高い人気を誇るヤマハのMTシリーズ。主となるラインナップは、軽快な操作性を備えたMT-25、扱いやすさとトルク感を両立させたMT-07、そして3気筒エンジンで圧倒的な加速力を誇るMT-09などがある。いずれも共通の“ダークサイド・オブ・ジャパン”デザインをまといながら、排気量や車体サイズの違いによって大きな差をもつスポーツネイキッドだ。今回はこの3モデルを乗り比べ、それぞれの特徴を比較する。

前半となる本記事では、主にスペックや装備、足つき性、取りまわしやすさについて紹介。
後半(近日公開予定)では、市街地や高速域での走行性能、各モデルの得意シーンやおすすめユーザー像について詳しく紹介していくので、こちらも要チェックだ!
スペック一覧
エンジン/航続距離
| モデル | エンジン | 最高出力 | 燃費(※) | タンク容量 | 航続距離 |
|---|---|---|---|---|---|
| MT-25 | 直列2気筒 249㏄ | 35PS | 26.5km/L | 14L | 371.0km |
| MT-07 | 直列2気筒 688㏄ | 73PS | 25.4m/L | 13L | 330.2km |
| MT-09 | 直列3気筒 888㏄ | 120PS | 21.1km/L | 14L | 295.4km |

燃費は排気量が大きくなるにつれてダウンするが、MT-25より約2倍、約4倍の出力だと考えれば、MT-07、MT-09はエコの面で大健闘という見方もできる。
なお、燃料はMT-25とMT-07がレギュラー、MT-09がハイオク指定だ。
【MT-25】税込価格:63万2,500円

YZF-R25と共通の水冷DOHC直列2気筒エンジンを搭載。スポーツ特性はそのままに、アップライトかつ自然なポジションを採用することで快適性をさらに高めている。
2025年式からアシスト&スリッパークラッチやUSB端子、スマートフォン連携機能などの装備面が大きく進化。780mmのシート高と166kgの軽量ボディにより、取りまわしや足つき性にもすぐれる。320㏄エンジンを搭載する兄弟モデル・MT-03とは基本構成を共有しつつ、排気量や価格が異なる。




【MT-07】税込価格:96万8,000円

688cc並列2気筒エンジンを搭載したネイキッドスポーツモデルで、そのエンジンはフルカウルスポーツ・YZF-R7にも採用されている。2025年式のMT-07には電子制御スロットル「YCC-T」やライディングモード「YRC」、スマートフォン連携可能な5インチTFTメーターを新採用。倒立式フロントフォークやラジアルマウントキャリパーで足まわりも強化され、俊敏かつ安定した走行性能を実現している。
また派生機種として、クラッチ操作不要の自動変速モデル「MT-07 Y-AMT」も展開しており、用途や好みに応じた選択が可能となっている。




【MT-09】税込価格:125万4,000円

2025年式では、ライディングモード選択や6軸IMUによる高度な電子制御(トラクション・スライド・リフト・ブレーキ)を統合した「ライダーズアシスト」を採用。5インチTFTメーターやスマートフォン連携機能も搭載され、利便性が向上している。
上級グレードのMT-09 SP(144万1,000円)は、専用カラーに加え、フロントにKYB製フルアジャスタブルフォークやオーリンズ製リヤショック、ブレンボ製モノブロックキャリパー「Stylema®」を装備するなど、スポーツ志向の仕様となる。
さらに、MT-07と同じく、クラッチ操作不要の電子制御自動変速モデル「MT-09 Y-AMT」もラインナップしている。




車体/シート高/最小回転半径
| モデル | 全長/全幅/全高 | 装備重量 | 最低地上高 | シート高 | 軸間距離 |
|---|---|---|---|---|---|
| MT-25 | 2,090/755/1,075mm | 166kg | 160mm | 780mm | 1,380mm |
| MT-07 | 2,065/780/1,110mm | 183kg | 150mm | 805mm | 1,395mm |
| MT-09 | 2,090/820/1,145mm | 193kg | 140mm | 825mm | 1,430mm |



スポーツネイキッドらしく、3車ともコンパクトな車格。足つきに影響するシート高と、取りまわしに影響する装備重量・軸間距離(ホイールベース)は排気量が上がるにつれて大きくなっている。
ただ、数値だけで比較できない要素はたくさんあるので、ここからは編集部スタッフによるインプレッションを交えながら解説する。
足つきの違いは? ライディングポジションは?
まずはシートの形状から。単純なシートの高さを比べると低い順からMT-25<MT-07<MT-09だが、この数値は参考程度にしてほしい。シートが高くても座面が絞り込まれていれば足を真下におろせるため、足つきはよくなるからだ。
シート形状はMT-07は座面が広く、MT‐25とMT-09はかなり絞り込まれていることがわかる






