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夏冬問わず快適、街中〜高速まで扱いやすい最新ツアラー! BMW R 1300 RTの実力

※記事内容は全て執筆時点の情報です。

2025年6月、ドイツで開催されたBMWモトラッドの新型車試乗会「BMW MOTORRAD BOXER DAYS 2025」で、R 1300 R、R 12 G/S、そしてR 1300 RTに試乗してきました。R 1300 RR 12 G/Sはすでに試乗会でのインプレをこのモトメガネで紹介しているので、詳細はそちらでチェックしてください。

今回はBMW伝統のツアラーモデルR 1300 RTについてお届けします。

目次

BMW伝統のツアラーモデル「RT」とは?

1978年に登場したR 100 RT。

OHV 2バルブのR 100シリーズの時代から、長距離ツーリングでの快適性を求めたツアラーモデル「RT」を発売していたBMWモトラッド。

先代モデルは1250ccの水冷ボクサーエンジンを搭載していましたが、最新のボクサーエンジンが1300ccにアップデートされたことを受けて、R 1300 GSに引き続いてRTでも1300ccのエンジンが搭載されることになりました。これにより、最新の水冷ボクサーエンジンを搭載するモデルはR 1300 GS、R 1300 GSアドベンチャー、R 1300 R、R 1300 RS、R 1300 RTの5機種となり、水冷ボクサーシリーズはすべて1300ccに置き換わったことになります。

今回筆者は3日間の試乗イベントのうち、初日と最終日に半日ずつR 1300 RTに試乗しました。初日はR 1300 Rで2-3時間ほど走行。昼食を摂ったのちに、宿までの3時間ほどをRTで走行しました。

新型R 1300 RTのデザインはどう変わった?

まず実車を目の前にした印象ですが、デザインは先代モデルよりもやや角張ったようにも見えます。サイドからのシルエットは現在のR 1300 GSにも通じるフォルムとも言えるかもしれません。とはいえ、オンロードツアラーのRTですから、全体的なシルエットはGSとも大きく異なります。

印象的だったのはフロントマスクのデザインです。BMWモトラッドヘッドライトのフルLED化をいち早く進めたブランドですが、新型R 1300 RTでは従来モデルとも大きく違うデザインを採用しています。ミラーを一体化させたフェアリング全体の造形も含めて、従来型とはまるっきり違うデザインとなりました。

高速域でも余裕! 1300ccボクサーエンジンの実力

排気量1300ccの最新水冷ボクサーは最高出力145馬力、最大トルクは149Nmとパワーもトルクもモリモリ!  車両重量は281kgと決して軽くはありませんが、低速から力強く加速して、そのまま一気に200km/h オーバーまで車体を引っ張っていく頼もしさ。

今回はドイツでの試乗とあって、アウトバーンの速度無制限区間も走行しました。初日は土砂降りの中の走行を強いられたものの、最終日は一部区間でドライコンディションということもあって、速度無制限区間でフルスロットルにトライ。交通状況もあって220km/hまでしか確認はできませんでしたが、エンジンにはまだまだ余裕があった印象です。

現在の水冷ボクサーエンジンではBMW ShiftCamという可変バルブタイミング機構を装備しています。低回転域と高回転域でカムシャフトのプロファイルをシームレースに変化させるこの機構は、低回転域では下からトルクを発生させて乗りやすく、高回転域では豊かなパワーデリバリーを実現するもの。R 1300 RTでもその恩恵は確かなもので、アイドリングから3000回転くらいまでの領域であってもエンジンはいつでも力強いトルクを発生します。

さらに、R 1300 GS同様に、ASA(オートメイテッド・シフト・アシスタント)という自動変速機構を装備。ASA搭載車にはクラッチレバーが存在せず、クラッチの断続はECUが自動で行います。

ATのようにシフトチェンジのタイミングをすべて機械任せにするDモードと、シフトペダルを使用してライダーが自分でギアを洗濯するMモードの2種類が装備されているのです。

普段クラッチレバー付きの車両に乗っていると、最初こそ戸惑いますが、慣れてしまうとASAはとっても楽! 停止、発進を繰り返すような狭い街中ではASAの恩恵をこれでもかと思い知ることに。

このASAは任意でギアを選ぶMモードであっても、エンジンの回転数が規定を下回ると自動でシフトダウンするので、常に最適なギアチョイスを勝手にやってくれるのです。

自動で最適な状態に調整 最新のサスペンションが走りを変える

どんな回転数からでもぐいぐいと加速する力強いエンジンに加え、車体も大幅に進化しています。体感的には従来型よりもコンパクトになったのでは?と思うほど取り回しや走りも軽くなった印象です。

R 1300 RTではDCA(ダイナミック・シャシー・アダプション)という新しいサスペンションシステムが搭載されています。このDCAは、前後のサスペンションのスプリングレートを可変させ、さらに減衰力調整を自動で行うことで、スポーツ走行に適した車体姿勢とツーリングで快適な車体姿勢の両方を作り出すシステムです。

