道路が凍結した「アイスバーン」は非常に滑りやすく、ベテランドライバーでも慎重に運転しなければなりません。しかし、実際にどんな危険があるのか詳しく知らない人も多いでしょう。
そこで今回は、アイスバーンの危険性や発生しやすい場所、運転時の注意点を詳しく見ていきます。
雪国の人も嫌がる?「アイスバーン」にはどんな危険があるのか
冬に雪が降り続くと、はじめは道路にふんわり積もっていた雪も、やがてクルマによって踏み固められていきます。また、大雪の場合は、除雪されることで路面が平坦に整備されます。
しかし、道路が平らになってから怖いのが「アイスバーン」です。
アイスバーンとはその名のとおり、氷状(アイス)になった道路(バーン)のこと。路面が凍りつき、つるつると非常に滑りやすい状態です。
実際に走ると、まるでスケートリンク上にいるようにクルマが止まれず、横に滑り、思うように操作できません。「あっ、滑った!」という瞬間がいつ訪れるかわからない恐ろしさがあります。
実は、雪が積もった道路よりも氷状のアイスバーンのほうが滑りやすく、非常に危険です。
ちなみにアイスバーンは、路面に残った雪の表面が溶けて再び凍ることで発生します。溶けては凍るを何度もくりかえした氷は、簡単に割れないほど強固になっています。
路面が凍り出すのは氷点下ですが、雪や夜間で冷やされた路面の温度は気温より低くなります。そのため、一般的には気温が3度を下回ると路面凍結の恐れがあるといわれています。
なお、こうしたアイスバーンは次のような3つのタイプに分けられます。
1)雪が固められた「圧雪アイスバーン」(圧雪路)
道路に積もった雪がクルマの通行によって踏み固められ、かちかちに圧縮された状態を圧縮アイスバーンと呼びます。
雪で白色の路面ですが、圧雪アイスバーンの上に薄く雪が積もっているとアイスバーンと気づかずに滑ってしまうこともあります。
2)濡れた路面に見える「ブラックアイスバーン」
アスファルトが見えますが、実は雪解けの水が凍りついていて、路面に薄い氷がはっている状態です。とくにブラックアイスバーンはスタッドレスタイヤでも滑りやすく、たいへん危険です。
しかし、よく滑るにもかかわらず濡れているだけの路面と見分けづらいので、夜間などは気づかずに進入してしまう可能性があります。
また、雪だけでなく、雨が降ったあとでも発生するので、雪の降らない地域でも注意が必要です。
3)タイヤでつるつるに磨かれた「ミラーバーン」(鏡面圧雪)
圧雪アイスバーンの表面が、タイヤの摩擦によって鏡のように磨かれた状態です。光を反射するので比較的見分けやすいのが特徴です。
とくに、交差点の停止線付近はクルマが発進と停止を繰り返すためミラーバーンが発生しやすくなります。この場合は、発進時にスリップしたり、ブレーキを踏んでも止まれないといったことから事故が起こる可能性が高まります。
いずれのタイプにせよ、アイスバーンを走行する際は氷の上に乗ることになるので、クルマは思い通りにならず予想だにしない動きが続きます。
たとえば、すぐにタイヤが空転し発進さえ思い通りにならないことも。ちょっとハンドルを切り過ぎたり、アクセルを踏み過ぎたりしてもクルマは明後日の方向に進んでしまいます。
普段はハンドルの手ごたえや車体の動きを感じて調整できるものが、操作不能におちいってしまうというわけです。そのため、できればアイスバーンを避けて通行すると無用な事故を防げるでしょう。
たとえば、風通しのよい橋やトンネルの出入り口は、もっともアイスバーンが発生しやすい場所として挙げられます。
橋の上は、地熱が届かず吹きさらしなので水分が凍結しやすい環境。橋の前後は普通の道路でも、橋の上だけアイスバーンになっていることも少なくありません。そのため、走ってきた道と同じ感覚で進入し事故につながる恐れがあります。
そしてトンネルの出入り口付近は、日陰になったり強い風が吹いたりするので、アイスバーンになりやすくなります。とくにトンネル出口は、スピードを上げてトンネルを出たらアイスバーンという可能性が高く危険です。
また、ほかの場所でアイスバーンが消えても、陽の当たらない場所では残っていることがあります。
こうした現象は山道の斜面で多くみられますが、日陰に入ったときはアイスバーンが現れることを予測して運転することが大切です。アイスバーンを走行する際の注意点とは?
アイスバーンを走行する際の注意点とは?
アイスバーンは雪道以上に滑るので、ブレーキを踏んでも滑って止まれずハンドルを切ってもスリップするなど、周りのクルマも事故に巻き込みかねない状況に陥る可能性もゼロではありません。
こうした路面を安全に走行するには、徐行運転を心がけるしかありません。やさしくブレーキを踏んで滑らず止まれる速度を目安にするとよいでしょう。
もちろん、急発進や急ハンドル、急ブレーキは禁物です。タイヤが路面を捉えられずスリップする危険があるほか、アイスバーン上で強くブレーキを踏むと、タイヤの空転を防ぐABSが作動しかえって止まりにくくなることがあります。
さらに、ブレーキを踏んでから止まるまで時間がかかるので、車間距離を十分にとるようにしましょう。あわせて、クルマだけでなく通行人との距離をとることも大切です。
なお、一般的な雪道であればオールシーズンタイヤでも通行できますが、凍結した路面ではスリップする危険があります。あらかじめアイスバーンを走行することがわかっている場合は、スタッドレスタイヤを装着するとよいでしょう。
凍結した道路は、雪国の人でも運転を嫌がるほど。アイスバーンはそれほど怖い場所と認識して、通行を避けたり、慎重に運転したりする心がけが大切です。