オートバイで排気量750cc前後のミドルクラス。マニアックな排気量と捉えられがちだが、実は非常に使い勝手の良い排気量のクラスなのだ。
それはパワーと扱いやすさのバランスが絶妙であり、街乗りからツーリングまで幅広く対応できるから。軽量で取り回しも良好。燃費も比較的優れており、維持費も抑えられる。
多用途に対応でき、実用性とスポーティな走行の両方を楽しめるから、初心者からベテランまで使い勝手の良いクラスなのだ。
そんなミドルクラスの中でモトメガネ編集部がチョイスしたのは、ホンダ CBR650R、スズキ GSX-8R、ヤマハ YZF-R7の3台。モトメガネ編集部の3名がそれぞれの視点からチェック!
本記事である前半では足着きや取り回し、各部の比較を、別途後半では実際の試乗した感想をお伝えしよう。
取り回しや足着きで気になる3台のスペックをチェック!
様々なweb媒体や雑誌でも紹介されている3台のざっくりとした特徴は以下の通り。
基本情報を確認したうえで、実際のところどうなのか検証しよう。
CBR650R
CBR650Rは、スポーツ走行を楽しみたいが、日常的な使い勝手も重視するライダーがターゲット。前傾姿勢ながらもツーリングでの快適さも考慮されたライディングポジションが特徴であり、街乗りから高速道路でのクルージング、ワインディングまで幅広いシチュエーションに対応できるよう設計されている。扱いやすさとパワーを両立させたモデルで、スポーツとツーリングのバランスを求めるライダーに最適である。
GSX-8R
GSX-8Rは、初心者から中級者までのライダーをターゲットにし、扱いやすさとスポーティな走行性能の両立を図っている。スズキはこのモデルを、街乗りや通勤などの実用性も重視しつつ、ツーリングやワインディングでの楽しさを提供するバイクとして開発している。軽量な車体と適度なパワーにより、日常の走行から週末のロングツーリングまで幅広い用途に対応可能で、初心者でも扱いやすいことが特徴だ。
YZF-R7
YZF-R7は、よりサーキットやワインディングロードでのスポーツ走行を重視したライダー向けに開発されている。前傾のきついライディングポジションや軽量設計が特徴で、スポーティな走行感覚を求めるライダーに向いている。主なシチュエーションは、山道やサーキットでの攻めた走りに対応できるバイクとして設計されており、日常の街乗りよりも、走行パフォーマンスを最大限に発揮するシーンに重点を置いている。
CB650R | GSX-8R | YZF-R7 | |
エンジン種類 | 水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒 | 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒 | 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒 |
総排気量 | 648 | 775 | 688 |
全長×全幅×全高 (mm) | 2,120×750×1,145 | 2,115×770×1,135 | 2,070×705×1,160 |
最低地上高 (mm) | 130 | 145 | 135 |
シート高 (mm) | 810 | 810 | 835 |
最小回転半径(m) | 3.0 | 3.2 | NA |
車両重量 (kg) | 209 | 205 | 188 |
スペックではわからないバイクの取り回しの違い
取り回しではサイドスタンドが掛かった状態から車両を直立させるまでの動作と、車両の押し引きをチェックした。
単純に車両重量が軽ければ取り回しやすい、という訳ではない。車両の重心バランス、ハンドルの形状、サイドスタンドによる車体の傾きの違いが、取り回しでの善し悪しに影響してくるのだ。
今回の3台の中で最も車両重量が軽かったのはYZF-R7の188kg。
他の車両よりも20kg近く軽いこともあり、3名の感想でも一番軽く感じたのはYZF-R7だった。
次に軽く感じたのは、一番車両重量があったCBR650Rだ。なんと3名ともこの感想は共通していた。
車両の重心位置もあるが、サイドスタンドの角度が他の2台よりも立ち気味であったということも影響している。サイドスタンドの角度が立ち気味とはいえ、それで不安定になるほどではなかったこともお伝えしておきたい。
最後に最も「重い」と感じたのはGSX-8Rだ。サイドスタンドの角度が他の2台よりも寝ぎみということもあるが、ハンドル位置が高いということも理由にあげられる。車両を起こす時にハンドルが高いため、腕力のみで車体を起こしがちになるためだ。そんな場合は、車両のタンクに腰が当たるように立ち、腰でタンクを軽く押しつつハンドルを持って車両を立てると起こしやすい。サイドスタンドから起こすときに重く感じる要因となったハンドルだが、実際に押し引きする場面では、そのハンドルの高さが取り回しのしやすさにもつながっていた。
重いといっても、車両重量は200kg前後。昔のナナハンに比べたら遙かに軽い。
400ccクラスがちょっと重くなった程度なので、どの車両も取り回しで苦労することはさほどないはずだ。
スペック上のシート高と、実際の足着きの違いは???
