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名車の里帰り「メグロ・キャノンボール」

※記事内容は全て執筆時点の情報です。

MotoMeganeをご覧になっている皆様、MOTOINFOは、一般社団法人 日本自動車工業会(自工会)が運営する二輪車に関する情報メディアです。今回はMotoMeganeにて、ライダーの皆さんや、これからバイクに乗りたいと思っている方に、二輪車の楽しさや利便性、安全・快適に楽しむための情報を発信しますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

カワサキの伝統を語るうえで欠かせないブランド「メグロ」。そのファンミーティングである「第5回 メグロ・キャノンボール 那須烏山」が2025年11月2日(日)、メグロの故郷・那須烏山(なすからすやま / 栃木県)の山あげ会館前駐車場にて開催されました。3年にわたるレストアプロジェクトの完成に加え、デビューしたばかりのカワサキ「MEGURO S1」も登場。新旧メグロが聖地に集結した模様をレポートします。

MOTO INFO掲載日:2025年12月1日

目次

メグロの由来と那須烏山との関係

今から約100年前の大正13(1924)年、東京都の目黒川の近くで「目黒製作所」は創業しました。当時の住所は「東京府荏原郡大崎町桐ケ谷」で、現在の東京都品川区にあたります。目黒駅や目黒不動尊などが社屋の近くにあったことが社名の由来となり、この名がモーターサイクルブランド「メグロ」として知られるようになりました。

変速機メーカーとして高い評価を得た目黒製作所は、昭和7(1932)年に排気量498ccの空冷4ストローク単気筒エンジンを自社開発し、他の二輪メーカーに供給するようになります。そして昭和12(1937)年、満を持して自社初の完成車「Z97型」を発売しました。当時、500ccといえば大排気量クラスであり、しかもスポーツモデルからの参入は極めて稀でした。この記念すべきメグロ第一号車は、昭和14(1939)年に10台が警視庁に白バイとして登用されています。

昭和16(1941)年12月、日本は太平洋戦争に突入。状況が激化するなか、昭和19(1944)年に目黒製作所は二輪車の生産設備を栃木県那須郡烏山町(現:栃木県那須烏山市)に疎開させます。この地が選ばれた理由を明記した資料は残っていませんが、東北本線の宝積寺駅から烏山駅までを結ぶ国鉄(現:JR)烏山線という鉄路が当時からあったこと、また同時期に戦車を生産する東京動力機械製造という会社が烏山町に疎開していたことなどが影響していると考えられています。

東京大空襲により都内の本社工場は全焼しましたが、烏山工場は健在でした。そして終戦翌年の昭和21(1946)年にトランスミッションの生産を再開、昭和23(1948)年にメグロZの生産を再開しました。当時、周辺には下請け工場も数多く設立されたことから、最盛期には約1/3の町民が何らかの形で目黒製作所に関わっていました。現在も那須烏山市には、メグロの優れた技術を受け継ぐ工作所が現存しています。

戦前から続いた“大排気量の名門”であるメグロは、昭和35(1960)年に川崎航空機工業(現:カワサキモータース)と業務提携を結び、昭和39(1964)年に合併しました。これにより40年続いた目黒製作所は終焉を迎えましたが、カワサキへと移籍した技術者たちは新天地でその手腕を遺憾なく発揮。「650-W1」や「900 Super4(Z1)」といった名車を世に送り出すことに貢献しました。

メグロ・キャノンボール那須烏山 イベントレポート

2020年11月、カワサキが「W800」をベースとした「メグロK3」の発表とともに「メグロ」ブランドの復活を宣言しました。目黒製作所 烏山工場があったことから、那須烏山市でメグロK3のプロモーションムービーが撮影され、これをきっかけに市内の有志が立ち上がり、2021年11月7日に「第1回 メグロ・キャノンボール 那須烏山」が開催されました。

このときのプロモーションムービーの撮影を担当したスタッフによると、那須烏山市内での撮影時に「まぁ、メグロね。懐かしいわ」と、ご高齢の方に何度も声をかけられたそうです。目黒製作所と那須烏山市との深い繋がりを感じさせるエピソードです。

最盛期の1959年には、年間の生産台数が1万5000台を超えた目黒製作所。過剰品質とまで言われたこだわりが、今日まで多くの実動車を残すことになったのでしょう

第5回となる今年は11月2日(日)に開催されました。主催者の発表によると、二輪車の入場台数は、2022年の第2回が237台(うち旧メグロは89台)、第3回は270台(同102台)、第4回は383台(同138台、うちメグロK3は54台)と、年々増加傾向にあり、今年は464台となりました。このうち新旧メグロは184台で、2024年11月に発売された「メグロS1」での参加台数は41台でした。

「メグロ」と「他車種」で駐車場所が分けられた会場では、オープンから間もなくメグロ駐車エリアが埋まりました
事前申し込みよりも多くのメグロが来場したため、会場内に新たな駐車スペースが設けられました
こちらはメグロ以外の駐車スペース。会場はバイクで埋め尽くされていました
そこかしこで年齢の垣根を越えた談笑が見られました。新旧メグロのオーナーが語り合う光景は同イベントならでは

会場に整然と並べられていた11台のメグロは、長野県にお住まいの小林 秀樹氏のお父様(故人)が収集されたもので、このたびカワサキモータースへ、展示されている11台のうち9台が寄贈されることが発表されました。

