イタリアの老舗ブランド、FANTICが完全新設計のスポーツネイキッドをリリース。ストリートファイター・イメージの美しいシルエットが特徴なのだが、細部までこだわった仕上がりや質感の高さ、走りの完成度など、どれもが125ccという枠を超えていることに驚愕!
TEST RIDER:横田和彦/PHOTO:秋森一哉


FANTICが新しいカテゴリーに進出!
イタリアのバイクメーカー、FANTIC(ファンティック)は、1968年に設立された歴史あるブランド。トライアルやモトクロス、モペットなどを生産し、トライアルの世界選手権でチャンピオンに輝いた経歴もある。しかし1980年代に経営不振に陥り工場を閉鎖。2014年に新しいオーナーの手に渡りエンデューロバイクやe-MTB(電動アシスト式のマウンテンバイク)の生産を開始した。そして2017年にキャバレロ・シリーズを発表。日本には2019年から導入され、イタリアンバイクらしい美しいスタイリングや、高い走行性能などにより高い人気を集めている。

そのFANTICが新たなカテゴリーのバイクをリリースした。ストリートファイター・イメージのロードスポーツモデル、STEALTH(ステルス)125だ。オフロードの印象が強いFANTICだが、実は2023年からロードレースの世界選手権・Moto2に参戦している。

そして数年前のEICMA(イタリア・ミラノで開催されるモーターサイクルショー)でフルカウル・ロードスポーツのプロトモデルを出展するなど、新しいカテゴリーに意欲的な姿勢を見せていた。その第一弾がこのステルス125なのである。

ポジション
前後に17インチホイールを装着したフルサイズながら、車体はスリム&コンパクト。アグレッシブな車体デザインだが、乗車姿勢はわずかな前傾となる自然なものなので、リラックスして走れる。

タンクエンドやシート前方が絞り込まれているため足着き性はよく、軽量な車体ともあいまって支えやすい。ニーグリップするとタンクの絞り込み部分が見事にフィット。ヒザが自然に締まり、車体との一体感を得やすいのも好感が持てる。

可変バルブを採用した単気筒エンジンのフィーリングは秀逸!
ステルス125に搭載されているパワーユニットは、イタリアのモトーリ・ミナレッリ社製。その昔はヤマハの連結子会社だったが、2020年にFANTIC傘下に移行。FANTICのパートナー会社として、エンジン供給をはじめさまざまな技術提携を行っている。

ステルス125に搭載された水冷4ストローク単気筒エンジンは、SOHC・4バルブ・可変バルブタイミング機構(VVT)を搭載した最新のもの。アクセルの開閉に対してのレスポンスはスムーズで、クラッチをつなぐと低回転域からしっかりとしたトルクで車体を加速させていく。
もちろん125ccなので強烈なパワー感、というわけではないが、他社の125ccモデルに乗るライダーが「えっ、これ125ccなの?」というほどの力強さはある。

アクセルに対するレスポンスは鋭すぎず扱いやすいもの。アクセルを開け続けると、高回転までなめらかに吹け上がっていく。バー式のタコメーターを見ていると1万1500回転までストレートに伸びていくではないか。これは最高に気持ちいいぞ!
低〜中回転域のトルクフィールと、高回転でのパワフル感の両立は可変バルブシステムの効果であることは間違いない。クラスでもトップレベルのパワーユニットだと言えるだろう。
FANTICらしさが光る、ハイレベルなハンドリング
車体構成もFANTICらしいもの。メインは軽量・高剛性のスチール製トレリスフレーム。強度が必要なスイングアームピボット部には鍛造アルミサイドプレートを採用している。下部に補強ストラットを備えたスイングアームはアルミ製。細いスポークのホイールもバネ下の軽量化に貢献している。

車体が軽いこともあって、ハンドリングは軽快なもの。と同時に抜群の安定感も持ち合わせている。一見相反するように聞こえるかも知れないが、そうではない。交通の流れに乗ってリラックスして走っているときは安定感があるのだが、コーナーに差し掛かったときに荷重移動すると、ライダーの意図に遅れることなくスパッと向きを変えてくれる。そのバランスが絶妙なのだ。

それに大きく影響しているのがサスペンションのフィーリングだ。125ccクラスの場合、バネ感が強くピョコピョコと軽薄な印象を受ける動きをするモデルも少なくない。ところがステルス125のサスペンションは剛性感があり、動きもしなやかで減衰感も伝わってくる。ピボット部の剛性にこだわったフレームとのマッチングでワンランク上のフィーリングなのである。これはFANTICが今後の展開(500ccモデルの存在)も考慮して作り込んでいるからであろう。

毎日の交通手段から週末のツーリングまで、幅広く対応
ストリートを中心に、丸1日走ってみて感じたのは、限られたパワーを駆使するためにアクセルを「開け開け」で走ることの楽しさだ。

排気量125cc・最高出力15ps(11kw)のバイクは、ある程度しっかりとアクセルを開けることでペースが速い幹線道路の流れに乗れるパワー感。だから積極的に中〜高回転域を使ってもライダーがコントロールできる範囲を超えないので、怖さを感じるシーンは少ない。

そのうえステルス125は、数レベル上のクラスと同等のクオリティと性能を持つ装備により、125ccクラスとは思えない格段に高いスタビリティと軽快さが同居している。軽量な車体をアクセルワークとボディアクションで思い通りに操る楽しさを公道で手軽に体験することができる、完成度が高いロードスポーツモデルであることが体感できた。

125ccとしては高価な部類に入るモデルだが、各部のクオリティや装備を見ると納得もできる。所有していることの満足感が得られることは間違ないだろう。ハイエンドな125ccモデルを探しているユーザーに限らず、多くの人に実車を見てもらいたいと感じる珠玉の1台である。
質感が高いディテールを解説

















SPECIFICATION
モデル名称:STEALTH125
エンジン型式:水冷4スト単気筒SOHC4バルブ・可変バルブタイミング機構(VVT)
排気量:124.66cc
ボア×ストローク:52×58.7(mm)
燃料供給装置:電子制御燃料噴射 | スロットルボディ口径:φ30mm
最高出力:11kW/10250rpm
始動方式:セル式
トランスミッション:6速
クラッチ:湿式多板クラッチ・バックトルクリミッター機構
メインフレーム:スチール製トレリスフレーム+鍛造アルミサイドプレートのハイブリッド構造
リアサブフレーム:スチール製
ブレーキ(F):φ330mmディスク BYBRE製ラジアルキャリパー
ブレーキ(R):φ230mmディスク BYBRE製フローテイングキャリパー
電子制御システム:デュアルチャンネルABS(リアのみOFFも可能)・トラクションコントロール/コーナーリングABS【オプション】
サスペンション(F):ファンティック製FRS φ41mm倒立フォーク USD
サスペンション(R):ファンティック製FRS モノショック プリロード調整機構付き
全長:1996mm
シート高:810mm
ホイールベース:1335mm
タイヤ:F・110/70R-17/R・150/60-17(ピレリ ディアブロ ロッソIV)
車両重量:129kg(ガソリン抜き)
タンク容量:12L
ボディーカラー:イエロー/レッド
メーカー希望小売価格:960,000円(税込)
(編集協力:モータリスト合同会社)








