発が等間隔なのが180度クランク、不等間隔なのが270度クランクだ。270度クランク(不等間隔爆発)のいいところは、Vツインエンジンのようなドコドコとした鼓動感が得られること。180度クランクに比べるとややクセを感じるかもしれないが「鼓動感は絶対に欲しいぜ!」というライダーなら、270度クランクのフィーリングがハマるだろう。
実走インプレッション

ここからは編集部3名が実走したインプレッションを紹介する。
ステージは市街地と幹線道路、高速道路。アクセル操作に対するエンジンの反応や、ギヤチェンジ、各部の操作感などを入念にチェックしてみた。
クラッチのミートポイント
【レブル250】
インプレ車両がEクラッチモデルなのでレバー操作は不要。極めてスムーズに発進ができ、渋滞、街乗りでGO&STOPが多いシーンではかなりラクに操作できる。ただ、通常のMTに慣れたライダーにとって未知の操作なので、最初は戸惑うかもしれない。
【レブル500】
駆動系に特別な機構を持つモデルではないため、ミートポイントのわかりやすさは平均レベル。扱いやすく、初心者でも安心して操作できる。
【レブル1100】
ライダーによってはレバーまでの距離が遠い印象を受けるため、半クラには慣れが必要かもしれないが、ミートポイントは明確で扱いやすい。これらの問題が気になる場合は、DCTモデルを選べばレバー操作から解放される。
アクセルを開けたときのエンジンの反応

【レブル250】
反応は良好。穏やかな加速特性で初心者にも扱いやすいマイルドな乗り味。250ccながら一般道では十分な加速感が得られるが、ライダーの好みによってはダイレクトさが欲しくなる場面も。
【レブル500】
スムーズで反応もよく、アクセルを開けると鋭い加速が楽しめる。フィーリングがスポーティな分、鼓動感は薄め。見た目のクルーザー感に反して、走りはシャープなので好みが分かれるところだ。
【レブル1100】
非常にパワフル。リッターバイクらしく、わずかな開度でも加速しようとするため緊張感がある。重低音やクルーザー感は強く、アクセルを開けると地面を駆けるような鼓動感とともに一瞬で加速する。
ギヤ操作のフィーリング
【レブル250】
Eクラッチによりシフトショックが少なく、ギヤの入りは滑らか。クラッチ操作不要で渋滞時も快適だ。操作に慣れていない影響もあるが、ペダルの踏み心地はやや固く感じた。低速域のギヤの入りがさらに滑らかなら理想的。
【レブル500】
カチッとしたフィーリングで、しっかりとした操作感があり安心感がある。ギアの入りも非常にスムーズで、入りにくい段はなく、全体的に扱いやすく不満のない仕上がり。ギヤチェンジのしやすさが際立ち、快適な操作性が印象的だった。
【レブル1100】
特に入りにくい段はなくシフト操作は快適。低速ギヤに入れたときにガツンとした感触が伝わるが、荒っぽいフィーリングが好きなら逆に気に入るポイントになるだろう。
ステージ別インプレッション

