ダートフリークのサポートライダーである馬場大貴選手を始め、近年ライダーの間でも流行っているのがSUP。スタンドアップパドルという、簡単に言うとサーフボードのようなボードを湖などに浮かべ、その上に立ってパドルで漕ぐ、というマリンスポーツなのですが、僕もこの夏、デビューしたんです。ところが関東周辺の湖や貯水池などでは広さも限られるし、水もあんまり綺麗じゃなくて……せっかくSUPを始めたんだから、透明度の高い海で大自然の魅力を満喫したい! ということで今回は北海道の奥尻島へツーリングに行き、奥尻ブルーでSUP体験をしてしまおう、という企画です。
奥尻島で気持ちいいフラットダートを発見!
奥尻島に行くための方法とか、フェリーの話は最後にするとして、いきなり到着したところから始めちゃいます! 今回の相棒はセロー250。広大な北海道の本土を旅するにはもう少し排気量やタンク容量があると嬉しいところですが、奥尻島ならちょうどいいサイズでした。ちなみに奥尻島の面積は142.97㎢。この間行った三宅島は55.44㎢なので、約3倍の大きさの島です。
SUPはもちろん楽しみなんですが、せっかくセローで来たんだから、やっぱりダートを走りたいんです。奥尻島には大きな町が2つあり、一つはフェリーターミナルがある東側の奥尻、そしてもう一つが南端の青苗です。それらの町を繋いで島をぐるりと一周する県道39号というのがメインの道路なのですが、北部にはそこから分岐して島の中心部へ入り、展望台などへと至る道がいくつかあります。
そしてその中に林道らしき道があるのを僕はすでにGoogle Mapで発見していたのです!!
ここです、林道球浦線。島の北部に球島山展望台というのがあり、舗装路だけを使ってそこまで行くことができるのですが、この林道はその中腹くらいにあります。入り口からもうダートになっているのがわかり、テンションが上がります。
綺麗すぎるフラットダート! 誰かが整備してくれたんじゃないかっていうくらいに走りやすく、道幅も広め。最高でした。
セロー250にはハンドガードもついていて林道も安心して走ることができましたよ。
品番: ZE72-6001 (ブラック)
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価格 : ¥15,048(税込)
品番: ZE72-6151 (ブラック)
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価格: ¥4,620(税込)
ジャケットは
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サイズ:M、L、XL、XXL
価格:¥24,750(税込)〜
支線もありましたが、こちらは林業専用とのことで、通行禁止と明記されていました。
そうして5kmくらいあるフラット林道を抜けて、舗装路に合流して辿り着いたのは……
展望台の駐車場。階段が……。この前日まで取材でゲレンデを歩いて登ったりしていたので足が棒のようです……。
でも見てください! この絶景!!
登ってきた甲斐があるというものです。この球島山展望台は本当にすごくて、この頂上からぐるり360度、絶景が広がっているんです。で、実は今回宿泊した宿とフェリーターミナルの間に位置するものだから、合計3回も訪れちゃいました。まず、この初日の夕方。
そして2日目の夜。実はこの日は偶然にも中秋の名月、ということでせっかくだからできるだけ高いところから最高のお月様を拝もう、と思ったのですが、雲が多くてこんな感じでした。
ですが、代わりに星はけっこうたくさん見えましたよ。誰もいない山頂で、360度絶景に囲まれながら、i-Phoneから好きな音楽を大音量で流してぼーっと星空を眺める時間はすっかり心を癒してくれました。
そして最終日、早朝に出発するフェリーに乗るために朝5時半くらい。ちょうど日の出の時間でしたので、寄ってみました。最終日ということで、奥尻での思い出がフィードバックして涙が出そうになるくらいの感動。
そして2日目の朝にも林道探しのプチ散策を行いました。今度は島の南側を走ってみます。
それらしい道に入ってみると、すぐにこんな感じで封鎖されているところが多いです。砂防ダムの開発予定地だったり、林業だったり。
それでももう一本、抜けられるフラット林道を発見しましたよ。これは島の南東部あたり。県道39号から左折して山へ入っていくところです。
やはりとっても綺麗なフラット林道。難しいところや危ないところは一切ありませんでしたが、途中で橋を渡ったり、結構なアドベンチャー感を味わうことができました。
例によって支線は通行禁止。
とまぁ林道は今回は2本でした。次は奥尻島の定番の観光名所を巡ります。
青く光るウニ!?
