オートバイに乗るうえで欠かすことのできないヘルメット。もちろん第一の役割はライダーの頭部を守ることだが、バイクやウエアにこだわる人にとっては、ライディングスタイル全体の印象を大きく左右するアイテムでもある。
とくにジェットヘルメットは構造がシンプルなだけに、帽体の大きさや丸み、被ったときのシルエットによって見た目の印象が大きく変わる。そんなジェットヘルメットの中で、長年にわたり独自の存在感を放っているのがアメリカ生まれのブランド「BUCO(ブコ)」だ。

一見すると昔ながらのオーソドックスなジェットヘルメット。しかし、実際に被った姿を見ると、その違いがよく分かる。コンパクトにまとめられた帽体や、側頭部から首元へすっきりとつながるラインなど、シンプルな形の中にBUCOならではのこだわりが詰め込まれている。
今回はBABY BUCOの3モデルを通して、そのスタイリングの魅力を見ていこう。
TEXT:桜井つぐみ PHOTO:丸山淳大

アメリカのモーターサイクルカルチャーとともに歩んだBUCO

BUCOの歴史は1933年、アメリカ・ミシガン州デトロイトから始まった。当初はウインドシールドやマフラーなどのオートバイ用品を扱っていたが、戦後になるとライダースジャケットやブーツ、ヘルメットなどへとラインアップを拡大。アメリカのモーターサイクルカルチャーを支えるブランドのひとつとして知られるようになった。

その後、一度は市場から姿を消したBUCOだったが、1990年代後半に日本で復活を果たす。その中心となったのが、トイズマッコイ創業者であり現在はヒロシ オカモト(株)代表のアメリカンヴィンテージカルチャーに精通する岡本博氏だ。

ここで重要なのは、単純に古いBUCOの外観をコピーしたわけではないこと。ヴィンテージBUCOが持っていた小ぶりな帽体や独特のシルエットをできる限り残しながら、日本の安全基準を満たす現代のヘルメットとして作り直した。岡本氏のBUCO復活への並並ならぬこだわりはこちらの記事でも紹介しているので、是非ともチェックしてほしい。

つまり現在のBUCOは、単なる「ヴィンテージ風」のヘルメットではない。かつてのBUCOが持っていた格好良さを受け継ぎながら、現在も実際にバイクで使用できる製品として再構築されているのである。
現代のジェットヘルメットとは少し違う、BUCOの考え方
現在のヘルメットは、安全性能の向上とともにベンチレーションやシールド、インカムへの対応など、さまざまな機能を取り込みながら進化している。そうした機能性もヘルメットを選ぶうえで重要なポイントだ。

一方、BUCOにはそれとは少し違った方向のこだわりが感じられる。新しい機能を外観に加えていくというよりも、昔から受け継がれてきたシンプルな輪郭をできるだけ崩さず、被ったときに格好よく見えることを大切にしているからだ。

その違いが分かりやすいのが帽体のシルエット。側頭部が必要以上に膨らまず、こめかみ付近から首元へ自然につながることで、ヘルメットだけが大きく浮いて見えにくい。単体で眺めるだけでなく、ライダーが実際に被り、ジャケットを着てバイクに跨ったときに全体のバランスが整うように作られている。

BUCOの魅力は、ヘルメットそのものだけを格好よく見せることではない。被ったライダーを含めた姿を、すっきりとスタイリッシュに見せてくれることにある。
3つのBABY BUCOで見る、シンプルな造形の奥深さ
装飾がないからこそ、形の良さが分かる
「BABY BUCO PLAIN MODEL」

BUCOらしい造形をもっとも分かりやすく感じられるのが、グラフィックを持たないプレーンモデルだ。装飾がないぶん、帽体の丸みや大きさ、被ったときのシルエットそのものに目が向く。
丸みのあるジェットヘルメットではあるものの、単純な半球形ではない。前頭部から後頭部へ続く滑らかな曲面と、耳まわりの膨らみを抑えたラインによって、全体がコンパクトにまとまって見える。

帽体を一周する太めのトリムもBUCOを特徴づける部分だ。縁を保護するためのパーツでありながら、輪郭をはっきりと見せるデザイン上のアクセントにもなっている。

ヘルメットだけを見ると小さな違いかもしれないが、実際に被ってみると頭部から肩にかけてのラインがすっきりとつながる。装飾に頼らなくても存在感があるのは、こうした基本となる形がしっかり作り込まれているからだ。
プレーンモデルは合わせるバイクやウエアを選ばないのも魅力。クラシックハーレーや旧車との相性の良さは言うまでもないが、ホンダ Rebelのような現代のクルーザーモデルにもすんなりとはまる。ウエアとの相性もよくヴィンテージスタイルはもちろん、シンプルな今どきのライディングウエアに合わせても違和感なく馴染んでくれる。

