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ライダーを選ばない万能性!新型トランザルプの本質に迫る

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昨年秋のEICMAで初公開されたホンダXL750トランザルプが日本でも発売された。ネイキッドロードスポーツのCB750ホーネットと基本が同じシャシーと共有パラツインエンジンというデュアルパーパスツーリングモデルの走りはどういうものなのか。南アルプスの周辺のストリートと林道で試乗することができたのでその感想をお伝えする。

目次

誰でも、どこでも、どんなときも、
尻込みせずに走り抜けられる万能性が魅力

これは長く付き合えるバイクだ!

  XL750トランザルプは乗りはじめからすぐになじんで自分のバイクのようにあつかえた。そう感じさせている理由はなんだろう。ひとつはエンジンの味付け。新開発された水冷4ストロークOHC4バルブ2気筒エンジンは、日本ではまだ発売がアナウンスされていないネイキッドスポーツ、CB750ホーネットと共有でスペックを見るとボア87mm、ストローク63.5mmのショートストローク。一般的に高回転向きといわれているから、ホーネットには合うかもしれないがデュアルパーパスツーリングモデルのトランザルプではどうなんだろう? という思いを抱いて乗りこんだら予想に反した。低回転域からトルクをしっかり感じられ、それが高回転域まで息が長く続くトルク感。

 どこからか急に盛り上がって加速するようなものではなく、回転の上昇と比例するようにスピードが伸びる。現代パラツインエンジンのトレンドである270度クランクを採用し、これがアクセルを開けていくのをためらわない特性で自分の進みたいように進める感じ。スタートしてから、歩くような速度で右左折してクルマの後ろをついていき、道間違いでUターンをして、山道に入ってちょっと飛ばす。どこでも右手の動き対して従順で、レスポンシプブルに反応するから困らない。いろいろな情報を集めてコンピューターが点火タイミングや燃料供給量とコントロールする電子制御スロットルは、もはや珍しいものではないけれど、その仕上げ方が丁寧というか、よく作りこまれていると思うほどフレキシブルで、上質で自然なフィーリング。270度クランクではどうしても出てくる振動には2本のバランサーシャフトを入れて対処している。

 容赦のない指摘をするならば、血湧き肉躍るようなドラマチックな性格じゃない。だけど、これこそ新型トランザルプの本質なのである。それに向いたベクトルは明確。開発陣がこだわったという208kgの車両重量は、操作していてやっぱり軽い。1000ccオーバーのアドベンチャーの中には身長170cmと大柄ではない私だと乗る場所によってはおっくうになることがある。人間には長く乗っていれば慣れるという便利な性質があるけれど、それでも大きさと重さという事実は消えない。この軽さなら、どこだって積極的になれてちょうどいい。座面の高さが850mmのシートは、足が外に開きにくい形状の良さも手伝って、両足でも力が込められるくらい届き、片足ステップなら全く問題のない足つき。移動するストレスが小さい。少なくとも手に余るとは思わなかった。

 フロントに21インチ、リアに18インチというオフロードバイクでは定番のサイズとは思えないほど、舗装されたワインディングで旋回性はいい。ブレーキはよくきいて、そのままスムーズに倒れ込みコーナーへ侵入、そこからフロントタイヤが大回りせずにリアと一体感を持ったまま向きが変わる。もちろん17インチのロードスポーツまではいかないけれど、つづら折りなす道でのフットワークはデュアルパーパスらしからぬ軽さ。開発がスタートした当初はバリバリのオフ車にする話があったそうだ。そこから開発スタッフは討論を重ね日常での本当の使い勝手を考えて、オフロード走行性能を上げたCRF750Lではなく、デュアルパーパースとしてオンもオフも使えるこのXL750になったそうだ。乗ってみて納得できた。ちょっと頑張ってスピードを出して飛ばしてみても、足廻りも車体もしなやかでありながら、へこたれずに、履いていたMETZELER KAROO STREETはトレッドが柔らかくリーンしたときの接地面積が広くグリップしている感覚をつかみやすい。適度な剛性もあり上手にトランザルプとチューニングされている。

