スズキのアドベンチャーツアラー・Vストロームシリーズは、さまざまな排気量、グレードがラインアップされており、それぞれに異なる魅力を持つ。この記事を読んでくれたアナタは、きっと旅感満載のVストシリーズが気になっているハズ。
と、同時に「Vストって種類ありすぎ！ どれを選べばいいんだよ！」
…とも思っているハズ
そんなバイクユーザーのために、モトメガネ編集部員の3名がVストローム250、650、800の3モデルを試乗。
気になる各モデルの特徴や違いを徹底比較し、前半では、主にスペックや装備、足つき性、取りまわしやすさについて紹介していくぞ。
※注意※
Vストローム650/650XTは残念ながら生産終了がアナウンスされている（時期は未定）。欲しい人は急ごう！
また、後半（近日公開予定）では市街地や高速域での走行性能、各モデルの得意シーンやおすすめユーザー像について詳しく紹介しているので、こちらも要チェック！
スペック一覧
エンジン／航続距離
| モデル | エンジン | 最高出力 | 燃費（※） | タンク容量 | 航続距離 |
|---|---|---|---|---|---|
| 250 | 並列二気筒 | 24PS | 32.1km/L | 17L | 545.7km |
| 650 | V型二気筒 | 69PS | 23.6km/L | 20L | 472km |
| 800 | 並列二気筒 | 82PS | 22.6km/L | 20L | 452km |
【Vストローム250】税込価格：66万8,800円
エンジンのベースは、かつてツーリングマシンとして高く評価されていたGSR250（現行のGSX250Rも共通のエンジン）。二輪では少数派といえるロングストロークエンジン（ボアよりストロークが長いエンジン）を採用しており、トルクフルかつ低振動でライダーを疲れさせない特性だ。燃費にもすぐれ、航続距離は500㎞を越える。
【Vストローム650】税込価格：99万円
エンジンのベースはVツインスポーツのSV650やグラディウス650。Vツインらしい鼓動とトルクフルな加速力、高回転域の伸び上がりにすぐれる。といっても「もっと回転数を上げて走ろうぜ！」とライダーを急かすようなフィーリングではなく、ツーリングに適したマイルドな特性が与えられている。
【Vストローム800】税込価格：127万6,000円
エンジンは新開発された775cm³の並列二気筒。GSX-8S（8R）と共通のエンジンだけあってスポーティな特性が与えられている。270度位相クランクを採用しているため、並列二気筒ながらVツインエンジンのような不等間隔爆発のフィーリングが特長だ。
車体／シート高／最小回転半径
| モデル | 全長／全幅／全高 | 装備重量 | 最低地上高 | シート高 | 最小回転半径 |
|---|---|---|---|---|---|
| 250 | 2,150/880/1,295mm | 191kg | 160mm | 800mm | 2.7m |
| 650 | 2,275/835/1,405mm | 212kg | 170mm | 835mm | 2.7m |
| 800 | 2,255/905/1,355mm | 223kg | 185mm | 825mm | 2.6m |
数値だけ見るといずれも「排気量なり」で、特筆すべき点は少ない。
というより、スペックを見てもわからないことの方が多いので、ここは実体験に基づくインプレッションを紹介する。
スペック上のシート高と、実際の足つきの違いは？？？
実は「シート高＝足つき」ではない。
影響が大きい要素はシートの形状だ。シートの幅がスリムなら足を真下におろせるが、幅が広いと足が開いた状態になって足つきは悪化する。
ほかにもサスペンションの沈み込みの影響も大きく、さまざまな要因で足つきは変化するのだ。
編集部・朝日（163cm／60kg）
編集部・矢部（165cm／50kg）※コメントのみ
【Vストローム250】
両足べったりではないが、問題なく支えられる
【Vストローム650】
両足をつこうとすると厳しい。どちらかに傾ければ問題なし
【Vストローム800】
