スズキが2025年10月8日から販売を開始したDR-Z4シリーズ。登場したのはモタードモデルのDR-Z4SMとオフロードモデルのDR-Z4S。久方ぶりの400ccクラスのオフロード系モデルということで注目を集めていたが、なんと発売開始からわずか1週間で年間目標販売台数の1200台(DR-Z4SM:800台/DR-Z4S:400)を大幅に超える1500台の受注が入る人気に! 今回はオフロード系のモデルとしては久々のヒット作となりそうなDR-Z4シリーズの詳細を見ていこう!

写真・文:谷田貝 洋暁
国内では16年ぶりの復活となるスズキのDR-Z4シリーズ

今回登場したDR-Z4シリーズの前身となったのは、2000年に登場したオフロードモデルのDR-Z400Sであり、2004年にその派生モデルとして生まれたモタードモデルのDR-Z400SMだ。その後、DR-Z400シリーズは排出ガス規制のあおりを受けDR-Z400Sは2009年モデル、DR-Z400SMは2011年モデルを最後にカタログ落ち。その後、スズキには400ccクラスのオフロード系モデルが長らく存在しなかった。……のだが、およそ24年ぶり(SMは19年ぶり)のフルモデルチェンジを行ってこの令和の時代にスズキの400ccオフロードが復活したというわけなのだ。


国内モデルとしては16年ぶりとなる復活に向けて、DR-Z4シリーズの開発で命題となったのはユーロ5規制への適合だ。このため、エンジンのボア&ストロークや圧縮比といった仕様はそのままに多くの部品を刷新。インジェクション化に、ツインプラグ化、エキゾーストパイプに2つのキャタライザー(触媒)搭載するなどしてユーロ5の排出ガス規制をクリア。
またユーロ5規制への適合によるパワーダウンを取り戻すべく、新開発のピストンやクランケースでメカニカルロスを最大20%低減。先代のDR-Z400シリーズの最高出力が40PS@7500rpmだったところを、わずか2PS減の38PS@8000rpmでユーロ5への適合が叶った。

車体まわりは、今回のモデルチェンジでメインフレーム、リヤフレーム、スイングアーム、足回り……つまりはまるまる全てをリニューアル。この大刷新の目的は24年前とはライディングスタイルが大きく変化していることが主な要因とのことだが、キャスター角やトレールといったディメンションを見直すとともにアルミテーパーハンドルや幅広なワイドステップも新採用。ポジションに関してもグリップポイントは先代比で28mmアップの2mmバック、ステップ位置も7mmアップして23mmバックするなどの変更が行われている。

車体構成で目を引くのは、先代のDR-Z400Sはフロントフォークが正立式だったのに対し、新型はS/SMの両モデルとも倒立フォークを採用していることだろう(DR-Z400SMはもともと倒立フォーク)。そこで関心するのはハンドル切れ角で、以前のDR-Z400SMは片側38°と少なめだったのだが、DR-Z4シリーズはS/SMの両モデルとも片側45°を確保。最小回転半径は2.6mから2.3mとなり、より小回りがきくようになっている。

フューエルイジェクション化に加え、トレールモデルとしては初となる電子制御スロットルを搭載したのも大きなトピックスだ。これによりDR-Z4シリーズは、「A(アクティブ)」、「B(ソフト)」、「C(よりソフト)」の3種類のキャラクターが楽しめる走行モードのセレクト機能を得たほか、トラクションコントロールシステムも搭載されることに。
ちなみにトラクションコントロールのモードには、介入強めでより安心感の高い「TC2」と、やや介入度が低めの「TC1」。そしてスズキ独自のリヤホーイールの空転を許容する「Gモード」の3種類に加え、制御OFFでの走行も可能になっている。

24年ぶりのフルモデルチェンジでインジェクション化に加え、フルLED化、ABS装備、電子制御スロットルの装備などなど、ほぼ四半世紀分の大幅進化を遂げることになったDR-Z4シリーズ。DR-Z4SM、DR-Z4Sともに売れ行きも好調とのことだが、それだけ多くのライダーがDR-Z4シリーズのリニューアルを待っていたということだろう。
DR-Z4SM&DR-Z4Sの主要諸元
●全長/全幅/全高:2,195【2,270】mm/855mm/1,190【1,230】mm
●装備重量:154【151】kg
●シート高:890mm
●燃料タンク容量:8.7ℓ
●エンジン型式:水冷4サイクル単気筒DOHC4バルブ
●総排気量:398cm³
●最高出力:28kW〈38PS〉@8000
●最大トルク:37N・m〈3.8kgf・m〉 @6500
●変速機: 5速
●ブレーキ形式:前φ310【φ270】mmディスク、後φ240【φ240】mmディスク/ABS
●タイヤサイズ(前/後):120/70R17【80/100-21】/140/70R17【120/80-18】
●価格:1,199,00円/税込
※【 】内はS
DR-Z4SMとDR-Z4Sの違いを徹底チェック

DR-Z4SMとDR-Z4Sは、エンジンやフレームといった基本的な車体構成は共用しているものの、モタードモデルとオフロードモデルというキャラクターの差別化のためにサスペンションやタイヤ、ブレーキといった足回りのパーツが異なっている。またABSやトラクションコントロールといった目に見えない電子制御系の装備についても個別に味付けが施されている。









シート高はDR-Z4SM、DR-Z4S共に890mm。本来であればDR-Z4SMの方が、より小径な前後17インチホイールに加え、サスペンションのストロークも短いのでシート高数値が低くなるはず。……なのだが、DR-Z4SMのシートはDR-Z4Sと比べて+30mmクッションが厚いので同じ890mmという数値になっている。身長172cm/体重75kgの筆者がまたがると、両車とも両足で支えようとすると踵が4、5cm浮くことは変わらないが、オフロードモデルのDR-Z4Sの方が、足首の動きずらいオフロードブーツを履いているのと、アンコ抜きの分だけシート座面が幅広となりやや股が広げられる感じ。ただ両車ともスリムで車重も軽めなので支えるのに不安はない。
SUZUKI・DR-Z4シリーズのディティール

















