バイク選びで意外と悩ましいのが、「カッコいい」と「ラクに走れる」がなかなか両立しないことだ。
スポーツバイクは走りが楽しい一方で、服装や乗るシーンを少し選ぶ。クラシック系のバイクは雰囲気がいいものの、走りの軽快さや高速道路での快適性に物足りなさを感じることもある。さらに、ロングツーリングまで視野に入れると、今度は車体の大きさや積載性、風の影響なども気になってくる。
では、普段の街乗りにも似合い、週末のツーリングにも連れ出したくなり、しかも走りは現代的に楽しめるバイクがあったらどうだろうか。

2026年1月30日の発売開始の時点で年間目標販売台数840台に対し、1000台以上の受注が販売店から入っているGSX-8T&8TT。
時流のネオクラシックデザインを纏い、バリエーションはネイキッドスタイルのGSX-8Tと、ヘッドライトカウル&アンダーカウルを備えたGSX-8TTの2モデル。しかし中身は、775ccパラレルツインエンジンを搭載する現代的なスポーツモデルの流れをくむ。つまり、見た目の雰囲気だけでなく、走らせたときの軽快さや扱いやすさにも期待できるというわけだ
今回はGSX-8TTに試乗して、“どんなモデルなのか?”実際のところを確かめてみるぞ!
試乗・文:谷田貝 洋暁/写真:関野 温
シチュエーションも服装も選ばないネオクラシックのGSX-8TT&GSX-8T!!

近年、国産4メーカー各社が力を入れるネオクラシックと呼ばれるジャンル。
水冷エンジンに前後17インチホイールという現代的なコンポーネントでありながら、どこか懐かしいトラディショナルなデザインを持ったバイク達……というワケだが、スズキはこのGSX-8TT&GSX-8Tにおいて“斬新なアプローチ”でネオクラシックへ進出。
なんとこれだけレトロなスタイリングでありながら、ツーリング……それもロングディスタンスな旅への適性が高いのだが、そのあたりは記事の後半で触れさせていただこう。

ベースは同じく775ccパラレルツインエンジンを搭載するストリートファイターモデル・GSX-8Sとしながらも、見た目はしっかりネオクラシックなGSX-8TT。
ヘッドライトのデザインには“フラットボトムヘッドランプ”と呼ばれる、底面が真っ直ぐにカットされた意匠を採用。この“フラットボトムヘッドランプ”は別名“馬蹄型ヘッドライト”とも呼ばれ、スズキが1960年〜70年代にかけて採用したトラディショナルなデザインだ。
このヘッドライトにスズキ車としては非常に珍しい(2機種目!)バーエンドミラーをドッキング。さらにはGSX-8S比で2L容量を増やした16Lの大容量燃料タンクを組み合わせボリューム感をアップ。

バーエンドミラーは、一般的に“見にくく、後方確認がしにくい”なんてイメージがあるが、GSX-8TTで走ってみると絶妙とも言える見易さが追求されていることに驚く。確かに通常の位置よりもハンドルの外側にあることで視線移動はどうしても大きくなってしまいはするが、それでも一般的なバーエンドミラーに比べてGSX-8TTのミラーは非常に見やすいと感じるのだ。
ちょうど筆者は、登場したばかりの外車系バーエンドミラーモデルを数台試乗して、“やっぱりバーエンドミラーは苦手だなぁ……”なんて思っていた。そんなところで今回のGSX-8TTに乗ったということも大きいだろうが、開発陣から聞いた前評判どおり、バーエンドミラーはとても見やすく仕上がっていると感じた。

他のバーエンドミラーモデルとひときわ差を感じるのは死角の少なさ。
一般的なバーエンドミラーは、より目から遠い位置にあることでどうしても死角が増えてしまう。だからこそ“車線変更でミラーでしっかり後方確認をしたのに、いざ後ろを振り返ってみたら車がいた!”なんてことが起こりがちなのだが、GSX-8TT&GSX-8Tのミラーは鏡面の曲率までしっかり煮詰めたことで一般的なミラーと同じくらいしっかり後ろが見えるのだ。
しかも、このバーエンドミラー、前方が開けたワイドな視界の確保にもつながっており、走っていてとても気分がいい。

●全長/全幅/全高:2115mm/775mm/1160[1105]mm
●シート高:810[815]mm
●排気量:775cc
●重量:203[201]kg
●エンジン:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ
●最大出力:80PS/8500rpm
●最大トルク:76Nm/6800rpm
●トランスミッション:6速マニュアル
●フューエルタンク:16L
●ブレーキ:前=ダブルディスク/後=ディスク
●タイヤ:前=120/70ZR17/後=180/55ZR17
◎仕様カラーリング及び税込価格:1,386,000円[1,298,000円]
※[]はGSX-8T






ネオクラシックなナリのGSX-8TTだが、その真骨頂はロングツーリングにアリ!?