一本のストライプで表情が変わる
「BABY BUCO CENTER STRIPE 」

同じBABY BUCOでも、センターに一本のストライプが入るだけで印象は大きく変化する。
頭頂部から後頭部へ伸びるストライプは、BUCOのコンパクトな帽体を前後方向へ長く見せ、プレーンモデルよりもシャープな印象を与えてくれる。グラフィック自体は非常にシンプルだが、ベースとなる帽体の形が整っているからこそ、一本のラインが効果的に見える。

マットブラックの塗装も、このモデルの雰囲気を作る重要なポイント。光沢を抑えた表面によって帽体の曲面が自然に浮かび上がり、金属パーツやBUCOのロゴもさりげないアクセントとして映える。


派手な装飾を使うのではなく、形と色、そして一本のストライプだけで全体をまとめている。シンプルでありながらしっかり存在感がある、BUCOらしいスタイルのひとつだ。


アメリカンカルチャーを色濃く感じさせる
「BABY BUCO Godspeed!」

プレーン、センターストライプとは一転して、強い個性を持っているのがGodspeed!SILVER FLAKEだ。

光を受けるたびに表情を変えるシルバーフレークに、アシンメトリーのグラフィック、クロームのトリムを組み合わせたデザインは、1960〜70年代のアメリカンモーターサイクルカルチャーを感じさせる。


これだけ装飾の強いモデルでありながら、被ったときにヘルメットだけが必要以上に主張しないところも面白い。ベースとなっているBABY BUCOの帽体がコンパクトにまとめられているため、大胆なグラフィックを使ってもライダー全体とのバランスが崩れにくい。

星条旗とともに描かれた「Godspeed!」は、旅に出る人の無事を願う言葉。ライダーを守るヘルメットに使われていることも、このモデルの世界観によく似合っている。

シンプルに見えるからこそ、細かな作りが効いてくる
一見すると、BUCOは昔ながらのシンプルなジェットヘルメットだ。けれど、被った姿を見ると、その違いがよく分かる。

コンパクトな帽体に、側頭部の膨らみを抑えたすっきりとしたライン。そこに太めのトリムや塗装、ストライプやグラフィックが加わることで、BUCOならではのシルエットが生まれている。

派手な機能や装飾で存在感を出すのではなく、細かな部分を整えることで格好よく見せる。シンプルだからこそ、帽体の形や仕上げの違いがそのまま全体の印象へとつながっている。

シンプルだけに軽いかぶり心地も魅力

BUCOを選ぶ一番の理由は、かつてのBUCOが持っていたシンプルで美しいシルエットを、現在も実際に使えるヘルメットとして楽しめることにある。この美しいシルエットへのこだわりにクローズアップされるため、かぶり心地について語られることは少ないが、実は軽く快適なのだ。

そもそも現在販売されているヘルメットとして作り込まれているため、肌への当たりも柔らかい内装とシンプルゆえ軽いかぶり心地により、長時間のライディングにも適している。

もっとも、フィット感については頭の形やサイズによって感じ方が異なるため、購入時には実際に試着して確認したいところだ。
BUCOが格好よく見せるのは、ヘルメットだけではない
ヘルメットは単体で眺めるだけのものではなく、実際にライダーが被り、バイクに跨ったときに初めてそのスタイルが完成する。

BUCOが長く支持され続けている理由も、単に歴史あるブランドだからというだけではないだろう。昔から受け継がれてきたコンパクトなシルエットを現在の製品として成立させながら、さまざまなバイクやウエアと合わせたときにも、ライダー全体をすっきりと見せてくれる。
プレーン、センターストライプ、Godspeed!とデザインの方向性は異なるものの、その基本にあるのは同じBABY BUCOのシンプルな造形だ。

見た目はシンプルでも、被った姿にははっきりと違いが現れる。BUCOはヘルメットそのものを格好よく見せるだけでなく、それを被ってバイクに乗るライダーまでスタイリッシュに見せてくれるヘルメットなのである。
(編集協力:株式会社レイト商会)