うにまるモニュメント
奥尻島のフェリーターミナルからすぐ南下したところにあるのが、鍋釣岩。島の観光名所と言えば、面白い形の岩というのは定番中の定番ですが、これは確かに珍しいですよね。
全景はこんな感じ。フェリーを降りてすぐ向かったら、ちょうど同じフェリーに乗っていたライダーさんとバッタリ。やっぱり、みんなとりあえずここに来るようです。
岩繋がりでもう一個。これの名前がわかったらすごいですよ。なんと「ホヤ石」。ホヤの形に似ているそうです。そもそもホヤってどんな形してましたっけ?
ちなみに島を一周する県道39号はこんな感じで超絶景がずっと続きます。たまに車線が狭くなりますが、基本はちゃんと整備されていますし、車もほとんど走っていません。海の向こうに見えるのは北海道本土ですね。
北端には「賽の河原」という名前のガレガレな海岸があります。ネーミングよ……。
西に位置する北追岬にはキャンプ場があります。誰もいない無人キャンプ場ですが、水場もトイレもあって、なんといっても静か。ここでも他のライダーさんに遭遇しました。
初日に夕日を見に寄ったんですけど、曇っていてイマイチでした。
南端にある青苗地区には「時空翔」というモニュメントがあるらしいのでやってきました。
1993年7月12日、マグニチュード7.8を記録した北海道南西沖地震において奥尻島は地震・津波・火災により198名の死者・行方不明者を出す被害を受けました。この時空翔は慰霊碑であり、自然災害の恐ろしさを未来に伝えるメッセージの役割を担っています。
そして最もインパクトがあるのがこちら。
フェリーターミナルから少し南へ行ったところ、鍋釣岩よりちょっと先にあるのが「うにまる公園」。そう、奥尻島はウニが特産で「うにまる」というマスコットキャラクターまでいるんです。そんなウニを象ったモニュメントが、この「うにまるモニュメント」。
バイクを降りて近づいてみると、こんな感じ。めちゃくちゃシュールじゃないですか? 島民の方に聞いてみても「あれねー」と苦笑される始末。しかもこのうにまるモニュメント、夜になると光るらしいんです。
そう聞いては黙っていられません!
というわけで、わざわざ夜にもう一回見にいきました!
めちゃくちゃ青い。これぞまさに奥尻ブルー……?
もちろん違います。次はいよいよSUP!
奥尻ブルーを堪能!?
SUP体験ができるゲストハウスで至福の時間を過ごす
さて、今回の宿泊先ですが、いくつか民宿を調べてみたんですけど、シーズンオフのせいもあるのか営業してないところもあって、名物のウニやアワビも時期が終わってしまい、食べられない模様。そうなると食事で宿を選ぶ理由がなくなります。
というわけで奥尻島で唯一、SUP体験ツアーを開催しているゲストハウス「imacoco」さんにお世話になることにしました。
オーナーのYUTOさんは元々札幌で高校教師をしていましたが、2018年に奥尻島に移住し、このゲストハウスを開業したとのこと。SUPだけじゃなく、カヤック体験、星空観測会やブナ原生林ガイド、テントサウナ、ファットバイクなんかも体験できる素敵なゲストハウスなんです。
到着した初日には、奥尻島の昆布で出汁をとったラーメンをいただくことができました。なんとこちら、imacocoにたまたま宿泊した料理人のお客さんが、長期で住み込み、提供してくれているというもの。2022年の春頃くらいまではやる予定だそうですよ。
そしてこの初日は到着も夕方だし、SUPはできません。7〜8月のハイシーズンであれば、サンセットSUPなども人気のアクティビティだとのことですが、9月も下旬のこの時期では水温が低くて無理、とのことでした。それにこの日は風が強かったため、昼間もできなかったそうです。天気さえ良ければできる、というものではなさそうです。
確かに、僕はこれまでSUPを3回経験してきましたが、湖でもちょっと風が出てくるとかなり怖い思いをしました。それが海で、さらに風が強かったらと思うと、命の危険も感じます。
2日目も快晴。風は……あんまり吹いてない! ……気がする!