まずは、身長163cm、体重60kgのテスターが跨がっている状態を見てみよう。
続いて身長173cm、体重65kgのテスターの場合。
CBR650RとGSX-8Rのシート高は共に810mm。YZF-R7は835mm。
数値だけを見ればCBR650RとGSX-8Rの足着きが同じぐらいに良く、YZF-R7はそれよりも悪いだろう、という印象を受け得るが、実際に跨がった感想はテスターによってまちまちだったのだ。
具体的には、シート高が同じはずのCBR650RとGSX-8Rで、3名の中で最も身長の高い173cmのテスターはCBR650Rを最も足着きが良く感じ、最も小柄な身長163cmのテスターはシート周りがシェイプされているGSX-8Rが最も足着きが良く感じた。
YZF-R7に至っては、173cmのテスターはGSX-8Rと同じぐらいの足着きで少しかかとが浮くぐらい。身長163cmのテスターは少し不安が残るつま先立ちの状態。
足着きが身長によって感じ方が変わるのは、シート高の数値だけでなくシート形状、フレームの幅やカウルの凹凸、ハンドルの位置になどよって、足を下ろす位置や、シートへの体重の掛かり方が変わるから。
また身長以外にも、足の太さや手足の長さによっても、足着きは大きく変わる。
シート高はあくまでも参考数値程度に考えておいた方が良いというわけだ。
面白いのは足着きを客観的にみたらさほど良くなくても、本人にしたら安心感が高い場合がある。
これは、足に体重を預けやすく、上体に無理なチカラが入ってない場合が多い。
163cmのテスターが、GSX-8Rの足着きが見た目にはYZF-R7と同じような感じでも、前車の足着きを良く感じたのはそのような要因もある。
前回の250ccクラスの比較でも述べたが、足着きは実車に跨がって確認することを強くオススメしたい。
タンデムシートの乗り心地
タンデムシートの乗り心地は見た目からも想像できるが、形状の似ているCBR650R、GSX-8Rは同じような座り心地。対して、YZF-R7はタンデムシートの面積が小さく、あくまでも緊急用と考えた方が良いだろう。
3台に共通しているのは、一人で走りを楽しむことを念頭に考えているので、タンデムでツーリングに行くとなると乗り慣れている人を後ろに乗せる以外は、結構大変だと言うこと。
むしろタンデムシートは荷物を載せるスペースと割り切る方が無難かもしれない。
荷物の積載
CBR650RとGSX-8Rは、タンデムシートを外すとその裏にナイロン製の荷掛け用ループが設けられている。このループとフレームやタンデムステップのステーなどを使えば、荷物の大きさに応じて最適なテンションを掛けて固定できる。
一方、YZF-R7はそのようなループやフックはないため、積載には少々気を使う。ツーリングなら休憩時や信号待ちで荷物がしっかりと固定されているか都度チェックしておいた方が良い。
CBR650Rの積載
GSX-8Rの積載
YZF-R7の積載
取り回し、足着き、荷物の積載ではどれがよい?
今回の3台比較では、取り回し、足着き、荷物の積載といった日常での使い勝手を比較した。
そのため、日常使いを想定して作られているCBR650Rがもっとも評価は高くなった。
一方でスポーツ走行に着目して作られているYZF-R7にとっては、やや不利な比較となった。
ミドルクラスの車両は、400ccクラスの車両を苦もなく取り回せるのなら、まず問題なく取り回せるはず。
ただし足着きに関しては、どの車両にも共通していえることだが、ユーザーの体型に大きく左右される。
実際に車両を見比べて、ユーザー本人で確認してほしい。
後半の試乗比較も近日中に公開予定!
お楽しみに!!