 軸足をダートに置きすぎないといっても、21インチ、18インチを採用しているなどきっぱり捨ててはいない。初めての林道に分け入っても、力量不足で困るシーンはなかった。これよりもダートにこだわったライバルみたいに振り回して乗るのが得意とは言えないが、そこそこのペースで走破できる実力はある。プリセットのライディングモードは、『SPORT』『STANDARD』『RAIN』『GRAVEL』の4つ。その中から『GRAVEL』を選択するとABSの介入が小さく、オフロードでの姿勢変化や難所で欲しい低回転域にフォーカスした心持ち。HSTC(Honda セレクタブル トルク コントロール)の介入も大きいので、わざとアクセルをワイドオープンにしても、少しタイヤが空転したと思ったらすぐに滑りをおさえて平常運転に。より滑りやすい土の上で止まる、曲がる、走るがやりやすくなる。

そのオフロード向けタイヤ外径と前が200mmと後ろが190mmのホイールトラベルを持ちながら、オフロードでスポーツライドさせて楽しませようとするものとはちょっと違う。安全に確実に通り抜けられるよう気を配った設定だ。最低地上高も210mmあるから、一般的な林道にある段差やうねりごときで立ち往生することはない。もっとオフロードが楽しみたいなら、ライディングモードを任意に設定できる『USER』にして、ABSをオフ、トルクコントロールをオフにするといい。オフロード走行はライダーの体格や技量の割合で所感は変わってくる。私の腕では、どうしてもオンロードで気持ちのよかったフロントの回頭性の良さと引き換えに、ダートではフロントに重い感じが残るのと、体をつかってフロントフォークを縮めたくてもポジション的にやりにくいから、フロントタイヤが滑って横に逃げるのを抑えにくい。しかしながら、オフロードがダメと述べたいのではない。もっとオフロードに特化したモデルと比較しての話。林道に入ることをためらわない走りは持っている。

思い出してみれば1987年に発売された、初代トランザルプ600V、その後に発売されたトランザルプ400Vもそうだった。どこでも走れて、どんなときも使いやすい性能。だから実用性を重視する欧州でヒットして600の次に国内未導入の650、700と進化しながら11年ほど前までトランザルプは彼の地で生き延びたゆえんだ。昔の日本ではわかりにくかったろうが、アドベンチャーモデルが普通になった今ならわかるだろう。強い個性はないけれど、優れた万能性が大きな魅力。高速移動で余裕のあるエンジンパワー。左右42度、最小回転半径2.6mmとハンドルが大きく切れて、扱いに苦労しないエンジン特性もあって、好奇心のままに初めて通る狭い道や、市街地の小道にひょいひょいっと入っていける。行き止まりになっても気にしない。XL750トランザルプについて口さがない言い方をすれば“普通”だ。だがその“普通”は突出したところがないバランスの良さがもたらすインプレッション。行動範囲を楽に、簡単に広げてくれる長く付き合えそうなバイクだ、というので感想を締めくくろう。

HONDA XL750 TRANSALP 諸元

主要諸元(海外仕様)■水冷4ストロークOHC(ユニカム)直列2気筒 754cc 67kW[91PS]/9,500rpm 75N・m[7.6kgf・m]/7,250rpm  6段リターン変速 ■全長 2325mm 全幅 840mm 全高 1,450mm 軸距 1,560mm シート高 850mm 車両重量208㎏ ■ 燃料タンク容量16ℓ ■タイヤ F=90/90-21 M/C 54H R=150/70R18 M/C 70H メーカー希望小売価格 ¥1,265,000円(税込)

CB750ホーネットと共有の水冷4ストローク直列2気筒エンジンは270°クランク。2軸のバランサーを入れて振動に対処。CRF450RやCRF1100Lにも採用されたユニカムバルブトレインを採用。軽量にこだわった新エンジンのシリンダー内壁はNi-Sicメッキ。エアクリーナーは新気を螺旋形状に旋回させながら入れるようにして、容量の大きなエアクリーナーと同じ効果を得ている。軽くするためにACGカバーがウォーターポンプの役割を兼ねている。アシスト&スリッパークラッチ付。

灯火類はLED。上下調整のできない固定式スクリーンは角度などで風の巻き込みを防ぐ工夫を。飛ばしても不快な負圧なども感じず。メーカーアクセサリーにはもっと面積の大きなハイスクリーンや、整流するディフレクターもある。 初代トランザルプを連想させるカラーグラフィック。しかし国内ではこれしかカラーバリエーションがないのが少し残念。急ブレーキでハザードが点滅するエマージェンシーストップシグナル機能を持つ。