650と似た感じだが、わずかに800の方が足つきがいい印象
編集部・岩井（173cm／65kg）
タンデムのイメージ
タンデマーの快適性は以下の項目が重要だ。
・ライダーとの目線の高さ→タンデマーの視界がライダーの頭にさえぎられないか
・グラブバーの位置→つかみやすく、体を支えやすい場所にあるか
・シートとステップの間隔→ヒザの曲がりが窮屈にならないか
ライダー： 編集部・岩井（173cm／65kg）
タンデマー：編集部・矢部（165cm／50kg）
アドベンチャーモデルはロングツーリングでライダーを疲れさせない配慮がされており、タンデマーも同様だ。いずれのモデルもシートの厚さや座面の広さが十分にあり、グラブバーも握りやすい位置にあるので、快適にタンデムツーリングを楽しめるだろう。あえてネガを出すなら、800のみステップの位置が高く、タンデマーのヒザが曲がりがちな点くらいか。
スペックではわからないバイクの取りまわしの違い
車両をサイドスタンドから起こしたときの重さの違いは？
3名ともVストローム250（191㎏）がもっとも軽く感じ、起こす動作が容易である印象。650（212㎏）と800（223㎏）は、重量はもちろんだが重心の高さもあって、反動をつけて起こすケースが多いようだ。
押し引き時の取りまわしは？
こちらもVストローム250の軽快さと小まわりの利きやすさを高く評価。650と800に関しては、取りまわしの際に大柄な車体と重量に気をつかう場面が多く、ビッグバイクに対する「慣れ」が求められる場面もあった。ただし、ハンドルの高さ・広さのおかげで想定よりも扱いやすいという側面もある。
ライディングポジションの違いは？
Vストローム250のコンパクトかつ自然なポジションが好評。コンパクトとはいえ、250クラスのなかでは大柄な車体なので、体格が平均的なライダーなら違和感なく乗れるだろう。一方650はシート座面が広く、足つきではマイナスだったシートを再評価する場面も。800については、シートは高めであるものの、ハンドル位置やステップ配置のバランスが良く、長距離走行でも疲れにくい快適なポジションが高評価。
荷物の積載力は？
身もフタもない言い方をすれば、積載力は3台ともまったく問題ない。ロングツーリングを想定した大型リヤキャリアを標準装備しているからだ。
ここで重要なポイントは「タンデムシートとリヤキャリアに段差がない」こと。
この条件をクリアしているのは650と800。段差がないフラット形状になっており、シートのとキャリアを大きな一つの面として使える。
これによって大きな荷物をさらに安定して積載できるのだ。
荷物のベルトをかけるフックポイントについても問題なし。そのなかでとくに優秀だったのが250で、フックポイントが理想的な配置のため荷物を固定しやすい。
対して650と800もフックポイントが多くて使いやすいのだが、今回のテストではシートバッグのベルト固定にサイドフレームやタンデムステップのステーを介する必要があった。
大した問題ではないが、短いベルトで対応できなかったり、サイドカウルに干渉するなどの可能性を考えれば250のようなフックポイントがベストだろう。
【使用したバッグ：LEGACY DUFFEL BAG 46L】
まとめ：取りまわし、足着き、荷物の積載ではどれがよい？
3台の中でもっとも取りまわしやすく、足つきも安定しているのはVストローム250。軽量かつ低重心な構造で、街乗りや駐車時も安心感が高い。これは編集部3名とも同意見だ。
ビッグアドベンチャーにカテゴライズされる650と800は重心が高く重量感もあり、傾斜地での取りまわしには注意が必要。ただし、800はシート形状の工夫により足つき性で650よりすぐれるという結果に。
積載性は3モデルともハイレベルで650／800はとくに優秀。宿泊やキャンプツーリングにも十分対応可能だ。
最後に、650と800は取りまわし＆足つきで難を感じるシチュエーションがあったが、これらは「走り」を追求した結果であることを忘れてはいけない。アドベンチャーバイクの真価は走ってこそ発揮されるのだ。
というわけで、試乗記事は近日中に公開予定！
お楽しみに！！