もうね。道からちょっと海に降りて写真を撮るだけで透明度と青さがすごいんです。
とりあえず、朝イチで林道や観光地を巡ってツーリングしてきて、10時くらいにお子様を幼稚園に送って帰ってきたYUTOさんと顔を合わせると
「SUPやりましょう!」とさわやかスマイル。
やった!!
SUP体験は1時間コースと2時間コースが選べたのですが、2時間コースだと港からも出て、少し遠くまで行くそうなので、思い切って2時間コースで申し込み。
前半の1時間は他の体験者さん(若いカップルさん)もいたので、自分も感覚を取り戻すのと、海でのSUPに慣れる意味で、まったり体験。写真の奥でとても綺麗なフォームでSUPを漕いでいるのがゲストハウスのオーナー、YUTOさんです。SUPの乗り方も教えてくれますよ。
そして前半が終了していよいよ後半。一度休憩を挟んでから北方向へ向かいます。漁業の関係で、海の中でも立ち入り禁止の場所があるらしく、YUTOさんがナビをしてくれます。また、水深は十分深いのですが、たまに岩が水面付近まで隆起している場所もあり、座礁しないようにアドバイスをくれます。もし車で来ていて、自前のSUPを持ち込んでいても、YUTOさんにガイドしてもらった方が安全ですね。
こんな雰囲気のある岩場を抜けていきます。SUPはもちろんウェットスーツからマリンシューズ、ライフジャケットなど一式レンタルがありますよ。
SUPは一見簡単そうに見えるのですが、実際やってみると、ものすごく体幹を使うんです。オフロードバイクは、足でニーグリップができるので、安定しますが、無理矢理に例えるなら、ニーグリップできないスクーターにスタンディングで乗ってハンドルも握らずに凸凹の林道を走る感じでしょうか?
予測しえない波の攻撃に即座に反応し、バランスを取らないといけません。これまで湖でやっていた時には、落ちる覚悟を決めて練習したり、仲間とふざけていた時以外には落ちたことはなかったのですが、ここではマジメに、普通に乗っている時に落水してしまいました。
そして、いよいよ来ますよ奥尻ブルー
どどん!
どうですか、この透明度! 青さ!
これぞまさに楽しみにしていた奥尻ブルーです。底の方に見える黒い丸い点は、ウニ。ちょっと細長いやつはナマコだそうです。
なんと、ものすごく大きいクラゲがいました。さすがにこのサイズはYUTOさん的にも珍しかったそう。
さらに、シュノーケリングまで体験させてもらっちゃいました。実は初体験だったので、これにも大感動。
そして、こんなに穏やかに見える海なのですが、実はこの時点でけっこう風が強くなってきていました。
それも、出発したゲストハウスのある場所から、今いる場所へ向かって、風は吹いています。つまり帰る時は向かい風になるんです。
YUTOさんは近くから上陸して歩いてゲストハウスに戻る手もありますよ、と提案してくれましたが、そんな甘えた選択肢は許されません。
立つのはまず無理なレベルのかなりな向かい風に、SUPに座って全力で漕ぎ続けました。
気分はまるで「キャストアウェイ」のトム・ハンクスです。
腕も足もがパンパンになり、そろそろ限界かも、と思った頃に無事、ゲストハウスに戻ることができました〜。
なんと、ゲストハウスの目の前には温泉があるんです。片付けは全てYUTOさんに丸投げし、ウェットスーツのまま着替えだけ持って温泉へGO!
