より軽量でエネルギー密度が高いリチウムバッテリーが市場に登場し、スポーツバイクやモトクロスモデルを中心に転換が進んでいる。そこに登場した新たな選択肢が「ナトリウムイオンバッテリー」だ。鉛バッテリーよりも軽く、熱暴走しにくい次世代のバッテリーは、今までのバッテリー界の常識を覆す可能性を秘めている!
バイク用バッテリーに、新しい選択肢が生まれた!
バイクに欠かせない装備のひとつが「バッテリー」だ。
バイクや車には使われているバッテリーの多くは鉛を使用している。その理由は、鉛バッテリーが技術的に完成の域に達しており性能が安定していて信頼性が高いこと、価格がこなれていることなどあげられる。
そして数年前から登場しジワジワと浸透しているのがリチウムイオンバッテリーである。
軽さと瞬発力の強さがウリで、タイムを競うスーパースポーツモデルやオフロードモデルなどに使われている。ただし、まだ新しい技術ということもあり高価なのと、取り扱いにコツが必要な場面もある。
そんな中、別の素材を使った次世代のバッテリーが登場した。
それがナトリウムイオンバッテリーである。

聞き慣れないワードだが、それもそのはず、日本のバイク市場では初登場。家電でもナトリウムイオンバッテリーを使っているものは、まだほとんど発売されていない。それだけ新しい技術なのだが、ナトリウムイオンバッテリーには鉛バッテリーのみならず、リチウムイオンバッテリーをも超えるメリットが多いのだ。
そこで今回は、ナトリウムイオンバッテリーを牽引する「OUTDO(アウトドゥ―)」に注目し、その優れた特徴を紐解いていく。
長期保管後でも楽々始動!
〝寒さに強い〟〝熱暴走しない〟〝軽くて長持ち〟とメリット多数
前述したようにナトリウムイオンバッテリーは日本に初上陸したばかりの製品。まだ一般にはあまり知られていない優れた特徴を具体的に挙げていこう。

その1:自然放電しにくい
バイクを毎日の交通手段としてではなく、趣味として月に数回しか乗らないという人も珍しくない。しかしバイクを長期間動かさずにいると、バッテリーが自然放電してしまいエンジンがかからなくなることも……。
そんな場面でもナトリウムイオンバッテリーは放電しにくい設計なので、長期放置に強いのだ。フル充電の状態でバイクに積載している場合は12ヶ月、バッテリー端子から外して保管する場合は18ヶ月は持つという。

その2:低温時の始動性に優れる
冬の朝、それほど放置している訳じゃないのにセルの回りが弱くなって焦った経験がある人もいるはずだ。それは鉛バッテリーが低温により化学反応が鈍っているからだ。しかも長期にわたって使用し劣化が進むと、急激にパワーダウンすることもある。
その点、ナトリウムイオンバッテリーは低温時でも性能が落ちにくいのだ。低温始動テストでは−25度の状態でも普通にエンジンを始動できたというから驚きだ。
「−25度でバイクなんて乗らないよ!」という声があるかも知れないが、それだけの耐低温性能があれば、日本の冬の寒さ程度ではまったく影響を受けないことが理解できるはず。
自然放電しにくく、低温時の始動性に優れるから、冬の長期間そのまま駐車していたバイクでも、春を迎えたらセルスイッチ一発でエンジン始動が期待できる。東北や北海道など寒い地域のライダーにとって、OUTDOナトリウムイオンバッテリーは救世主になるかもしれない。

その3:発火リスクを抑えた安全設計
少ないスペースに強力な電圧を蓄積できるリチウムイオンバッテリーだが、近年、それを採用しているスマートフォンやモバイルバッテリーなどの発火事件を耳にすることが増えた。これは、過充電や衝撃に端を発する熱暴走が原因だ。
OUTDOのナトリウムイオンバッテリーはその点にも十分考慮。セル内部に過充電や異常加熱を感知すると自動的に電流をカットし熱暴走を防ぐ安全装置を内蔵している。また内部構造や本体が強固に作られているので、外部からの衝撃に対して強いのも特徴になっている。

その4:従来の充電器が使えて過放電にも強くて長持ち
リチウムイオンバッテリーは「化学反応が非常に繊細で、わずかな過充電でも発火につながるため」専用の充電器が必要になる。そのためホームセンターで売っているような一般的なバッテリー充電器では対応してないことが多く、リチウムイオンバッテリーの導入にいまいち踏み切れないハードルになっている。
ところがOUTDOのナトリウムイオンバッテリーは、鉛バッテリー用の充電器を使って充電することができる。
さらに充電スピードも早く、テストでは18分で90%まで回復させることができたという。これならバッテリー上がりに気付いても短時間でリカバリーでき、走り出すことができる。
※OUTDOナトリウムイオンバッテリー専用充電器を使用の場合。
バッテリーの電圧が規定の下限を下回るまで使ってしまう(放電しすぎる)状態を過放電という。この過放電に鉛バッテリーとリチウムイオンバッテリーは弱く、深く電圧を落とすたびにダメージが蓄積し、容量の戻りが鈍ってくる。
一方で、ナトリウムイオンバッテリーなら0V(完全放電)になっても再充電して利用が可能。性能を落とすこともなく普通に使用し続けることができるという。
従来の鉛バッテリーと取り扱い方が同じで、より長期間使うことができるタフさを持っていることも大きな魅力なのだ。

その5:軽量
現在、一般的に使われている鉛バッテリーは、その名の通り内部に鉛の板が多数入っているので非常に重い。実際に持って驚いた人も多いだろう。
対してナトリウムイオンバッテリーは鉛バッテリーの約40%、半分以下の重さだ。鉛バッテリー比・30%ほどになるリチウムイオンバッテリーにはかなわないが、それでも十分軽く、車種によっては数㎏の軽量化になる。軽さは取り回しや加減速性能、燃費性能などに影響してくるので、多くのライダーが恩恵を受けられるだろう。