リアサスペンションはボトムリンク式のプロリンク。リアのアクスルトラベル190mm。リアショックは7段階のプリロード調整が可能。アルミ押出材を加工したスイングアームはピボット部に一体型のダイキャスト部材を使う。試乗車にはオプションのクイックシフター(税込2万4千200円)が装着されていた。ペグはラバーを取るとオフロード向けのギザギザになる。標準タイヤはMETZELER KAROO STREET。

グラブレールを兼ねた大きめのキャリアが標準。メーカー純正のアクセサリーに右側26Lほど、左側33Lほどのパニアケースと3種類のトップケースがある。シート高は850mm。ワンピースのシートはライダーが前後に動きやすい形状をしている。開発責任者はシートは下げる議論は出てもこれより上げる議論は出てこなかったと話していた。

メーターは5インチTFTディスプレイ。バックライトは周囲の明るさによって自動調光する。画面表示のデザインは4種類✕白か黒を選べ、好きなのを選択できる。ハンドルはテーパーバー。スポーツグリップヒーターはオプション。

フレームはアンダーフレームのないスチール製ダイヤモンドタイプ。主要部分をCB750ホーネットと共有しながら独自の剛性マネイジメントがされている。キャスター角は27°、トレール量は111mm。ハンドル切れ角は左右42度で2.6mの最小回転半径。フロントカウルから面が繋がり一体感のある燃料タンクの容量は16L。ちなみにリーンアングルは40.5度。

フロントブレーキはφ310mmローターのダブルディスク。異径2ポッドキャリパーと組み合わせる。倒立フォークはSHOWA(日立Astemo株式会社)製SFF-CA。左右で別の機能をもたせたセパレートファンクションのカートリッジタイプ。トップブリッジ上部にスプリングアジャスターがある。それをクランプするトップブリッジはアルミ鋳造、アンダーブラケットはより剛性の高い鍛造。

ライダーの身長は170cm、体重は66kg。

純正アクセサリー装着車

歴代のトランザルプをチェック!

1987年 トランザルプ600V 欧州輸出名 XL600V TRANSALP

日本では300台限定で発売された初代トランザルプ。XRV650アフリカツインより先に登場をしていた。パリ・ダカールラリー用ワークスレーサーNXR750の技術をフィードバックして開発とホンダは説明した。ワイヤスポークホイールはフロント21インチ、リア17インチ。80年代のNVシリーズにルーツを持つ水冷52°度Vツイン。吸気2バルブ、排気1バルブの3バルブ583cc。今回日本で発売されたXL750トランザルプのカラーグラフィックはこれをオマージュ。車名の由来はTRANS+ALPSでTRANSALP。

1991年 XL600V TRANSALP

1991年モデルからドラムだったリアブレーキがディスクに変わり、1998年からフロントがダブルディスクに。1992年に日本ではトランザルプ400Vを発売した。日本試乗で600は限定発売の初代だけだったが、欧州での販売は好調でマイナーチェンジをしながら息の長いモデルになった。

2000年 XL650V TRANSALP

欧州を中心に根強い売れ続け、二代目にモデルチェンジ。日本のマーケットでは正規販売されなかった。排出ガス規制に適合させながら、それで失ったトルクを補填するようにSOHC3バルブVツインはボアを拡大して排気量を647ccへとアップ。リアタイヤが130/80-17サイズから120/90-17に変更。最大出力は55 hp (40,5 kW) / 7,500 rpmmで最大トルクは56 Nm (5,7 kg-m) / 5,500 rpm。フロントフォークのホイールトラベルは200mm→220mmに。

2008年 XL700V TRANSALP

フロントタイヤが初期モデルから貫いた21インチからよりロードでの使い勝手を考慮した19インチ外径へと変更されたのが大きい。フロントのホイールトラベルは177mmと短くなる。リアタイヤは130/80-17サイズに戻った。Vツインエンジンのストロークは初代から変わらず66mmで、ボアを75→79mmと拡大して排気量は680ccに。キャブレターではなくPGM-FIに。ABSを装備。

文:濱矢文夫、写真:増井貴光

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