昨年の発表から注目を集めていた
スズキGSX-8T/GSX-8TTの国内モデルが発売開始!
ストリートファイター・スズキGSX-8Sの775ccパラレルツインエンジン、高剛性スチールフレーム、前後サスペンションを共用し、「走る、曲がる、止まる」というスポーツモデルとしての基本性能を追求しつつ、車体は往年の名車スズキ「T500」をデザインモチーフとしている。
懐かしさを感じるクラシックなスタイルと最新の機能を併せ持つ、ネオレトロスタイルとして完成したGSX-8T/8TTの乗り味をインプレッション!
写真:富樫秀明/テキスト:小川 浩康
「ワクワクプロジェクト」から開発がスタート

GSX-8T/8TTの開発は「ワクワクプロジェクト」から始まった。
「ワクワクプロジェクト」とは、「デザイナーが自由な発想、デザイン思考でモノ作りをしようという」というもので、鈴木俊宏社長からの「こんなものがあったらいいなを作ってみろ」という、デザイナーの方々への挑戦状のような一面もあったという。
「まずは見た目でワクワクさせよう、から始めました」と、GSX-8T/8TTのデザインを取りまとめた古橋伸介さん。「そのためには、これまでのモデルになかった新しい風を取り入れたいと思い、デザインはスズキイタリアのデザインセンターからスタートしました。そうしてデザイン案を考えている時に、スズキイタリアの若いデザイナーをスズキ本社隣の『スズキ歴史館』に招待し、展示されている往年のモデルをいろいろ見てもらいました。その中でデザイナーの目にとまり、『これだ!』と叫んだモデルがT500だったんです」
「T500は本物のレトロバイクですが、若いデザイナーには新鮮でカッコよく見えたとのことで、このT500のタイムレスな雰囲気を現代に再現できれば、初心者からベテランまでワクワクするバイクになるのではと思いました」

デザインコンセプトは「Timeless,Revival」
GSX-8T




車名の「T」は、「T500」の愛称「Titan(タイタン)」に敬意を表して付けられた。クラシックなスタイリングのネイキッドモデル。
GSX-8TT




車名の「TT」は、「Titan」と「Timeless(タイムレス)」の組み合わせで、伝統と現代的なスタイリングの融合を表している。1970~80年代のクラシックなロードレーサーをイメージしている。
GSX-8T/8TTはクラシカルなデザインモチーフと、GSX-8S譲りの最新技術による走行性能との調和を図り、現代的なデザインも取り入れている。まずは、デザイナーがとくにこだわったパーツを見ていこう。
視界がスッと開ける〝バーエンドミラー〟

スリムかつコンパクトにデザインした8T/8TT専用のミラー。開発当初は大きくて重くハンドリングに影響したが、軽量化を進めた。丸型で面積は小さいが、ミラー面の曲率を調整することで8Sと同等の視認性を確保している。金型から抜いた時に残るパーテーションラインを滑らかにして、質感の高さにもこだわっている。


長いミラーステーがなくなり、前方の見晴らしがよくなった。景色を見ながらツーリングを楽しむことも考慮してバーエンドミラーを採用している。カウルレスの8Tは抜群の見晴らしを実現。
バンクしても先が見える〝LEDヘッドライト〟

デザインは過去のスズキ車をモチーフとしているが、「行きたい方向がよく見える気持ちよさ」を追求し、明るさにもこだわっている。車体をバンクさせると、直進時に空中を照射している光が進行方向を照らし、コーナリング中の明るい視界を確保している。


