ただ速くなるだけではない。アクセルを開けた瞬間の気持ちよさや、街中での扱いやすさ、そして停めて眺めたくなるルックスまで含めてバイクの魅力を底上げしてくれるパーツこそ、本当に欲しくなるカスタムだ。
そんな「乗って気持ちいい」と「見て惚れる」を高い次元で両立してきたのがヨシムラである。もしDR-Z4S/SMを手に入れたなら、次に気になるのは間違いなく“どんなマフラーを組むか”ではないだろうか。
発売以来、本格トレール/モタードモデルとして人気を博している4ストロークシングルエンジンのスズキDR-Z4S/SM。そしてスズキの車両といえばヨシムラだ。そのヨシムラが今急ピッチで発売に向けて開発しているスリップオンマフラーに迫ってみたい。
力は出ているが〝扱いづらい〟かも!?のUSヨシムラ製マフラー…
そこで国内仕様では〝扱いやすさ〟に重点を置いた
スズキDR-Z4S/SMが好調だ。119万9000円というプライスでありながら、久々の400ccトレール/モタード、それも名車・DR-Z400を生み出したスズキの400ccトレール/モタードということで、期待にたがわぬパフォーマンスが人気の秘密なのだろう。

そんな注目モデルに、いち早く反応したのがヨシムラである。しかも今回の取り組みは、単に新型車向けのマフラーを開発する、というだけの話ではない。ヨシムラがどんな思想で車両と向き合ってきたのかを知ると、今回のDR-Z4SMに対するアプローチも、より興味深く見えてくる。
車両をトータルで造るコンストラクターという立ち位置の〝ヨシムラ〟
ヨシムラは、単なるチューニングメーカーではない。マフラーや機能部品を開発するだけでなく、車両全体を含めた一台をトータルで作り上げる“コンストラクター”として、独自の地位を築いてきた。
今でこそスズキのイメージが強いが、CB750FOUR、〝Z1〟こと900スーパーフォアといった車両を手がけ、日本モータースポーツの黎明期からその名を海外へ轟かせてきた。鈴鹿8耐をはじめとする国内外のレースの現場で車両全体を高い完成度で仕立て、ヨシムラ創立から70年以上経った今も、そのレースへの情熱は少しも揺らいでいない。

だからこそヨシムラの仕事は、単にパワーを上げるだけでは終わらない。ライダーがどう感じるか、公道でどう気持ちよく走れるか、その車両がどんなキャラクターとして仕上がるのかまで見据えて作り込む。それが、長年にわたって多くのファンを惹きつけてきたヨシムラらしさである。
そして、その思想はDR-Zというモデルにもつながっている。実はヨシムラとDR-Zの関係は今回が初めてではなく、過去にはこの先代の車両をベースにした特別なコンプリートマシンまで存在していた。そう考えると、現行DR-Z4SMに再びヨシムラが取り組むことには、しっかりとした文脈があるのだ。
伝説のM450Rから続く、ヨシムラとDR-Zの深い関係
そんなヨシムラが、早速DR-Zのパフォーマンスに注目した。実はヨシムラは2003年に、先代のDR-Z400Sをベースに、コンプリートマシンM450Rを限定製作販売したことがあり、縁浅からぬモデルでもあるのだ。ヨシムラM450Rは、チューニングの度合いによってSPEC1/2/3と分かれていて、総限定台数13台という超レアモデル。ボンネビルや1135R刀、零50にも並び称される伝説級のマシンだ。
「久しぶりの400ccトレール/モタード、しかもかなりガチで開発されたスポーツモデルということで、さっそく僕たちも開発をスタートしました。ヨシムラのアメリカ法人であるUSヨシムラが販売しているスリップオンマフラーをベースに、日本専用仕様に開発し直すものです」というのは、ヨシムラジャパン・マフラー事業部の羽柴卓哉さん。

羽柴さんは、ちょうどモトクロッサーが2ストロークから4ストロークに移行する時期に、スズキのワークスモトクロッサー用マフラーを開発していた方で、言わば4ストローク単気筒エンジンのエキスパート。これまでヨシムラではCRF250LやV-STROM250、KLX230などオフロードモデルにマフラーをラインアップしているが、DR-Z4SMはやはり別物だという。
日本仕様で狙ったのは“速さ”だけではない

「ノーマルでもいいパワー出ていますね。しかもUSヨシムラが開発したDR-Z4SM用マフラーは公道不可のレーシングマフラーだから、国内で、しかもストリートで乗るにはパワーがありすぎて扱いづらいと思いました。それを国内専用に開発し直したんですが、まずはサイレンサーはRS12のまま開発をスタート。USヨシムラではオフロードやモトクロッサー用はRS12サイレンサーを使っているので、そのイメージで行こうと」