ここからは、ステージに合わせたエンジン回転域の扱いやすさとトルクの出方、サスペンションの動き、ポジション、ブレーキのコントロール性などに着目して走行インプレッションを行った。
市街地
【レブル250】
EクラッチによりGO&STOPが快適で、街中を楽しく走るためのバイクとして優秀。急な加速がなく安心して扱え、足つきの良さも快適性を高めている。サスやブレーキに不満はなく、クルーザーらしい安定感を保ちながら軽快に走れる。一方、トルクは控えめで低速域でもう少し力強さが欲しい場面があった。シート後方に座るとニーグリップが難しいが、ポジションを工夫することで対処できるだろう。
【レブル500】
トルクフルなエンジンで加速がラクなうえ、ギクシャクしにくい。250より安定感とスポーティーさが増し、重さを感じず快適に走れるが、吹け上がりがスムーズな分、低速でストレスを感じることも。サスは硬めで、ブレーキは効かないわけではないが制動に時間がかかる印象。ポジションは250と同様で、シート後方ではニーグリップが難しい点が気になった。
【レブル1100】
大柄で重いはずなのに安定感と扱いやすさがあり、低速から力強く加速する。街乗りではややオーバースペックに感じる場面もあるが、3速2,000回転を保てば快適に走れる。サスは腰があって安定しており、リッターバイクながらタイトなコーナーもスムーズに曲がれる。いい点は多いが、さすがに暑い日だとエンジンからの排熱が気になる。
幹線道路
【レブル250】
加速がスムーズで流れに乗りやすく、安定して走れるが余裕は少なめ。トルクとパワーがもう少し欲しい。流れが速い場面ではアクセルをがんばって開ける瞬間もあった。パワー不足は否めず、ギヤを1速落として加速する場面もあったが、Eクラッチの操作性が快適で好印象。
【レブル500】
余裕をもって流れに乗れ、追い越しもスムーズでストレスはない。速い流れの中でこそ真価を発揮し、流れを引っ張る力は十分だ。3台の中ではエンジンブレーキが強めで、最適なギヤを選んで操る楽しさがある。アクセルを開ければ速度は出るがトルク感は薄く軽快な印象。ロードバイク的な特性で乗りやすいが、クルーザーとしては違和感を覚えるライダーもいるだろう。
【レブル1100】
3車中でトルク・パワーともに圧倒的で、速い流れでも軽くアクセルを開けるだけで十分な加速ができる。余裕をもって流れに乗れるうえ、鼓動感と重低音が心地よく、流しているだけで楽しい。飛ばす必要は感じず、4速以上でもトルクが効いて気持ちよく速度が乗る。
高速道路
【レブル250】
加速や登坂・追い越しに余裕がなく、パワー不足を感じる場面がある。ブレーキの効きも控えめで、高速道路の動力性能は他2台に劣る印象だ。ただし、走行車線でのんびり走るならポジションが快適で、長距離移動でも疲れにくい。
【レブル500】
高速巡航や追い越しもラクにこなせるためパワー不足は感じにくいが、余力たっぷりという印象ではない。パワーよりも特筆すべきは振動の少なさで、快適なクルージングを楽しめる。ただし、長時間の巡航では退屈に感じるかもしれない。
【レブル1100】
余裕のある加速とブレーキ性能で高速巡航に最適。スポーティさもあり、ライディングポジション調整で快適性がさらに向上するだろう。走行車線でのんびり走っても、追い越し車線で力強く加速しても楽しい。鼓動感を活かした緩急ある走りが魅力の1台だ。
快適な走りをサポートする装備品
最後は、各モデルが搭載する装備品について解説。
レブル250






レブル500



レブル1100






3台の中で選ぶならどれ? どんなライダーにオススメ?

レブル250
取りまわしが軽く、街乗りで必要十分なパワーをもつため、シティコミューターとしてこれ以上の選択はない。幹線道路や高速道路でパワー不足を感じるものの、クルマの流れに乗るだけなら問題ない。飛ばして楽しむバイクではないことを理解しているライダーなら気にならないだろう。燃費がよく、航続距離がカタログ値で400㎞近いこともあり、ロングツーリングの頼れる相棒になってくれるマシンだ。
レブル500
レブル250(171㎏)と比べると20㎏重いが、取りまわしで重さを感じる程度。走り出せばその差がネガに働くことはほとんどない。一方で、パワー差は約8割増(250が26ps、500が46ps)もある。さらに3車の中で振動が少なくスムーズな走行フィールを味わえるため、余裕をもってハイスピードクルーズを楽しむなら500がベストチョイスだろう。ただし、クルーザーらしい鼓動感を求めるライダーは、そのスポーティな乗り味ゆえに物足りなさを感じるかもしれない。逆にスポーティに走りたいライダーにピッタリの1台。好みが分かれるところだ。
レブル1100
リッターバイクだけあって車重は200㎏を軽く超えているため、取りまわしには慣れが必要。しかし、いったん走り出せば市街地でのフットワークは意外に軽い。専用フレームに専用セッティングがほどこされたエンジンの完成度は高く、レブル250(26ps)の約3倍(88ps)を誇るパワーはどんな走行シーンでもライダーを満足させてくれるだろう。大柄なボディ&ハイパワーエンジンを求めるライダーなら1100一択だ。