ライダーがエンジンのモードをダイナミック、ダイナミックProにするとリアのダンパーが伸びて車高があがり、スポーティな走りに最適な車体姿勢に。いっぽう、それ以外のモードではソフトな減衰特性で快適性を重視した味付けに。

今回の試乗では特に峠道で豪雨に見舞われたこともあってスポーティな車体姿勢での走りを満喫するには至りませんでしたが、それでも高速道路ではその片鱗をしっかりと味わうことができました。

驚きの防風性能! 新フェアリングと電動スクリーン

また、快適装備でもすばらしい進化を体感することができました。まず感心したのは新型のフェアリングと電動スクリーンです。これまでのRTでも大型フェアリングと電動スクリーンは装備していましたが、防風性はさらに向上した印象です。

今回、アウトバーンの走行中にとんでもない豪雨に襲われました。スクリーン自体は歪みもなく視界はとてもクリア。でもゲリラ豪雨のような状況ではヘルメットのシールドとバイクのシールドの2枚重ねの中を走行することになり、前方視界がかなり厳しくなってきました。さすがにこのままでは危険と判断して、しょうがなく100km/h前後の速度域でスクリーンを最大に上げた状態でヘルメットのシールドを開ける選択をしました。

当初は、それなりに顔に雨粒が付くだろう……と想像していたのですが、実際は普通に目を開けていられるくらい、顔には雨風がかからなかったのです! これは驚きでした。

結局、豪雨の間はそのまま走行したのでした。もちろん、普段の走行中は異物などが飛んでくる可能性もあるので決してオススメできる乗り方ではありませんが、「マジで前が何にも見えない!」という視界不良の中では緊急回避的にこうするしかなかったのです……。結果的にはフェアリングの防風性の高さを実感できたのでヨシということで。

夏も冬も快適! スリップストリームディフレクター

また、新採用のスリップストリームディフレクターの効果も市街地から高速道路などあらゆる走行シーンで体感することができました。

RTのようなフルカウルツアラーは小雨程度ではライダーが濡れないというほど防風性に優れていますが、それは逆に夏場では走行風が身体に当たらず、爽快感が失われることを意味します。

それを改善するギミックがこのスリップストリームディフレクターで、ボディサイドのパネルを手動で上下させることで機能させます。パネルを上げた通常の状態では上半身には適度に走行風が入ってきますが、パネルを上げると走行風を大幅にカットしてくれるので、雨の日や冬場には重宝する機能です。

これがスリップストリームディフレクター。このパネルポジションは防風効果最大の状態です。
スリップストリームディフレクターを上げた状態がこちら。パネル後部を手でつまんで引き上げると走行風が身体に当たるように。夏場には快適な機能です。

長旅を支える充実のツーリング装備

他にも追従式のクルーズコントロールや最新のABS、フルLEDヘッドライトなど安全機能は飛躍的に進化、さらにタンデムシート側のグリップヒーターやバックレストヒーター、拡張式のサイドパニアケースなど旅装備はさらに充実した印象です。

従来モデルよりも軽快な走りと旅の快適性を上げる作り込みは、BMWモトラッドのハイエンドツアラーにふさわしいもの。ソロでもタンデムでも長旅をリラックスして楽しみたいライダーにとって、R 1300 RTはベストチョイスと言える1台になることでしょう。

前後のシートは段差がほぼなくフラット。タンデムグリップやトップケースキャリアも新しいデザインです。
こちらはタンデム用のグリップ。新型ではついに、タンデム用のグリップヒーターが採用されました。
こちらはOption 719と呼ばれる純正オプションを装着したR 1300 RT。
ボディカラーはブルー・リッジ・マウンテン・メタリック。
ステップやマスターシリンダー、左右レバー、エンジンカバーなどはアルミ削り出しパーツを装着するOption 719。
もちろんこれらのパーツは単体でも購入可能です。
ヘッドライト上にはACC(アクティブクルーズコントロール)用のレーダーセンサーを配置。前走車がバイクでもしっかり追従します。今回は峠道でも前のバイクをしっかり追走してくれました。ヘッドライトも最新のLEDでハイビームとロービームの照射域を最適化していて視界はかなりクリアです。
こちらはタンデムグリップ用のグリップヒーターツイッチ。パッセンジャーの手元にあるので使いやすそう。
新型のバリオケースは容量可変式。今回試乗に使用したラパイドネオも楽々収納できました。
トップケースも新デザイン。バックレストにはパッセンジャー用にバックレストヒーターも用意されています。
フロントのサスペンションはEVOテレレバーに進化。電子制御式サスペンションとの組み合わせで、走行シーンに合わせた走りを楽しめます。スポーティな走りにも、快適な長旅にも対応できるレンジの広さはさすがBMWといった印象です。
今回は天候に前ぐまれない中での試乗となりましたが、最新のABSを搭載するブレーキには本当に助けられました。雨の中でも制動力は申し分なし。コーナーリング中でもフロントブレーキを躊躇なく使えるのもありがたい。
迫力のある車体ですが、乗った印象は従来モデルよりもコンパクトに感じるほど軽い走りが印象的です。エンジンをかけない状態での取り回しも随分と軽くなった印象です。実際のフィーリングはぜひ実車で確かめてみてください。

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