125ccと共通の車体に、463cc単気筒エンジンを搭載したFANTIC STEALTH 500。そう聞くとかなり刺激的な組み合わせだが、実際は街中では扱いやすく、アクセルを大きく開けるとスポーティなキャラクターに一変する、今までにない感覚のライトウェイトスポーツだ。軽さとレスポンスを生かしてライダーの思い通りに操れる、新しいシングル・スポーツの楽しさを確かめてみた。
Tester:横田和彦
FUN RIDEのために生まれた、FANTICの500シリーズ
1968年にイタリアで誕生したFANTIC(ファンティック)は、エンデューロやモトクロスといったオフロードの世界で長い歴史を築いてきたブランド。日本では2019年に導入されたキャバレロ・シリーズでその名を知った人も多いだろう。メイン機種が「スクランブラー」であることからもわかる通り、オン/オフロードを問わず、“バイクそのものを自由に楽しむ” という姿勢が感じられる。

そんなFANTICが、ロードスポーツの世界へ送り込んだ新たなマシンが STEALTH(ステルス)シリーズだ。先行して登場した STEALTH 125 は、軽量でコンパクトな車体と本格的な装備を組み合わせ、小排気量ながら単なるエントリーモデルではない完成度を誇っていた。その125と共通の車体に、463cc単気筒エンジンを搭載したのが、STEALTH 500である。

僕自身CABALLERO SCRAMBLER 500のオーナーだけに、この痛快なフィーリングのエンジンをロードスポーツの車体に載せたらどうなるのかは以前から気になっていた。それをメーカーがカタチにしてくれたのである。
ねらいは軽さと扱いやすいパワーを生かして、街中でもワインディングでもライダー自身が積極的に操って走れること。FANTICらしい「遊ぶためのライトウェイトスポーツモデル」がSTEALTH 500なのである。

軽さを武器にした、本格ライトウェイトスポーツモデル
エンジンは、イタリアのモトーリ・ミナレッリ社が製造する水冷DOHC4バルブ単気筒。
現行のCABALLERO 500のエンジンをベースとしながら、軽量ピストンなどを採用し、より軽快に吹け上がるロードスポーツ向けのキャラクターに仕上げている。ショートストロークなので、大排気量シングルにありがちな低回転の力強さだけを前面に押し出すのではなく、中〜高回転まで気持ちよく使えるのが特徴だ。

最高出力は33.7kW(約46PS)。数値だけを見れば、刺激的なパワーを前面に押し出したモデルではないことがわかるが、このバイクの場合は147kg(ガソリン抜き)という、一般的な250ccモデル並みの超軽量な車体との組み合わせがポイントになる。

フレームはスチールトレリスと、スイングアームピボットを兼ねた鍛造アルミ製サイドプレートを組み合わせたハイブリッド構造。スイングアームは軽量・高剛性のアルミを採用し、下部に補強ストラットを備えた本格的なもの。

φ41mm倒立フォーク、320mmという大径シングルディスクブレーキ、BYBRE製ラジアルマウントキャリパーといった装備も、走行性能を追求した結果採用されたものだ。

ライディングモードは STREET、TRACK、WET、CUSTOMの4種類。エンジンマップにはFUNとWETがあり、各モードでABSやトラクションコントロールなどの設定が組み合わされる。そしてCUSTOMは自分好みの設定ができるモードだ。






今回の試乗では、基本的にSTREETを使用した。WETではスロットル操作に対する吹け上がりが穏やかになるのだが、晴天の一般公道ならSTREETで問題ないだろう。
大型バイクとは思えない気軽さを体感!
またがって真っ先に感じたのは、とにかく車体がスリムなこと。STEALTH 125とサイズが共通なだけに、500ccクラスのバイクに乗っているという感覚がほとんどない。

シート高は810mm。身長165cmでは両足が完全にベッタリというわけではないものの、車体がスリムなので足をまっすぐ下ろしやすく、タンクまわりも絞り込まれていてニーグリップしやすい。欧州車にありがちなハンドルの遠さもなく、上体を無理に伸ばさず自然な姿勢が取れる。小柄なライダーにも馴染みやすいポジションだといえる。



