スタッドレスタイヤは、雪国に住む人やウインタースポーツを楽しむ人が使うものだと思われがちだ。しかし、冬の道路で注意したいのは積雪だけではなく、早朝や夜間の冷え込みによって、雪の少ない地域でも路面が凍結することがある。
また、冬用タイヤを装着している間、走るのは雪道ばかりではない。通勤や買い物では乾いた舗装路を走り、スキー場へ向かう際にも長い高速道路を利用する。スタッドレスタイヤを選ぶなら、雪上・氷上性能に加えて、普段の走りや快適性にも目を向けておきたい。
さらに、タイヤのサイズだけでなく、車両重量や積載量、EV特有の静粛性など、車種によって確認したいポイントも異なる。
そこで今回は、冬のタイヤ選びで見落としがちな注意点を整理しながら、90年以上にわたり冬用タイヤの開発を続けてきたフィンランドの「Nokian Tyres(ノキアンタイヤ)」の特徴を紹介する。
雪が降らなくても、冬の道路には注意が必要
夏タイヤのゴムは低温になると硬くなる傾向があり、タイヤの種類や路面状態によってはグリップに影響する。これに対してスタッドレスタイヤは、寒い時期にも柔軟性を保ちやすいゴムや細かな溝を使い、雪道や凍結路でグリップを確保できるように作られている。ただし、気温が低いだけで、乾いた舗装路でも必ずスタッドレスの制動距離が短くなるわけではない。

特に注意したいのは、雪が積もっていなくても発生する路面凍結だ。日中に濡れた道路が夜間の冷え込みで凍り、橋の上や日陰では周囲と路面状態が異なる場合がある。早朝や深夜に運転する人、寒冷地へ出かける機会がある人なら、冬用タイヤの装着を検討しておきたい。

一方、積雪や凍結の可能性がほとんどなく、乾いた舗装路しか走らない場合には、必ずしもスタッドレスが必要というわけではない。
同じタイヤサイズなら大丈夫? 意外と見落としがちな冬タイヤ選び
スタッドレスタイヤの購入時に、まず確認するのはタイヤサイズと雪上・氷上性能だろう。しかし、サイズ表記が同じでも荷重能力(ロードインデックス)や規格が異なる場合があり、車両に必要な条件を満たしているか確認する必要がある。
例えば、車重の大きいSUVではタイヤにかかる負荷や耐久性にも目を向けたい。キャンプやウインタースポーツで荷物を多く積む場合は、なおさらだ。
EVでは大容量バッテリーによって車両重量が大きくなるモデルがあり、発進時から発生する大きなトルクもタイヤに負荷をかける。また、エンジン音がないためロードノイズが目立ちやすく、転がり抵抗は航続距離にも関係する。
ハイエースやキャラバンなどのバンで特に注意したいのが荷重能力だ。乗員や荷物を多く積むことを前提とした車両では、指定されたロードインデックスや規格を満たすタイヤが必要となる。
つまり、スタッドレスタイヤは雪道での性能とサイズだけで選ぶのではなく、クルマの特徴や使い方まで含めて考えることが重要なのだ。

世界初の冬用タイヤを開発した「ノキアンタイヤ」

そんな冬タイヤ選びで注目したいのが、フィンランド生まれの「Nokian Tyres(ノキアンタイヤ)」だ。


そのルーツは1898年に設立されたゴム工場にさかのぼり、1934年にはトラック向けとして世界初の冬用タイヤ「Kelirengas(ケリレンガス)」を開発。1936年には乗用車向けの「Hakkapeliitta」が登場し、厳しい冬の路面に向き合いながら90年以上にわたって技術を磨いてきた。
フィンランド北部のイヴァロに冬用タイヤのテスト施設を構えるほか、乗用車向けのHAKKAPELIITTA R5(ハッカペリッタ R5)の開発では本国スタッフが北海道・旭川でもテストを実施。北欧とは雪質や気温の変化が異なる日本の冬道も、開発の段階で確かめられている。

ノキアンタイヤでは乗用車向けのスタッドレスをはじめ、SUV、EV、バンの使用条件を考えたモデルも展開。これまで説明した車種ごとの違いにも対応するラインアップがそろっている。
氷上の工夫と舗装路での実力を備えた「HAKKAPELIITTA R5」

乗用車向けの「HAKKAPELIITTA R5(ハッカペリッタ R5)」は、氷雪路でのグリップと日常の舗装路での扱いやすさを考えたスタッドレスタイヤだ。トレッドパターンだけでなく、ゴムに配合する素材にも独自の工夫が盛り込まれている。その特徴を紹介していこう。
氷を捉える結晶と、曲がる際の安定性を考えたブロック形状
「アークティックグリップクリスタル」は、トレッドゴムに配合した微細な結晶を氷上でのグリップエッジとして活用する技術。ゴムが摩耗すると内部から新たな結晶が現れる仕組みで、使い続けることも考慮している。

