オンロードも未舗装路も自由に楽しめるというスクランブラーモデルの本質を具現化した、FANTICのキャバレロ スクランブラー500がフルモデルチェンジを敢行。基本コンセプトはキープしたまま内容を一新し、さらに魅力を高めてきた新型(MY25)を試乗レポート!
TEST RIDER/PHOTO:横田和彦
初代デビューから7年、現代にふさわしい姿に進化!
1968年にイタリアで創業したFANTIC(ファンティック)は、翌年のミラノショーで50ccのスクランブラーモデル・ファンティック キャバレロ クロス50を発表。現代のキャバレロの源流となるモデルだが、人気が高く、ファンティク社発展の基盤となった。その後、ファンティックはモトクロスやトライアルで輝かしい成績を数多く残し、一躍人気ブランドとなっていった。

ところが経営面では一筋縄でいかず、何度かブランド消失の危機にも直面。しかし2014年に現在のオーナーが買い取り、立て直しを図ってきた。そして2017年のEICMAで新世代のキャバレロシリーズを発表し、翌2018年に販売をスタートした。

それを現場で見て、スタイリングや仕上げ、走りに惚れ込んだモータリストの野口代表が輸入・販売を決定。スクランブラーモデルの本質を知るライダーや、イタリアンモーターサイクルらしいスタイリッシュさに惹かれたライダーなどを中心に、販売台数を着実に伸ばしてきた。
そして2025年、デザインの美しさとスクランブラーらしさに満ちた走りを両立させ、高い評価を得てきたキャバレロ スクランブラー500がフルモデルチェンジを果たした。


基本となるコンセプトや、美しい基本シルエットは先代を継承。そのうえでどのように進化したのか、各部を詳しく見ていこう。
車体からエンジンまでオールイタリア製に!
大きな変更点のひとつは、エンジンがイタリアのモトーリ=ミナレッリ社製になったこと。先代モデルのエンジンはファンティックが設計し外部に生産委託していた。フルモデルチェンジした新型エンジンは、設計はもちろんファンティックで、製造はファンティックのグループ会社でもあるモトーリ=ミナレッリ社になり、オールファンティック=オールイタリア製となったのだ。

エンジンは最新の排ガス環境規制であるユーロ5+に対応させるべく各部をアップデート。ボアをわずかに広げて449ccから463ccへと排気量をアップ。DOHC化などによりパワーアップを実現している。熱対策としてラジエターの表面積を15%増やすと同時に、新たにオイルクーラーを装備。また急激なシフトダウン時に、リヤホイールがホッピングすることを抑えるスリッパークラッチを導入し、クラッチ操作も軽減されている。

また、アクセル操作に対してきめ細やかな制御を実現するライド・バイ・ワイヤーの採用により、トラクションコントロールやABSシステムなどを協調制御。ABSはコーナリングABSとして安全性を高めている点も見逃せない。


「 軽さは正義!」を実現した車体構成も進化
クロモリ製のスリムなメインフレームに、アルミ削り出しのステムやスイングアームピボットを備えるというキャバレロの車体構成は、ファクトリーマシンのテストやレース参戦を行ってきたトップライダーからも高く評価されるほどハイレベルなもの。その基本は先代から受け継ぎつつ、新エンジンに対応させて各部を最適化している。


しなやかなメインフレームと高剛性の削り出しステム&高剛性の倒立フォーク、削り出しピボット部、リンク式リヤショックの組み合わせは、軽快な挙動を生み出す源。前後サスペンションのセッティングも見直され、ミューが低い路面でも路面を捉えるメカニカルグリップを向上。舗装路からオフロードまで、あらゆる路面で安定した走りを実現する。
見かけ上、大きな違いになるのが右側のサイドカバーデザインだ。先代はゼッケン風だったが、新型はマフラーのヒートガードをイメージしたデザインに変更。キャバレロの初代モデルを想起させるクラシカル感が特徴となっているのだが、変化は見た目だけではない。

マフラー部の張り出しを減少させているので、先代で気になっていた「足をおろしたとき内ももにサイドカウル部が当たる感覚」が大幅に軽減されているのだ。

それに伴ってシート幅も30mmスリムになっているので足つき性も向上。国産250ccトレールと同等レベルの軽さに加え、足が届くという安心感によって、よりフレンドリーな仕様になっている。