もう死んでもいい……。
でもこれだけじゃないんです。
なんとなんと、タイ古式マッサージ90分コースが待っていたんです!
施術してくださったのは実際にタイで修行を積んできたというノブさん。前夜に僕が「疲れが溜まっているのでマッサージを受けたい」と言うとYUTOさんが連絡をとってくれて、定休日だったのに特別に施術しに来てくれました!(この日、ノブさんは午前中にさっき僕が入ってた温泉でお仕事だったそう)
そんなわけで、絶景、林道、SUP、温泉、マッサージと5連コンボを決められ、しばらく社会復帰できそうにありません。
その後、ベッドに横になると、外から入ってくる心地よい風と聞こえる波の音に、一瞬で眠りに落ちてしまいましたとさ。
奥尻島へのフェリーは予約不可!?
絶対に2泊したいワケ
奥尻島の位置を詳しくご存知ない方のために説明しておきますと、北海道の南西に位置します。フェリーが到着する苫小牧からだと南西に約250km、小樽からだと南南西に約240km行ったところにある江差町からフェリーで渡ることができます。
ただこの奥尻島、ちょっと残念なのはフェリーの時間なんです。
一日一本しか出ていなくて、8/23〜11/30のシーズンは13時に江差発、奥尻に着くのは15:10。これはまだいいとして、問題は帰り。朝7時に奥尻発なんです。だからもし奥尻に一泊しかできないスケジュールの場合ですと、島に着いたらすぐに夕方、そして夜が明けたらもう帰らないといけないんです。
フェリーへのバイクの積み込みはこんな感じ。サイドスタンドとハンドルロックがない車両は運べないとのこと。片道の料金は人が2等客室で2910円、バイクが4720円(750cc未満)でした。なんとなんと、バイクの積み込みは予約が一切できないとのこと! ですが、電話で問い合わせた際には「今までキャパオーバーで積めなかったことはない」とのことでしたので、ご安心ください。
なお、フェリーの出航時間の1時間前には受付を済ませないといけません。この日は全部で3台だったかな?
そんなこんなで無事にセローをフェリーに積み込み、奥尻へと渡ります。取材日はちょうど9月のシルバーウィーク最終日。天気も気温も最高。暑すぎず、寒すぎず、とても気持ちの良い船旅でした。
船内もとても綺麗でホスピタリティに溢れています。
2等客室はこんな雑魚寝の大部屋がいくつかあります。が、女性専用ルームやキッズルームなどもあり、配慮が感じられました。気になったのは、どうも床が傾いている気がして……進行方向に頭を向けて寝転がると、頭に血が昇ってしまいました。あと、奥の窓側にしか充電用コンセントが設置されていないので、場所取りは重要です。バイクは一般の乗客の方々よりも先に乗船できるので、その点は油断さえしなければ問題ありません。
お気づきいただけただろうか……?
今回、2泊もしたのにラーメン以外の食事の写真が出てきていません……。
ゲストハウス泊ということで、例のラーメン以外は基本食事は自分で調達しなくてはいけませんでした。他に宿泊していたお客さんが作ってくれたパスタやポテト菓子などをお裾分けしてもらったりして、とても楽しかったのですが、他の食事は基本コンビニでした。奥尻町にセイコーマートが一件だけあり、今回、島での食事はほとんどそこでした。ゲストハウスからはバイクで20分くらいかかります。
海を眺めながら食べるセイコーマートの炭火焼き鳥丼、最高でした。
次回は7〜8月に来て、サンセットSUPを体験し、さらにウニやアワビを堪能したいところです!
text&photo RIDE-HUCK
RIDE-HUCK掲載日:2021年10月15日