ライダーは総じて乗り物好き。バイクに乗る前は鉄道や自転車で旅をしていた人も多いのではないでしょうか。北海道・安平町にある「旅の轍」は、そんな人にピッタリな旅人宿です。オーナーは筋金入りの鉄道ファン。廃線跡を訪れるために自転車旅も始めました。鉄道ファンやライダーが訪れ、夜ごと旅の話を肴に宴が開かれています。
鉄道の街に鉄分たっぷりな宿がオープン

安平町追分地区(旧追分町)は、かつて「鉄道の街」と呼ばれていました。追分駅は岩見沢と室蘭を結ぶ室蘭本線から夕張線を分岐する主要駅で、広々としたヤード(引き込み線)に石炭を満載した貨車がところ狭しと並んでいました。

「旅の轍」オーナーの鈴木智也さん(愛称:のみぞう)さんは奈良県から安平町に移住しました。鉄道大好き、北海道大好き、なによりも旅と旅人が大好き。ユースホステルのヘルパーなどを経て、2015年10月に「旅の轍」をオープンしました。
ライダーも嬉しい!苫小牧西港や東港から1時間足らず

「ただいま」と言ってドアを開けると、鈴木さんが笑顔で迎えてくれました。旅の轍は街外れにあります。苫小牧西港や東港から1時間足らずと近いので、フェリーを利用するライダーの利用も見越していたそうです。
「駅前は利便性が高いですが、バイクがたくさん集まることで周辺に迷惑がかかるかもしれない。郊外なら遅くに到着したライダーさんも受け入れることができると思いました」

宿の前は砂利ですが、バイク・自転車用の駐輪場にはスタンドがめり込まないように石垣が敷かれています。旅人への心遣いが嬉しいですね。
鉄道愛溢れる談話室

談話室の壁には行先板や愛称版などが隙間なく飾られています。回転幕やLED化される前はホーロー製の行先版などが列車に取り付けられていました。今では鉄道ショップやオークションなどで高値で販売されるファン垂涎のアイテムです。

客車に使われていた椅子を使うなど、至る所に鉄道愛が散りばめられています。ホウレン草やレバーよりも「鉄分多め」で、貧血気味の人も元気になるでしょう。
一人旅や少人数の宿泊に最適

二階の3室が客室です。古い家屋のため階段は急ですが、手すりが取り付けられています。男女別の相部屋が基本で、時期や利用状況によって個室利用も可能です。

客室は、かつて道内を走っていた急行にちなみ「大雪」「利尻」「狩勝」と名づけられています。窓から景色が流れていくような感覚に陥りますよ(ウソです)。

浴室はシャワーのみ利用可能。「毎日お風呂に入らないと気が済まない」という方のために、近隣の入浴施設に連れて行ってくれます。太っ腹ですね~
お〜い宴が始まるぞ!

取材当時(2025年4月末)の宿泊料などは、ご覧のとおり。2025年6月1日から一部変更されます。最新情報は公式ホームページなどで確認してください。
「朝食の提供はあるのに夕食がないぞ!」と気づいた人は鋭い。以前はみんなでジンギスカンなどを楽しんでいたそうですが、新型コロナウイルス(COVID-19)により、大勢で食事をすることが敬遠されたため、取りやめたそうです。

夕食の提供はなくなりましたが、新型コロナウイルスが5類になり、談話室での飲み会(21:00〜23:00)は復活しました。何よりもこれを望んでいたのは、鈴木さん自身です。

飲み会は皆さんで持ち寄ったお酒を楽しみます。
「お酒は旅人から旅人へという方針のもと、たくさん飲まれる方は、お酒の持参または差し入れをお願いしています。また簡単なおつまみは宿でお出ししています」

鈴木さんは「テーブルを賑やかにしたい」と、Nゲージ鉄道模型のレイアウト(ジオラマ)を作成しました。列車を撮影する人たちや、建築中の家、たこ焼き屋で買い物をする人などストーリーがあり、ずっと眺めていても飽きることがありません。今後は四季折々のレイアウトを作る予定だそう。完成が楽しみです。
旅人が踏みしめた足跡が道となる

「旅の轍」は、その日にたまたま縁があって集まった旅人同士が、共同で楽しく過ごす空間です。今宵も鈴木さんは「のみぞう」の愛称どおり、お客さんとの会話を楽しみ、お酒を飲みすぎていることでしょう。フェリーが値上がりするシーズンは本州からのライダーが少なくなるとのこと。道内のライダーはぜひ訪れてください!
住所:勇払郡安平町追分青葉1-24
電話:0145-25-3333
受付時間:8:00~23:00
https://tabi-no-wadachi.wixsite.com/wadachi