リチウムは高価、鉛は性能的にいまいち……
そんないいところを集約したのがナトリウムイオンバッテリー!
高性能バッテリーというとリチウムイオンバッテリーがまず思い浮かぶ。リチウムイオンバッテリーは軽量で高出力だが、熱暴走のリスクや低温時の性能が低かったり、価格も高価だ。
対して、ナトリウムイオンバッテリーは、熱暴走しにくく、低温時の性能も安定している。デメリットを上げるとしたら、蓄えられるエネルギーの密度がリチウムイオンバッテリーよりも少ないこと。だからリチウムイオンバッテリーに比べるとやや重くなってしまうのだが、鉛バッテリーよりはずっと軽い。
0.01秒を争うレーシングマシンならいざしらず、そこまで徹底した軽量化を求めない公道モデルであれば、ナトリウムイオンバッテリーの軽さでも十分に効果は得られる。

むしろレアメタルを使用するため高価になるリチウムイオンバッテリーより安価な価格設定なのは、ユーザーとしては嬉しいかぎり。
またナトリウムイオンバッテリーの原材料であるナトリウムは、地球上の海水や塩湖、地層などに豊富に存在しているため、今後量産化が進めばさらに価格が下がる可能性も十分にある。そうするとより身近なバッテリーになるので期待したいところだ。
バッテリーの特性を比較
| 鉛 | リチウムイオン | ナトリウムイオン | |
| 重さ | △ 重い | ◎ 軽い | ● 軽い |
| 寒冷地対応 | △ 始動性が低下 | ● -10度程度 | ◎ -25度でも始動 |
| 長期放置耐性 | △ 約1~3か月 | ● 約6~12か月 | ◎ 18カ月保管可能 (0V耐性あり) |
| 発火リスク | △ 低い | △ 注意が必要 | ◎ 極めて低い |
| 過放電耐性 | △ | ○ | ◎ |
| 始動回数 | △ 1万回未満 | ● 2~3万回 | ◎ 8万回以上 |
| 充放電サイクル | △ 300~500回 | ● 1千~2千回 | ◎ 3千回以上 |
| 保証期間 | △ 6-24カ月or距離制限 | ● 12-24カ月or距離制限 | ◎ 24カ月+距離無制限 |
| 価格 | ◎ 低 | △ 高 | ● 中 |
ナトリウムイオンバッテリーを作っているOUTDOとは
数多くの優れた性能を持っているナトリウムイオンバッテリー。その生産を行っているのが、中国に本社があるOUTDO(アウトドゥー)だ。OUTDOは、30年ほど前からバッテリーの製造を行っている老舗メーカー。

現在は中国、タイ、マレーシアの3ヶ所に生産拠点を構え、クリーンな工場で鉛バッテリーからリチウムイオンバッテリーまで幅広く製造。その数は年間累計で4,020万台という膨大な数で、世界各国に輸出されている。これまでに多数の特許を取得していて、「国家ハイテク企業」「福建省鉛蓄電池工学研究センター」「福建省有名ブランド」など数々の称号を獲得。確かな技術力を背景に世界140カ国で品質が認められ、使われてきている。


OUTDOでは複数拠点での大量生産を前提にしつつ、同一の品質基準で作る仕組みを敷いている。その品質を守る仕組みで最も象徴的なのが「4充3放(=4回充電・3回放電)」だ。
出荷対象のバッテリー全てに対して3回の充放電を行い、性能と安定性をチェックし、問題がなければ4回目の充電を行って出荷に回すという運用がされている。抜き取り作業ではなく全数に対して行っているから高品質を維持でき、ユーザーも安心して購入できる。
世界のトップレーシングチームも注目しているOUTDOバッテリー
OUTDOのバッテリーの品質は、世界トップレベルのレースの世界でも認められている。OUTDOは、BMW Motorrad Motorsportの ワールドスーパーバイクチームの公式テクニカルパートナーとなっており、2024年チャンピオンのトプラク・ラズガットリオグルのマシンには、レース仕様のOUTDOバッテリーが搭載されている。これはモータースポーツの過酷な環境下であってもOUTDOのバッテリーが高い信頼性・耐久性・パフォーマンスを発揮していることを証明するものである。


日本国内では、世界のさまざまなレースで活躍している長島哲太選手がOUTDOジャパンのアンバサダーになっている。彼が実際にOUTDOの中国本社工場を全て見学し、モノ作りの思想や検査基準を自分の目で確かめたうえでの参画だ。


今後、彼のレーシングマシン・HONDA CBR1000RR-Rにもレース仕様のOUTDOバッテリーが搭載される予定だ。
バランスの取れたコスパに優れるナトリウムイオンバッテリー

ナトリウムイオンバッテリーは、これから市場に浸透してくる次世代のバッテリーだ。ここまで記事を読んでくれた読者なら、バランスの取れた性能と信頼できる品質、さらにコストパフォーマンスにも優れていることを理解してもらえたと思う。
将来的には鉛バッテリーに置き換わる存在になるだけのポテンシャルを秘めた注目のバッテリーだといえる。是非その真価を自分の手で確かめてみて欲しい。
OUTDOナトリウムイオンバッテリーの購入は、2025年12月以降全国のバイク用品店バイクショップで順次発売予定、ネットでは2025年12月以降OUTDOホームページから購入可能となる。
また、販売店も募集しているので、こちらからお問い合わせを。
次回の記事では、極低温環境を舞台にしたエンジン始動の確実性にフォーカスし、冬場にどれだけの活躍が期待できるかをお見せしていく予定だ。
(編集協力:OUTDO)