さらに、トレッド中央からショルダーにかけてブロックの配置を工夫した「ダブルブロックグリップ」を採用し、滑りやすい路面での制動やコーナリング時の安定性を追求。走行音を抑える「サイレントタッチトレッドデザイン」も取り入れ、普段の乗り心地にも配慮している。

第三者の比較試験でも評価された舗装路でのブレーキ性能
タイヤの性能を比較するうえで参考にしたいのが、実車によるテスト結果だ。
2006年に設立された「Tyre Reviews(タイヤレビューズ)」は、タイヤの性能評価を専門とする情報サイト。テストコースでブレーキ性能やハンドリング、雪上・氷上性能などを独自に検証しており、その結果は世界の大手タイヤメーカーの公式資料にも引用されている。

このTyre Reviewsが2025年に実施した北欧向けスタッドレスタイヤ5製品の比較試験では、205/55 R16サイズをVWゴルフに装着して性能を検証。その結果、HAKKAPELIITTA R5はドライ路面とウェット路面の両方で、5製品中最短の制動距離を記録した。
ドライ路面では100km/hから5km/hまでの制動で45.3m、ウェット路面では80km/hから5km/hまでで37.7mを記録。総合順位は3位で、氷上性能では他製品が上回る項目もあったものの、雪道までの舗装路を長く走るドライバーにとっては興味深い結果といえる。
なお、この結果は試験に使用したタイヤサイズと条件によるもので、夏タイヤとの優劣を示すものではない。

車両ごとの条件を考えたノキアンタイヤの専用モデル
乗用車向けR5に加えて、ノキアンタイヤにはSUV、EV、バンそれぞれの使用条件を考えたモデルも用意されている。いずれも冬のグリップ性能を重視しながら、車両の特徴に合わせた技術が盛り込まれている。
車重や路面からの衝撃も考えたいSUVには「R5 SUV」

「HAKKAPELIITTA R5 SUV」は、重量のあるSUVやクロスオーバーの使用条件を考えたモデル。サイドウォールのゴムに高強度のアラミド繊維を配合し、外部からの衝撃や切り傷に対する耐性を高めている。
舗装路だけでなく、キャンプ場などで荒れた路面を走る機会もあるSUVにとって、氷雪路でのグリップ性能に加えて耐久性にも配慮されている点は魅力だ。

重量だけでなく静粛性や電費も考えたいEVには「R5 EV」

「HAKKAPELIITTA R5 EV」は、電動車の重量や駆動トルクに対応する構造に加え、静粛性と低転がり抵抗にも力を入れたモデルだ。
特徴的なのが、タイヤの内側に吸音フォームを配置する「SilentDrive」。走行時に発生するタイヤ内部の空洞共鳴音を抑えることで、静かな車内を保ちやすくしている。また、転がり抵抗の低減にも配慮されており、冬場の航続距離が気になるEVオーナーにとっても注目したい技術だ。

積載時の荷重能力を見落としたくないバンには「CR4」

バン向けの「HAKKAPELIITTA CR4」は、乗員や荷物を積んだ状態での走行を考えたスタッドレスタイヤ。商用車向けのC規格に対応するサイズが用意され、高い負荷に対応する骨格構造とアラミド繊維を採用したサイドウォールによって耐久性にも配慮している。
仕事で使用する人はもちろん、車中泊やウインタースポーツなどで荷物を多く積む人にも検討してほしいモデルだ。ただし、C規格であればどのバンにも装着できるわけではないため、車両が指定するサイズや荷重能力との適合確認は欠かせない。


残り溝が分かりやすい、実用的な工夫も
R5のトレッド面には「8・6・4」の数字が刻まれ、摩耗に伴って順番に消えていく。残り溝のおおよその深さを目視でき、雪の結晶マークも冬用タイヤとしての状態を知る目安になる。

ただし、使用可否は数字だけでなく、プラットフォームの露出やゴムの劣化、傷なども含めて確認する必要がある。
自分のクルマと冬の使い方に合う一本を選ぼう
スタッドレスタイヤ選びでは、雪上・氷上性能はもちろん、普段どのような道を走るか、クルマにどんな負荷がかかるかまで考えておきたい。
そして実際の購入時には、車種・年式・グレードごとの指定サイズやロードインデックスなどを販売店で確認しておこう。
冬用タイヤの歴史を切り開き、氷雪路への技術に加えて普段の舗装路や車種ごとの使い方にも目を向けてきたノキアンタイヤ。次のスタッドレスタイヤ購入や買い替えでは、愛車に合った「HAKKAPELIITTA」を候補に加えてみてはいかがだろうか。
(編集協力:株式会社阿部商会)