ヘッドライトのデザインは、当時のスズキ車の特徴となっていた「馬蹄形」をイメージしている。ポジションランプは、8Tはヘッドライト一体型、8TTはウインカー一体型を採用している。
自然にニーグリップが決まるボクシーな〝フューエルタンク〟
8Sはタンクとシートがスリムで、ニーグリップを意識したスポーティなポジションとしているが、8T/8TTは自由度が高く、自然なニーグリップでリラックスできるポジションを意識している。そのために8Sより張り出しの強い、ボクシーな形にこだわってデザインされ、結果としてタンク容量は8Sから2L増の16Lとなった(実際は16.5L)。ハンドル・シート・ステップの位置は8Sと変わらないが、8T/8TTはタンクとシートの幅を広くしたことで、より自由度と快適性の高いライディングポジションとなっている。タンクの「SUZUKI」エンブレムは、新デザインに変更されている。


タンクのカラーリングもこだわっている。8Tのマットグリーンは鉄タンクの硬さ、ゴールドはスコッチウイスキーのような琥珀色、ブラックはバイクらしさをイメージしている。8TTのブラックはかつてのAMAレーシングマシンのような、グリーンはクラシックな雰囲気をイメージしている。
8ボール”の遊び心が刺さる〝立体エンブレム〟
ラジエターシュラウドに配置された「8」の立体エンブレムは、最後に落とすことで勝負を決めるビリヤードの「エイトボール」をイメージしている。

樹脂からステンレスへ“質感アップ”した〝マフラーカバー〟

8T/8TTのマフラーカバーは、8Sの樹脂製から質感の高いステンレス製に変更。金属の質感がメカニカルなイメージを強くしている。
クラシックなロードレーサーをイメージしたGSX-8TT独自の装備
GS1000Sを想起させるカウルと、防風の作り込み
『ヘッドライトカウル』
ヘッドライトカウルは特定のモデルを再現したのではなく、1970~80年代のカウル付きモデルから着想を得て、クラシックなデザインを採用している。特に、カウル下側のエラを張ったような形状は、往年の名車「GS1000S」をモチーフとしている。




カウルの装着により、USB-Type Cソケットはディスプレイ左側面(8T)から、カウル内の左側(8TT)に位置が変更された。
タンクからマフラーへ流れる一体感
『アンダーカウル』
ヘッドライトカウル、タンク、ラジエターシュラウドとのバランスをとり、マフラーへと流れるような形状となっているアンダーカウル。全体的なスタイリングに統一性を感じさせる装備だ。

ここが変わるとバイクの性格も変わる
『シート』
8Tはクラシックなイメージを高める凹凸のあるタック&ロールシートだが、8TTはポジション変更しやすいスムーズなシート表皮のスタイリッシュシートを装備。専用の赤いステッチも施されている。


凹凸のあるタック&ロールシートの8Tのシート高は815mm。スムーズなシート表皮となった8TTのシート高は810mmと、5mm低くなっている。
GSX-8T/8TTの足着き性をチェック
GSX-8T


GSX-8TT


ライダーの身長は172cm。8T/8TTともに片足をべったり着くことができ、両足を着こうとするとカカトが少し浮く状態となる。シート高に5mmの差はあるが、両車の足着き性に差は感じない。ハンドル・シート・ステップの位置関係は8Sと同一だが、タンクとシート前方の幅は8Sより広くなっている。8Sより少し足が開く感じでニーグリップもマイルドになるが、それがリラックスしたライディングポジションとして感じられる。
8T/8TTのシートには高密度ウレタンフォームが使用され、ソフトながらコシがあって長時間でも尻が痛くなりにくい座り心地を実現。8Tのタック&ロールシートは着座すると凹凸が潰れて尻を包み込むような感触があり、クッション性はさらに良好に感じられる。
ライダーの走りをサポートする最新装備
「過去のスズキ、いつかのスズキのDNAを現代的なデザインに昇華させたスタイリングと、最新のパフォーマンスを併せ持つ」ことをテーマとしている8T/8TTは、ストリートファイター8Sをベースに開発された。同型式のエンジンを搭載したスーパースポーツGSX-8Rがサーキットなど高負荷の走行にも対応した足まわりに対し、8Sはストリートでの軽快な走行に適した足まわりとなっていて、8T/8TTには8Sの軽快なハンドリングが開発コンセプトに合致すると判断されたからだ。走る、曲がる、止まるという基本性能を追求した8S譲りの最新装備を見ていこう。
鼓動感と扱いやすさの両立
270°位相クランクエンジン

