長きに渡るレース経験の技術を自社製品にフィードバック
かつて全日本ロードレース選手権などで活躍し、その後、鈴鹿8耐などへ長きに渡って参戦し続け、昨年レース活動を引退した寺本幸司氏。
そんな寺本氏が率いる寺本自動車商会(TERAMOTO)では「T-REV(ティーレブ)」「EZ-SHiFTER(イージー・シフター)」「EZ+plus(イージー・プラス)」というチューニングパーツを主軸に、日々研究開発が重ねられている。
いずれのパーツに共通しているのは、比較的手軽に装着できて効果が高く、取り付け説明が丁寧であるうえに、メンテナンスやアフターパーツのフォローなどもしっかり行なわれていることだ。

戦ってきた車両やスーツが展示され、それだけでも見学する価値がある。
MotoMeganeでは、過去に「T-REVmini」と「EZ+plus」という二つのチューニングパーツをそれぞれ取り上げたが、今回はその二つを組み合わせるとどれぐらい効果があるのか? 普段からCT125ハンターカブ(JA55)に乗る筆者が、T-REVminiのみ装着、T-REVmini+EZ+plusの同時装着をテストしてみた。
小排気量の単気筒モデル向けに開発された「T-REVmini」

まず初めて読んでいただいている方に向けてT-REVについて少しだけ解説したい。
「T-REV」とは簡単に言ってしまえば、エンジンのクランクケース内の圧力を減圧することで空気抵抗を減らし、クランクやコンロッドの動きをスムーズにする装置だ。クランク内の動きがスムーズになると、振動の軽減、シフトダウンした際のエンジンブレーキがマイルドになる効果が期待できるという。
通常クランクケース内で発生したブローバイガスは、ピストンの下降と共にブローバイホースを経て排出されるが、ピストンが上昇するとケース内に負圧が起きて逆戻りしてしまう。つまりクランクケース内は、ほぼ大気と同じ気圧なのだが、このT-REVはブローバイホースの中間に一方通行のバルブを割り込ませることで、ブローバイガスの逆流を防ぎ、その結果クランクケース内を減圧する、という仕組みである。

ちなみに、減圧(空気の密度が低くなる)すると空気抵抗が減り「標高の高い場所ではボールが遠くまで飛ぶ」という原理は、科学的にも証明されていること。
しかもこのシステムはF1やMotoGPなど世界のトップレースでは当たり前の技術であり、過去にエンジンブレーキのショックを軽減するアイテムとして同様のパーツの存在を知った寺本氏が、独自で研究開発を重ねて製品化。発売から15年たった今では、あらゆるバイクに対応し、多くのユーザーから高評価を得ている製品だ。
そんなT-REVを25%の小型化と43%の軽量化を実現し、価格もスタンダードの2万8600円に対してminiは1万5400円とリーズナブルに抑えたのがT-REVminiだ。

手軽なカプラーオンでトルクとパワーが得られるEZ+plus

機械的なシステムで効果を発揮するT-REVminiに対して、電気的な信号でパワーとトルクを上げるのがEZ+plusだ。
エンジンは空気と霧状に噴射されたガソリンが混ざった混合気を燃やし、爆発させて動力を得る。この空気とガソリンの割合は「空燃比」と呼ばれ、一般的にエンジンがフルパワーを発生する「出力空燃比」は13:1と言われている。
しかし、小型二輪および軽二輪は排気ガス規制や燃費を考慮して、低中速域での空燃比が15:1~16:1とかなり薄めの混合気に設定されているのだ。つまりこれをより13:1に近づけるだけで、出力やトルクが上がりそのエンジンが持っている本来のパワーを引き出せることになる。
そこで市販されているバイクのパワーやトルクを上げようとすると吸気、排気に加えインジェクションチューンを施す必要がある。こうなると手間も金額も大きくなり、全体のバランスの問題なども出てくるので非常にハードルが高い。
そこまで大袈裟ではなく「もう少しでいいからパワーがあったらな」というニーズに応える装置が「EZ+plus」というわけだ。