【試乗】スクランブラーらしい走行フィーリングが、さらに洗練されたものに
メインキーをオンにすると、新しくカラー化された液晶メーターが起動。

一回り大きくなり表示はクッキリとして見やすい。表示されている情報量が増え、読み取りやすいレイアウトだ。
セルボタンを押すと、キャバレロのアイコンともなっているARROW製縦置き2連サイレンサーから単気筒らしい歯切れ良いサウンドが響く。

車体をスリム化するにあたってエアクリーナーボックスの形状なども見直されているため、先代モデルで評価が高かったアクセル操作に対するレスポンスの良さもしっかりと継承されている。

軽いクラッチをつなぐと、湧き出るトルクによって軽量な車体が軽々とスタート。先代のトルクの発生の仕方はガツンとしたパンチのあるものだったが、新型はやや角が取れて洗練されたイメージ。低〜中回転域でなめらかになっているので扱いやすさは一枚上手だ。といってもキャバレロ独自のトルクに押し出されるような、シングルスポーツ感あふれる爽快な加速感はキープされている。

排気量を感じさせない軽々としたハンドリングの基本も継承されている。ただし先代よりもわずかにキャスター角が寝かせたので低速域で安定感があり、速度域が上がっても跳ねるようなシーンはほぼない落ち着いたクオリティ感が感じられるものへと昇華。あわせて倒立フォークのセッティングも刷新されているためダルさを感じさせない設定になっているのは、足回りの設定にこだわるファンティックならではだ。
また倒立フォーク内部の徹底した見直しにより、ブレーキングで発生するピッチングモーションのおつりも抑制されている。そのため安心してフルブレーキできるのも嬉しい。減速コントロールは楽しく走るための必須条件なので、バイブレ製対向4ポットキャリパーと新型マスターシリンダーの組み合わせから生まれるコントロール性の高さも好感が持てるものだ。

交通量が多い市街地を軽快に駆け抜け、ハイウェイの先にあるワインディングをしなやかにこなし、未舗装路も難なくクリアする。走るステージを問わないスクランブラーの魅力を高次元で体現していたキャバレロ スクランブラー500は、フルモデルチェンジによってその走りとクオリティのみならず、多くの人が楽しむことができるフレンドリーさも高めている。

新型キャバレロ スクランブラー500は、今後各地のイベントや、東京大田区にあるモータリストファクトリーで試乗できるようになるとのこと。
ぜひ走る場所に制約を受けず、自由に走ることができる本物のスクランブラーの魅力を体験してもらいたい。

クオリティが高まった各部ディテールを解説













SPECIFICATION
モデル名称 CABALLERO SCRAMBLER 500
エンジン型式:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ EURO5+
排気量:463cc
ボア×ストローク:96×64(mm)
燃料供給装置:電子制御燃料噴射 | ライド・バイ・ワイヤスロットル | スロットルボディ口径:φ46mm
最高出力:45HP/8000rpm
最大トルク:42.5N・m/7000rpm
始動方式:セル式
トランスミッション:6速
フレーム:クロームモリブデン鋼高張力鋼管 セントラルチューブフレーム
ブレーキ(F):φ320mmフローテイングディスク BYBRE製ラジアルキャリパー
ブレーキ(R):φ230mmディスク BYBRE製キャリパー
電子制御システム デュアルチャンネルABSオフロードモード切替可能/トラクションコントロール
サスペンション(F):FANTIC製FRS φ41mm倒立フォーク
サスペンション(R):FANTIC製FRS モノショック プリロード調整機構付き
サスペンションストローク(F/R):150/150(mm)
全長:2080mm
シート高:820mm
ホイールベース:1425mm
タイヤ(F/R):110/80R-19・140/80R-17
車両重量:150kg(ガソリン抜き)
タンク容量:12L
ボディーカラー:クラシックレッド | マットメタリックブルー
メーカー希望小売価格:1,290,000円(税込)
【問い合わせ】
モータリスト合同会社 TEL:03-3731-2388
(編集協力:モータリスト合同会社)