GSX-8TTの走りで気に入ったのは、まず“クラシック”や“レトロ”と呼ばれるモデル達にはない車体の軽やかさだ。
まぁ、それらのモデルが採用するのがフロント18インチや19インチで安定性重視なのに対し、GSX-8TTは中身がストリートファイターモデルのGSX-8Sなのだから当たり前と言えばそうなのだが、走りも前後17インチのスポーツバイクらしく現代的で、コーナリングにも変なクセがないのがいい。
それどころか、やろうと思えば腰を落として肩からコーナーに飛び込んでいくようなスポーティな走りも可能だ。

ただネオクラシックとして作り込まれたGSX-8TTの面白いところは“古めかしいデザインを持った単なるスポーツバイク”で終わらないところだ。高速、ワインディング、街乗りと色々シチュエーションを走らせていると、このGSX-8TTというバイクはクルージング適性がとても高いことに気付かされたのだ。

はじめこそ、マシンのポテンシャルを引き出そうと肩からコーナーに突っ込んでいくようなスポーツラン主体の乗り方をして目を吊り上げていたのだが、長時間走らせているとなんだかのんびりクルージングさせるのが楽しいことに気付いたのだ。
走行モードに関しても、気付けば一番アクティブな「A」モードではなく、「B」、「C」と穏やかな出力モードで走っている時間が長くなっている。決して「A」モードが走りにくいとか、扱いづらいというわけではないのだが、GSX-8TTというバイクのキャラクターに合っている出力モードが、「B」や「C」だと感じる。
この数ヶ月、いろいろな二輪媒体でGSX-8TTやGSX-8Tの試乗インプレッションをさせてもらっているが、これはヘッドライトカウル付きのGSX-8TTも、カウル無しのGSX-8Tでも一緒。走れば走るほど「C」モードで気持ちよくクルージングしている時間が長くなってくるから不思議なのだ。

そんなクルージング向きのキャラクターなのだから、とにかくGSX-8TTとは長距離を走りたくなる。しかも、実際にそんな走りを行ってみると、高密度ウレタンによるシートが思いのほか快適でお尻が痛くならなかったり、大容量タンクによる航続距離の長さだったり……、乗れば乗るほど高いロングツーリング性能に感心させられることになった。

しかも試乗したGSX-8TTであれば、小型とはいえヘッドライトカウル付き。こんな小さなカウルで風防効果があるの? と最初は思ったがGSX-8Tと乗り比べてみれば、明らかにGSX-8TTの方は風防効果が効いている。
登場時は“GSX-8T&GSX-8TTってストリートファイターのGSX-8Sのデザイン的要素をネオクラシックスタイルに仕上げただけで中身は一緒なんでしょ!?”なんてそこまでの違いがあるとは思っていなかったのだが、乗れば乗るほどロングツーリング向きのキャラクターに思えてくる。
少なくとも、ツーリングで距離を走りたいユーザーで、GSX-8SとGSX-8T&GSX-8TTで購入を悩んでいるなら間違いなくGSX-8T&GSX-8TTの方が幸せになれる。しかも高速道路を使った移動が多いというのであれば、ヘッドライトカウル付きのGSX-8TTをオススメさせてもらおう!


シート高810mmのGSX-8TTの足つき性は?

シート高810mm。足着き性に関しては両足で支えると踵が3、4cmほど浮く感じ。ただし両足とも母指球で支えられているので不安はない。上半身はやや前傾姿勢になるものの、アップライトなポジションのためツーリングも楽ラク。ちなみにヘッドライトカウルなしの8Tはシート高815mmで、その差はシートのタックロール加工の厚みだけであり跨った印象はほぼ一緒だ。
GSX-8TTのアクセサリー
GSX-8TT&GSX-8Tには、マシンのオリジナリティを高めるドレスアップパーツのほか、タンクバッグやサイドバッグなどツーリング性能を高めるアイテムも用意されている。今回はそんなスズキ純正アクセサリーの一部を紹介。表示している価格はアクセサリー本体の税込価格で取り付け作業工賃は含まれていない。






GSX-8TTのディティール














(編集協力:スズキ株式会社)