取り付けは非常に簡単。本体と車種専用のハーネスを、取付車両のO2センサー(酸素濃度センサー)にカプラーオンで割り込ませるだけ。事前にカウルやサイドカバーなどを外す手間はあるが、それを考慮しても初見でも1時間はかからないだろう。
また製品には非常に丁寧な説明書が付帯しているうえ、寺本自動車のサイトでも「取り付け手順」を確認できるので、初心者でも取り付けは比較的安心だ。
注意したいのはEZ+plusは基本的にはノーマルマフラーを前提に設計されているので、吸気排気をチューンしているモデルにはエラーが出る可能性もある。もっともJMCAを始めとしたリプレイスマフラーには幅広く対応している。

このグラフはEZ+plus未装着と装着のトルクの発生具合を比較したもの。アクセル開度10%/20%/40%/60%という低中速域で、それぞれ明確なパワーUPが確認されている。
※現在、排ガスを計測するセンサーにはO2センサー・A/Fセンサーの2種類があり、今のところEZ+plusが対応しているのはO2センサーのみ。AFセンサー搭載のバイクに対応するEZ-Plusは現在開発中とのことなので、今しばらく待ちたい。
T-REVminiのみ装着状態でのテストライド

まずT-REVmini装着車に試乗。テスト車両はCT125ハンターカブ(JA55)だ。
T-REVminiの効果はすぐに分かった。まずエンジンの回り方がマイルドであること。これは振動が減ったとも言える。そして幹線道路でスピードを上げ、前方の信号が赤になったので、アクセルを緩めた瞬間にそのエンジンブレーキが非常に滑らかに回っていることに驚いた。
いつものつもりでアクセルを戻したので、速度の落ち方が足りずに少しブレーキングが遅れてしまったほどだ。なんというか、高回転域からアクセルを戻すと「ビィィーーン」と振動を伴いながら回転が落ちていくが、T-REVmini装着車だと「シュイィイーン」と軽快に落ちていく感じ。雑味がなくなってどこかヌルヌルした感覚もあり、慣れるとこれが妙に気持ちいい。

T-REVmini+EZ+plus装着でテストライド

いよいよT-REVminiとEZ+plusのプラスの両方を装着した状態で走り出す。さきほどのT-REVminiの効果が高すぎて、正直EZ+plusの効果は最初はわからなかった。しかし、幹線道路を外れて裏路地のような狭い場所へ入るとその違いが分かり始めた。
1速 5~15km/hあたりの低速で、裏路地の角を曲がる際にぐっとアクセルを開けた時の車体のピックアップに、いつもよりもタイムラグがなく、車体が「ついてくる」印象をうけた。またアクセルを開け始め、遠心クラッチがつながり出力が出る瞬間も少しマイルドになったようだ。
EZ+plusはその特性上、とくに低中速域で威力を発揮し、アクセル開度20%の領域でもっともパワーが出る検証結果が示されているが、アクセルの開け始めでもそれは充分にわかった。逆に幹線道路を制限速度いっぱいまで出しているとまったくわからない、というのが正直なところだ。
手軽でリーズナブルに爽快なフィーリングが手に入る!

筆者はこれまで日常的にCT125ハンターカブで町乗りやツーリングで、すでに1万km弱走っているため、T-REVminiとEZ+plusが装着された車両の違いは明確にわかった。
筆者自身CT125ハンターカブは非常に優れたバイクなので、ボアアップや吸排気系のチューンは必要ないと思っていたが、ここまで変わる、というかシンプルに走行フィーリングが非常に気持ち良かったのでとても欲しくなってしまった。

寺本氏同様のレースライダーだからこその知見と技術が詰まっていると語る。
しかも装着に煩雑さがなく、価格や工賃もそこまで高額でないのだから、総合的に見てバイクライフをより豊かにするという観点ではおおいに推奨できるお手軽チューンといえるだろう。
なお、EZ+plusおよびT-REVminiの取り付けはご自身で行なうか、各バイク店またはナップス、2りんかん、ライコランドなどの用品店でも行なってくれる。およその工賃としてはT-REVminiで0.7時間、EZ+plusで0.3時間(カウル着き車両などは別)での工賃が発生することになる。
自分で装着する際も、製品には詳しい説明書があるほか、寺本自動車商会のサイトにも、丁寧な取り付けガイドがあるので多少バイクをいじったことのあるライダーなら問題ないはずだ。
(編集協力:株式会社寺本自動車商会)