まずは出力特性を日本用にアジャスト。アメリカで発売しているモデルを日本仕様とするのは、やはり騒音/排出ガス規制への対応なのだろうか。
「そういう理由もあるのですが、出力特性も日本での使用をかなり考えてのリセッティングですね。高回転はそんなに伸びなくていいから、特に中回転域のトルクを出してあげて、よく使う低~中回転域で神経質になりすぎない、アクセルの開けやすさですね。音量は、サイレンサー内部構造を専用設計して国内の規制に合わせていますが、音量を下げてパワー面がデチューンとならないように気をつけました。USヨシムラ用のマフラーをベースにする分、ゼロから開発するより難しかったですね」
ちなみにUSヨシムラのDR-Z4SM用マフラーでは、馬力は8000rpmで4.1%アップというから、日本と同じ最高出力38ps/8000rpmが約40psになり、しかもオーバーレブ特性も改善されている。
このUSヨシムラのDR-Z4SM用マフラーをそのまま日本でストリート使用とすると、やはり力が出すぎていて乗りづらいのだそうで、おそらく3~4000rpmあたりのアクセルON/OFFをもっとイージーにできるようなマフラーとしているようだ。
速さだけを求めるなら、単純にパワーを上げればいい。だが、公道で気持ちよく走れる1本に仕上げるには、ライダーがよく使う回転域での扱いやすさや、開けやすさの作り込みが欠かせない。ここに、レース屋でありながらストリートユースも知り尽くすヨシムラらしさが見えてくる。

コンプリート発売に期待!


そしてプロトタイプまで完成したヨシムラDR-Z4SMは、3月に開催された東京モーターサイクルショーに出展。世界耐久マシンGSX-R1000Rや、人気のビッグバイクCB1000FやZ900RS、GSX-8TTやモンキー125のヨシムラカスタムが並ぶ中、ブースのセンターに展示されたのが、このDR-Z4SMだったのだ。


走りだけでなく、見た目まで一気に引き締める
ノーマルでは単色のカラーバリエーションしかないDR-Z4SMだが、ヨシムラDR-Z4SMは、これぞヨシムラカラーというブラック×レッドに彩られている。これはペイントではなく、バイナルグラフィック、つまりグラフィックデカールなのだ。

「オフロードスタイルの外装パーツは部材が薄くて柔軟性があるので、ペイントは色層が定着しづらいんです。だからモトクロッサーでもよく使うグラフィックデカールとしました。これならば、林道へ行って枝葉で傷がついても、万一の転倒でもすぐに張り替えれば済むし、なにより手軽なんです」というのはヨシムラジャパン・パーツ事業部の松永風悟さん。デザインのイメージは、やはりあの伝説のM450R!


「M450風になりすぎず、ヨシムラの現代のイメージである世界耐久マシンのエッセンスも入れたデザインで、昔っぽすぎない、新しすぎないデザインとしました。今回はベースカラーがDR-Z4SMのグレー(注:カラー名ソリッドアイアングレー)なので、このブラック×レッドが映えています」
マフラー開発の話題から入りつつも、最終的に目を奪われるのは車体全体の完成度だ。性能パーツだけでなく、見た瞬間に「カッコいい」と思わせるトータルコーディネートまで成立しているあたりも、ヨシムラが長年ファンを惹きつけてきた理由のひとつだろう。
フェンダーレスでリアまわりもシャープに

さらにこのヨシムラDR-Z4SMを引き締めているのがリアのフェンダーレスキットだ。ノーマルのDR-Z4SMは、市販車の宿命か、泥はねに対応するロングリアフェンダーとなっているが、ヨシムラDR-Z4SMは最小限のリアセットとしてシャープさを増しているのだ。
「ノーマルのリアセクションは、配線をうまく隠したレイアウトとなっているんですが、そこをうまく引き継いだフェンダーレスとしました。やはり、いかにフェンダーのステーとブラケットをスッキリさせるかというところに苦心しましたね。ヨシムラとしても久しぶりのオフロード車用フェンダーレスです」というのは、ヨシムラジャパン・パーツ事業部の阿部隼也さん。


苦心して開発されたキットだけに、LEDテールランプはカプラーオンで装着可能。基本仕様はノーマルウィンカー対応となっており、写真の車両ではカスタムの一例としてキジマ製の極小NANOウィンカーを組み合わせている。




DR-Z4SMの魅力を、ヨシムラがさらに引き上げる

ヨシムラといえば、やはりビッグバイクや並列4気筒モデルのカスタムパーツ、というイメージがあるが、今回のDR-Z4SMは、オフロード&モタードという意味でも久々の作品だし、新境地でもある。特にラッピングでのカラーリングキットのラインアップも検討しているし、それがコンプリートモデルまで行けたらいいナ、とパーツ事業部の松永さんがつぶやいた。

単にマフラーを交換するだけではなく、走りの質感も、日常での扱いやすさも、見た目の満足感も底上げしてくれそうな今回のヨシムラDR-Z4SM。ベース車の魅力が高いからこそ、ヨシムラが手を入れたときの伸びしろもまた大きい。今後マフラーが正式リリースされ、さらに外装やフェンダーレスなどのパーツ展開が進めば、DR-Z4SMはますます“欲しくなる1台”へ近づいていきそうだ。
やはり、ヨシムラがさわると、バイクが何倍も魅力的になる!
(編集協力:株式会社ヨシムラジャパン)