775cc並列2気筒エンジンは、低回転域の滑らかさと高回転のスムーズを両立させるために270°位相クランクを採用。さらに2つのバランサーも装備し、振動を抑制。低回転からレスポンスがよく、全域で扱いやすさを感じるエンジンとなっている。
5インチTFTで情報が見やすい
マルチインフォメーションディスプレイ

速度、エンジン回転数などリアルタイムの運転状況、SDMS(スズキドライブモードセレクター)の設定など、豊富な情報をライダーに提供する5インチカラーTFT液晶マルチインフォメーションディスプレイ。黒地のナイトモードと白地のデイモードに切り替えられる。
軽さは正義! 約2kgの軽量化を実現
リチウムイオンバッテリー

期待寿命10年を実現するエリーパワー製リチウムイオンバッテリーを採用。従来の鉛バッテリーからコンパクトになり、2kgほどの軽量化に貢献している。信頼性、耐久性、始動性も向上。
クラッチ操作が減るだけで疲れにくい
クイックシフトシステム

各ギヤ、各回転域で最適なセッティングとすることで、クラッチやスロットル操作をせずに快適なシフトチェンジを行なえるクイックシフトシステムを標準装備。シフトアップ/ダウンの双方向が可能で、OFFも設定可能。ライダーの疲労を軽減する。
KYB+プリロード調整で街も旅も守備範囲が広い
サスペンション


フロント・リヤともにKYB製サスペンションを採用。リヤはプリロードアジャスター装備で、タンデムや荷物積載時など状況に合わせたセッティングが可能。前後とも8Sと同じセッティングとなっていて、軽快なハンドリングに貢献している。
“止まる安心感”が走りを楽にする
ブレーキ


フロントはφ310mmのフローティング式ダブルディスク。対向4ポットラジアルマウントキャリパーが強力な制動力を発揮。リヤはφ240mmのシングルディスク。キャリパーはピンスライドタイプのシングルで、良好なコントロール性を実現。ブラックアウトされたスイングアームはアルミ製で、剛性バランスを最適化し、優れた操縦安定性に寄与している。
荷物を固定できるループベルトを装備
タンデムシート

タンデムシートの下側にはETC車載器を設置できるスペースがある。また、タンデムシート裏側にはバッグの固定に便利なループベルト、車載工具として6角レンチが装備されている。
小さくても明るい、しっかり見える
LEDテールランプ

テールランプはストップランプと一体型。ウインカーも含めてLED製で、コンパクトながら視認性に優れた光量を実現している。ハザード機能も装備。
選べるエンジン特性が際立つ扱いやすさを実現

8Sとエンジンを共用する8T/8TTは、3モードでエンジン特性を選択できる「スズキドライブモードセレクター(SDMS)」、同じく3モードでシステム介入度を選択できる「スズキトラクションコントロールシステム(STCS)」、ワンプッシュでエンジン始動できる「スズキイージースタートシステム」、発進時や低回転走行時に各種センサーで制御し、エンジン回転の落ち込みを感じにくくしてライダーをサポートする「ローRPMアシスト」などといった、最新の電子制御「スズキインテリジェントライドシステム(S.I.R.S.)」も搭載し、路面状況やライダーの好みに合わせた設定が可能だ。
さらにアシスト&スリッパー機能を持つ「スズキクラッチアシストシステム(SCAS)」と「電子制御スロットルシステム」も装備し、クラッチレバーとスロットルの軽い操作性を実現し、ゴー&ストップが多くなる市街地走行や、ロングツーリングでの疲労を軽減する機能も搭載している。
今回の試乗コースは路面状態が良好だったので、STCSが作動することがなく、モード別の介入度はチェックできなかった。その一方で、SDMSのモード別のエンジン特性はハッキリと体感できた。