エンジンを始動すると、アイドリングでは「ドコドコドコッ…」と463cc単気筒エンジンらしい鼓動がしっかり伝わってくる。ところがクラッチをつないで走り始めると、その印象が一転。4000rpmあたりまでのフィーリングは想像以上に滑らかなのだ。そのため大排気量ハイパワー単気筒エンジンにありがちな、低回転域でアクセルを開閉しても、ギクシャクした挙動が出にくい。混雑している幹線道路を高めのギアで流しても急かされるようなところがなく、非常に走らせやすい。

6速・約3500rpmで速度は70〜75km/h付近。振動も少なく滑らかにまわり、アクセルを開けるとスルスルッと速度が上がる。このあたりの回転域を使えば、流れの速い幹線道路でも意外なほど穏やかに走れる。

少し気になったのは、低い回転域でスタートすると、一瞬回転が落ち込むような領域があったこと。そのため元気よくスタートするときは、高めの回転、おおよそ4000rpm以上をキープしつつクラッチをつないでいくと良い。実はこの4000〜4500rpm近辺が、このバイクのキーポイントになる。
4500回転を越えると別のキャラクターが現れる!

4500rpmを越えると、エンジンのキャラクターが明確に変わる。それまでの穏やかさから一転し、スロットルを開けたときの反応がダイレクトになるのだ。そこから上は回転がストレートに伸びていき、車体の軽さと組み合わさって爽快な加速フィールを味わわせてくれる。一気にスポーツ性が高まる瞬間だ。

特に楽しいのがコーナーを抜けていくとき。コーナーへのアプローチ時は車体の重さを意識させないため、強めにブレーキをかけても不安が少ない。短い制動区間で減速を終えるやいなや軽快に向きを変え、アクセルを開けていくと単気筒サウンドにあわせて軽々と蹴り出される。その一連の動きは異次元感すらあり、「ライトウェイトスポーツとは、こういうものだったか!」とあらためて感じさせてくれる。

その走りの強い味方が、ニュートラルかつレスポンスが良いハンドリング特性だ。ライダーが少しでも腰の位置をずらしたり、ステップへ荷重を加えると、その入力に対して車体が瞬時に反応する。重量があるバイクでは分かりにくい、“ライダーの操作と車体挙動のつながり” が体感できるのだ。市街地を走るペースでも、バイクに乗せられているのではなく『バイクを操っている』という実感が得られる。


サスペンションの印象もいい。前後の動きのバランスが取れていて、減速時のフロントの沈み込みも自然。路面のギャップを通過したあとも余計な揺れを長く残さず、収束が早い。そのためバンク中に路面が少し荒れているところを通過しても車体がブレにくい。派手さはないが完成度は高いといえる。

“バイクを操る”という根本的な楽しさが体感できる。

STEALTH 500 の魅力は、最高出力や最高速といったスペックだけでは語れない。
500ccとは思えない超軽量な車体にまたがり、ブレーキをかけて減速と同時に車体姿勢を安定させ、ステップへ的確に荷重し、ねらったポイントで向きを変え、アクセルを開けて軽快に立ち上がっていく。それら一連の操作に車体がきちんと反応してくれると同時に、車体の状態もライダーへ明確にフィードバックしてくれる。だから街中の交差点ひとつ曲がるだけでも楽しくなってくるのだ。

また、4000rpm付近までは穏やかで扱いやすく、4500rpm付近を超えればスポーツシングルらしい表情を見せるエンジン特性も魅力。普段は気軽な街乗りバイクとして使いながら、休日にはワインディングへ持ち出して思い切りスポーティに走る。そんなバイクライフがリアルに見えてくる。

初めて大型カテゴリーにステップアップするライダーにとっては、バイクを操作する基本を教えてくれる一台になる。一方、多くのビッグバイクを乗り継いできたベテランなら「どう走らせるか」というバイク本来の楽しさを改めて思い出させてくれるだろう。
バイクに乗せられるのではなく、自ら積極的に操りたい。 STEALTH 500は、そんなライダーにこそ乗ってほしいライトウェイトスポーツモデルだ。

ディテール解説












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