編集部・朝日(163cm/60kg)
【足つき】



【ライディングポジション】



編集部・岩井(173cm/65kg)
【足つき】



【ライディングポジション】



タンデムのイメージ
タンデマーの快適性は以下の項目が重要だ。
・ライダーとの目線の高さ→タンデマーの視界がライダーの頭にさえぎられないか
・グラブバーの位置→つかみやすく、体を支えやすい場所にあるか
・シートとステップの間隔→ヒザの曲がりが窮屈にならないか
ライダー: 編集部・岩井(173cm/65kg)
タンデマー:編集部・矢部(165cm/50kg)






MT-25は、他2車種と比べるとサスペンションの沈み込みが大きく、1人乗りなら気にならないが、タンデムで沈みすぎる印象がある。リヤショックに7段階のプリロード調整機構があるので、気になる場合はハード方向に調整した方がいいだろう。
また、MT-09は他車よりもタンデムステップが高めなので、長時間のタンデムではヒザの窮屈さが気になりそうだ。
タンデムシートの高さは3車ともほとんど変わらないので乗り降りのしやすさは同じ。ライダーシートの高さはMT‐25がもっとも低いため、タンデマーの視界を広くとれる利点がある。
惜しい点は、3車とも体を支える「つかまりどころ」が少ないこと。タンデムの頻度が多いライダーはグラブバーやリヤキャリアを追加した方がよさそうだ。



スペックでは分からないバイクの取りまわしの違い

車両をサイドスタンドから起こしたときの重さの違いは?
166㎏という軽量な車体のおかげで、MT-25は重さを感じずに起こせる。排気量の増加にともない重さを感じる結果になったが、MT-07、MT-09ともにビッグバイクの中ではかなりの軽量級という意見が多かった。
押し引き時の取りまわしは?

MT-25は軽快で小まわりが利くため初心者でも安心して取りまわせる。MT-07は重量を感じるものの、車体の幅が抑えられているため押しやすく、ライダーが力を入れやすい。MT-09はさすがに押し出しに力が必要で、ハンドルを切り返す時の慣性が大きく、細かい取りまわしは少し苦労するという意見も。
ただ、3車とも同クラスのマシンの中では軽量であるため、排気量を考えるとかなり取りまわしやすいという結論に至った。
荷物の積載力は?
スポーツモデルゆえに積載力は低い。トップケースやサイドバッグなどを追加(後述)するといいだろう。
ノーマル状態では荷物を載せる場所はタンデムシートしかない上に、そのシートも幅がせまいため大きな荷物の積載は苦手だ。
なおMT-09は、タンデムシートを外した際に見えるシートフレームにバッグを固定するサブベルトを通そうと試みたが、どこにもベルトを通せるすき間が見つからず断念……。MT-09のみ荷物を積載した項目が存在しないのはそのため。MT-09に荷物を積載するなら、ドラムバッグをロープ等で固定するのではなく、シートへ固定する仕掛けがあらかじめ用意されているシートバッグを用いたい。
【MT-25】



【MT-07】



最大の難点はフックポイント(ベルトをかける場所)の乏しさで、画像のようにシート下にベルトを固定するなど工夫が必要になる。


MTシリーズに限らず現代のスポーツバイクはリヤまわりをコンパクトにする設計が主流なため、小さな荷物なら問題ないが、ツーリングバッグなどの大きな荷物だと相性がイマイチ。
ただ、純正アクセサリーでトップケースやサイドバッグが用意されているので、これらを駆使すれば積載力が格段に上がり、キャンプツーリングも可能。コンパクトなリヤまわりに迫力が増して印象もガラリと変化するので「旅するMT」を作り上げるカスタムも楽しめる。

まとめ:取りまわし、足つき、荷物の積載ではどれがよい?
もっとも取りまわしやすく、足つきも良好なのはMT-25。街乗りや駐車時の安心感が高い。また、ベースモデルのYZF-R25よりアップライトなポジションで疲れにくくツーリングも快適。オールマイティに使える250モデルに乗りたい人におすすめだ。
MT-07は400㏄クラス並みのコンパクトな車体に軽量なボディのため、普通二輪免許の教習車よりも軽快に取りまわせるだろう。ライダーの身長によっては足つきの問題があるが、その点をクリアできれば初めての大型バイクにピッタリの1台だ。
MT-09もMT-07と同様に、クラスを超えた軽快さがありリッターバイクと比べるとかなり取りまわしやすい。シート形状に工夫がされているためシート高の数値以上に足つきがいいところも好ポイントだ。
気になる走行インプレッションは近日中に公開予定!
お楽しみに!!