SDMSとSTCSのモードはディスプレイに見やすく表示される。それぞれのモード変更は、ハンドル左側のスイッチで行なう。スイッチは大きく、グローブのままでも操作しやすい形状となっている。SDMSの各モードの最高出力は同じだが、そこに至るまでの出力特性が大きく変化する。


実際に8T/8TTに試乗してみると、Aモードはハイスロットルになった感じで、3000rpmで太いトルクが立ち上がり、力強い加速力が発揮された。市街地では速すぎると感じるほどで、8T/8TTのスポーツ性能を堪能できる半面、トルク変動によるマシン挙動も大きくなりがちで、ギクシャクした乗り心地に感じることもあった。
Bモードは太いトルクの立ち上がりが4000rpm~と高くなり、3000rpmあたりのトルク変動が少なくなる。スロットルレスポンスも少しマイルドになるが、それでも加速力はしっかりと発揮されるので市街地では3000rpmキープでも走行しやすさが感じられた。スロットル操作に対する加速力をイメージしやすく、オールラウンドで扱いやすさが感じられるモードだ。
Cモードは全回転域でスロットルレスポンスがマイルドになり、回転上昇もゆっくりになる。トルク感も細めに感じるが、エンストしにくい粘り強さもあり、さらにローRPMアシストもあって予想していた以上に乗りやすさを感じた。
8T/8TTはエンジン・フレーム・前後サスが8Sと共通なので、各モード毎の出力特性の変化、スロットル操作に対するマシン挙動、ハンドリングの軽快さも8Sとほぼ同じように感じられ、8T/8TTと8Sでオールラウンドな扱いやすさを感じたのもBモードだった。
8Sでは、Aモードがストリートファイターらしい俊敏な走りを実現している一方で、Cモードはマイルドすぎて選択する機会は多くなかった。そんな印象があったので、8T/8TTも8Sと同じような乗り味だと予想していたのだが、試乗中はCモードを選択することが多く、8T/8TTにはCモードのマイルドさが合っていると個人的には感じられた。
そう感じた要因は、タンクとシート形状の違いだろう。8Sはニーグリップがしやすいようにタンクとシートがスリム化され、体重移動もしやすい形状となっている。8T/8TTは8Sよりもタンク幅とシート幅が広くなっていて、意識せずとも両ヒザがタンクに沿い、緩くニーグリップしているような感じとなる。両足が少し開いたリラックスしてライディングしているような状態が自然と決まるので、8Sのようなシャープな走りよりも、ゆったりとした走りに向いたライディングポジションとして感じられたからだ。
結果としてそのライディングポジションと、マイルドな出力特性でマシン挙動も穏やかになるCモードとの相性もよく感じられたというわけだ。
スポーツライディング志向の8Sに対して、8T/8TTはスポーティさを持ちつつ、ライディングの快適さを重視した作り。押し引きも重すぎず、ハンドリングは軽快でクセがなく、街乗りからツーリングまで乗りやすさが感じられる。大型へのステップアップやリターンライダーも扱いやすさを感じられるはずだ。

スペック
8Tと8TTの差異は、8Sと8T/8TTほど大きくないと感じた。厳密に言えば、ヘッドライトカウルの有無で重量が変わり、ハンドリングと防風性も異なるのだろうが、個人的にはその違いを体感できなかった。むしろカウルの有無による見晴らしの違い、シート形状の違いによる座り心地の違いが大きいと感じた。個人的には尻が包み込まれるようなクッション性を感じる8Tが好印象だったが、スタイリングやカラーリングで選んでも、8T/8TTともに走りの楽しさを味わえるはずだ。
試乗の途中、8TTへの乗り換えを検討しているスーパースポーツオーナーから、バーエンドミラーの視認性について聞かれたので、「後方の確認はかなりしやすいですよ」と応えた。

(編集協力:スズキ株式会社)








