月極駐車場や個人宅の前に、見知らぬクルマを勝手に停められていたという経験のある人もいるのではないでしょうか。
ときには通行の妨げになるほど悪質なケースもありますが、無断駐車するクルマを勝手にレッカー移動してしまうと、レッカーを手配した人が罪に問われるケースもあります。
明らかに迷惑な無断駐車であるにもかかわらず、なぜレッカー移動できないのでしょうか。
無断駐車のクルマを勝手に移動させるのは「自力救済の禁止」に反する

自分が契約している月極駐車場や、私有地に他人のクルマが勝手に停められていた場合、多くの人が警察への通報やレッカーの手配を検討するかもしれません。
ときには進入路をふさぐように停められ、出入りが不可能になるような悪質な例もあります。
しかし、それでも即座にレッカー移動をおこなうことは、原則として認められていません。
なぜなら、こうした無断駐車に対して私人が勝手に対処する行為は、民法の前提とされる「自力救済の禁止」という原則に反すると見なされる場合があるからです。
自力救済とは、何らかの権利を誰かに侵害された場合に、公的な手続きによらず自力で権利を回復しようとすることを指します。
たとえば、無断駐車によって私有地を侵害された人間が、公的な手続きによらずクルマをレッカーなどで移動させたり、タイヤロックなどでクルマが移動できないようにすることはこれに該当します。
無断駐車などのように被害者側に理由があったとしても、自己判断で相手の財産を移動した場合には、器物損壊罪や窃盗罪などに問われるおそれもあります。
つまり、私有地での無断駐車は法的にグレーな領域にあり、すぐに強制的に対応できるものではありません。
無断駐車に効果的な対処法とは

上述のように、無断駐車に直面した場合でも、即座に自らの判断でクルマを移動させることは認められていません。
そして、無断駐車された場合の対処は法的手続きにのっとる必要がありますが、この手続きは煩雑になるケースもあります。
そのため、無断駐車問題に対しては事前の対策、予防が重要といえます。
では、どのような対策が有効なのでしょうか。
まず、「関係者以外駐車禁止」などの掲示を設置しておくことが有効とされています。
また、コーンやチェーンなどで私有地であることを明確に主張し、クルマの進入を防ぐことも有効な対策だといわれています。
とはいえ、どのような対策を講じようと、無断駐車が完全になくなるとは言い切れません。
もしクルマが放置された場合、特に同じクルマがよく無断駐車をする場合はクルマに警告文を置くことが対処法のひとつといえるでしょう。
このとき、クルマに傷をつけるのを防ぐため、車体や窓ガラスにテープを貼ることは避け、たとえばワイパーに挟むなどの手段をとることが無難だとされています。
また、悪質な無断駐車のクルマに対しては、陸運支局で「登録事項等証明書」を申請し、所有者の特定をおこなう方法があります。
これは、ナンバープレートの情報をもとに、所有者や使用者を照会するための制度であり、正当な利害関係がある者に限って交付される仕組みです。
申請には、車両が放置されている具体的な場所の情報、現地の見取り図、いつから放置されているかを示す放置期間、そしてナンバーや状況が確認できる放置車両の写真など、複数の資料が必要です。
加えて、申請理由書や本人確認書類などを添付し、正当性が認められた場合にのみ証明書が交付されることになります。
この証明書により、所有者に対し損害賠償を請求するなど、法的手続きが取れる可能性がふえます。
無断駐車への対応は感情的な行動ではなく、法に基づいた慎重な手続きが必要です。
まとめ
このように、無断駐車は迷惑行為であるとはいえ、私的な判断でレッカー移動などをおこなうことは原則として認められていません。
被害を受けた場合は、冷静に証拠を集めたうえで、登録事項等証明書の申請など正当な手続きを通じて対応することが求められます。
感情的な対処を避け、法に基づいた行動を取ることがトラブル回避への第一歩となります。








