中古バイクは、今や直接販売店で購入せずとも、ネットオークションやフリマアプリなどさまざまな形で買えるようになりましたが、重大な欠陥を見落として購入してしまったり、車検証や軽自動車届出済証等の書類がないバイクを買ってしまったりと、購入後のトラブルが後をたちません。
中古バイクを購入するうえで、車両の程度はもちろん、インターネットを介して購入する際は取引相手が信用できるかどうかを見極めることが重要です。そのためには、どういった点に気を付けなければならないのでしょうか。安心して良質な中古バイクを手に入れるためのポイントを、一般社団法人 中古二輪自動車流通協会(以下、中二協 ) 理事の正渡康弘氏に詳しく解説いただきます。

一般社団法人 中古二輪自動車流通協会
理事
正渡 康弘 氏
株式会社アークコアの代表取締役。
自身もライダーとしてバイクを深く愛し、その楽しさを知るからこそ、「すべてのライダーが安心してバイクを選べる市場を創りたい」との強い想いを抱く。その情熱を原動力に、中二協の理事として、中古バイク市場の信頼性向上と消費者への啓発活動に尽力。流通に関する深い知見を活かし、安全な取引市場の拡大に貢献している。ビジネスの最前線に立ちながら、常にライダーの視点を忘れないその姿勢は、多くの共感と信頼を集めている。
MOTO INFO掲載日:2025年8月6日
良質な中古バイクを見極めるポイント

中古バイクの売買に関するトラブルは、オフライン・オンライン問わずさまざまな事案が発生しています。中古バイクを取り扱う中二協が多くの方に知って欲しい、中古バイクを購入するうえで気を付けたい点について教えていただけますか。
「バイクを楽しむためには、“ちゃんとした車両”を選ぶことが何よりも大事です。安全に走るための整備が行き届いたバイクのことを指しますが、世の中には正しく整備されていなかったり、未整備のバイクが中古市場に並んでいることもあります。そうした中古バイクを掴まないため、次のような点に注意していただきたいですね」
1, 外装のチェック

「まずは実車を見て“違和感がないかどうか”を確認してください。例えば、転倒したときにできるようなカウリング(外装)の割れや傷、燃料タンクの凹みなどがないかチェックしましょう。
また、ハンドルを左右いっぱいまで切ったときに止まる部分(ハンドルストッパー)に傷や歪みがないかも見てください。ここにダメージがあると、骨格であるフレームに大きな衝撃を受けた可能性が考えられます。見た目のダメージはそのバイクの過去を知る大きな手がかりなのです」
2, エンジン周り

「バイクの心臓部であるエンジンまわりでは、エンジン下部やパーツの合わせ目などからオイルがうっすらにじんでいたり、漏れたりしていないか注意深く観察しましょう。できればエンジンをかけてもらって、変な音がしないか、異常な振動がないかも確認できれば安心です。
また、マフラーから出る排気ガスの色にも注目してください。白や黒の煙がモクモク出るようなら、何らかのトラブルを抱えているかもしれません」
3, 足回りと消耗品

「タイヤの溝がちゃんと残っている(スリップサインが出ていない)か、ブレーキパッドは過度にすり減っていないかを確認しましょう。これらは消耗品と言って、状態が悪ければすぐに交換する必要があります。
また、フロントサスペンションやリアサスペンションからオイルが漏れていないかもチェックポイントです。ここでオイルがにじんでいたりすると、車体購入後に修理のための追加費用がかかってしまいますし、何より安全にバイクを走らせるための重要な部位ですので、できるだけ状態の良いものを選びましょう」
4, 書類や付属品の確認

「車体に備わる車検証はもちろん、整備記録簿などの書類の有無も確認しましょう。過去にどんな点検や修理が行われたかがわかる大事な資料です。取扱説明書やスペアキー、車載工具などがちゃんと揃っているかもポイントです。これらをきちんと保管していたかどうかで、以前のオーナーがそのバイクを大切にしていたかどうかが判断できます。結果的に、バイクの状態の良し悪しにもつながる大きなヒントになります」

車体の状態以外にも気をつけなければいけない点はありますか。
「車両のコンディションと同じくらい重要なのが、契約内容の確認です。意外に思われるかもしれませんが、中古バイクの売買では、口頭での約束や、簡単な領収書のやり取りだけなど、いまだにしっかりとした契約書を交わさないケースが少なくないのです。このような場合、車両の正確な情報や納車時までにどんな整備がされるのか、車体購入後の保証やロードサービスなどが付帯しているのかどうか、といった重要な情報が書面に残りません。
そもそも中古バイクは、どれだけしっかり整備していても故障のリスクがあります。特に、長期間動かしていなかった車両などは、いくら納車前にしっかりと整備をしても、乗り始めてから不具合がわかることもあります。だからこそ、万が一の際に備えて保証がついた車両を選ぶことが、本当の安心につながるのです。
当会への相談事例でも、『購入後に“実は何も整備されていない現状販売だった”と知った』や『納車後すぐに調子が悪くなったのに、問い合わせたら保証対象外と言われた』といったものがあります。ですので、車両本体のチェックと合わせて、整備内容や保証の有無・範囲などを明記した契約書を必ず交わすようにしていただきたいのです」
ネットオークションで中古バイクを購入する危険性

近年、ネットオークションやフリマアプリ、SNSなどで、中古バイクを手軽に探せるようになり、トラブルも増えてきていると聞きます。中二協にはどんな相談が寄せられているのでしょうか。
「インターネットのサービスを利用した個人間取引による相談は年々増えています。トラブルの内容も多様化しているのですが、特に多いのは『写真や説明と実物の状態が違う』『エンジンがかからないなど重大な不具合が隠されていた』『お金を払ったのにバイクが届かない』などです。
現状販売で購入した後のトラブルが近年特に多いですね。例えば、ネットオークションなどで購入したバイクに不具合があり、最寄りのバイク販売店に修理を頼んだら『ブレーキが効かなくて危険な状態だった』や『走行距離がおかしい』とメーターの改ざんを疑われたりするケースなどです。当然修理が必要になり、想定外の費用が発生してしまいます。これが古い車両となると、すでに部品の供給が終わっていて入手できなくなっており、修理したくてもできない、という事態に陥ることも。『最初から信頼できるバイクショップで購入した方が良かった』という落胆の声を耳にしたことは何度もあります。
ネット上での個人間取引で見受けられるのは、『見た目は業者っぽい出品者によるトラブル』です。多数のバイクを出品していることからバイク販売店のように見えるけど、実は個人業者だったり、バイク販売店でも、整備や保証体制がまったく整っていなかったりするのです」

ネット上で見える姿と実態が異なる悪質な出品者がいるということですね。
「その通りです。さらに悪質なのが、ネットオークションやフリマアプリなどが用意している『安全な決済システム』を使わず、『手数料がもったいないから直接取引にしませんか』と持ちかけてくるケースです。その申し出に応じて直接お金を振り込んでしまうと、返金されない、連絡も取れないという事態に陥ります。プラットフォームを利用していないので、トラブル時の補償対象外になってしまうのです。
このような出品者は実店舗を持たず、SNSなどで集客していることが多いのです。出品されているバイクはまともに整備もされず、倉庫や青空駐車場、ひどい場合だとジャンクヤードのような場所に雑に置かれていたりします。そんな環境で管理された車両が安全に走れるわけがありません」

ネットオークションやフリマアプリ、SNSなどを利用した中古バイクの売買は、簡単にアプローチできる反面、非常に高いリスクをはらんでいるのだと理解できました。
「バイクに関する知識が豊富で、かなり踏み込んだ整備も自分でできるという人以外は、個人出品や不明瞭な業者から中古バイクを購入するのは避けた方が良いでしょう。安さに惹かれて粗悪品をつかまされるリスクが非常に高いです。
どうしても欲しいバイクがインターネット上に出品されていて、でも自分で判断する自信がないという方は、信頼できる専門家に相談するのが一番です。その方に判断をしていただいたり、購入後点検整備を依頼することが良いと思います。費用はかかりますが、結果的に安上がりになるケースが多いようです。
中二協加盟店は、すべて一定の基準をクリアした中古バイク販売業者です。安心してバイクを購入するうえでお店を選ぶ際、目安のひとつとして参考にしてもらえると幸いです」
安心してバイクライフを送るために

国民生活センターへの相談件数は、2019年まで1,251件だった苦情や相談が、2020年が1,322件、2021年が1,425件、2022年が1,413件、2023年が1,425件と増加しています。特に増加したのが「通信販売」で、2019年の29.18%以降、33.59%(2020年)、34.74%(2021年)、32.48%(2022年)、34.8%(2023年)と、3割強を維持しているのです。
コロナ禍以降、インターネットの通信販売利用者の増加に伴う相談増と考えられ、中二協に寄せられる「インターネット上でのバイクの売買」に関する問い合わせが含まれているようです。日用品と違ってバイクは価格帯が高くなるので、悪質な売買に関わってしまった際の被害額も相当なものになります。なかには100万円を超える被害に遭った問い合わせが中二協にあったそうです。
このような被害に遭わないよう、バイクの売買に関しては普段以上に注意深く接し、正誤の判別が難しい際は専門家に相談するように心がけましょう。なにより、中古バイクの流通における公平性や、私たちユーザーが安心してバイクを売買できるような環境作りに取り組んでいる中二協加盟店やメーカー正規取引店など、信頼できる二輪販売店で購入されることをお勧めします。
一般社団法人 中古二輪自動車流通協会
https://umda.or.jp
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