カワサキ正規取扱店「カワサキ プラザ宇都宮北 / カワサキ プラザ宇都宮インターパーク」のブースでは、2台のW800と「W230」が展示されていました
山あげ会館内のメグロ展示スペースでは、2025年3月10日に「ホンダコレクションホール」から寄贈されたメグロ5台(S2、S3、Y2、K、SG)が展示されています
キッズ向けのコーナーでは、ネームタグやひのき木札、和紙フラッグを作るといったコンテンツが充実していました
貴重な旧メグロにまたがって写真が撮れるというのも、メグロの聖地・那須烏山市ならではの魅力です

令和に蘇ったメグロZ

今回の目玉は、2022年より3カ年計画で進めていた那須烏山商工会 工業部会の14社から成る「メグロZ号レストア・プロジェクトチーム」で再生された「メグロZ」のお披露目でした。同モデルは1948年から1951年までのあいだに烏山工場で作られた部品によって製造された945台のうちの1台で、プロジェクトチームには烏山工場の元従業員が創業した会社も含まれていました。

再生にあたっては、当時の塗料を科学的に分析し、燃料タンクに入っているゴールドのラインに松ヤニが使われていたことを突き止めるなど、一般的なレストアの粋を超えた取り組みが行われました。

歓迎セレモニーでは、那須烏山市の川俣 純子市長による挨拶がありました。同氏はバイク免許を持たないものの、獣医でありバイク好きの祖父が所有していた2台のメグロを譲り受け、今も保管しているそうです
いよいよ除幕式。このプロジェクトの主役とも言える2名が登壇します
メグロZをレストアした那須烏山市のカスタムバイクショップ「CROWS performance」代表 澤村 宜樹氏(左)と、本プロジェクトの主催であるカワサキモータース株式会社 営業本部 マーケティング部 マーケティング課 主事 奥村 和磨氏(右)
白い幕が外されメグロZが姿を現すと、拍手と歓声が沸き起こりました
見事に再生されたメグロZ。まるで、ついさっきラインオフしてきたかのような美しい仕上がりです

澤村氏から「最後のボルトを奥村さんに締めていただいて、このプロジェクトは完成します」という言葉を受け、来場者が見守るなか、奥村氏がボルトを締めます。ここで本プロジェクトは完了しました。

そして、澤村氏によってメグロZが始動します
キック始動で目覚めたメグロZ。那須烏山市の空に、再び498ccシングルの快音が響き渡りました
「メグロの聖地 那須烏山」の特別ラベルが貼られたサイダーが配られ、レストア完了およびイベント開催を祝う乾杯が行われました
過去最多となる参加者との記念撮影も行われました

新旧メグロ100台でのパレード

第1回から行われているのが、風光明媚な那須烏山市の那珂川周辺を一周するパレードランです。およそ13kmのルートを30分ほどかけて走るもので、車種を問わず参加は自由。旧メグロ、新メグロなどグループに分かれてメグロの聖地 那須烏山を周遊します。

パレードの時間が近付いてくると、たくさんの住民の方々が沿道に現れ、今か今かと待ち構えます。那須烏山市そのものがライダーを歓迎しているかのような雰囲気が広がっていました。

パレードランのスタートを待つ参加者。実に楽しそうです
那須烏山市の人々に見守られるなか、いよいよ出発!
参加者だけでなく、那須烏山市の皆さんもこのシーンを楽しみにしています
町を縦断する県道102号線を進むパレード一行。沿道で手を振る人々の姿が見られます
那須烏山市を流れる那珂川(なかがわ)に架けられた興野大橋(きょうのおおはし)を渡るパレード一行。ゴールはもうすぐです

オーナーが語るメグロ愛

たまさん (茨城県 / カワサキ メグロ S1)

「主人がカワサキZ1や『Z900RS』に乗っています。ある日、一緒にカワサキ正規取扱店に行ったらメグロK3が展示されていて、『なんてカッコいいバイクがあるんだろう!』と、一目惚れしました。まず普通二輪免許を取得して、続けて大型二輪免許へのステップアップを頑張っていましたが、なかなかうまく行かなかったんです。

ちょうどそんなときに、排気量232ccのメグロS1が発売されると知って、購入を即決しました。はい、私にとっての初バイクです。納車からまだ1年も経っていませんが、すでに8,000kmほど走っています。『メグロ・キャノンボール』には以前から参加したかったので、今回来られて本当に良かったです!」

山本 伸一さん(栃木県 / 61歳 / カワサキ「250メグロSG」)

「若い頃からずっとバイクに乗っていて、スズキ『Vストローム650XT』やホンダ『クロスカブ』、ヤマハ『マグザム』を持っています。この250メグロSGは自分が生まれた年に製造されていたバイクで、愛着があります。実はもう一台、故障したときのための250メグロSGがいるんです。メグロは自分のバイク人生を完遂させる存在で、孫がいつか『メグロに乗りたい』って言ってくれたら譲ろうと思っています。

『第2回 メグロ・キャノンボール 那須烏山』からずっと参加しています。同じバイクブランドを愛する仲間とこうして会える場があるのは嬉しいですね。これからも参加し続けますよ」

「メグロ・キャノンボール」主催者のメグロへの想い

一般社団法人 那須烏山市観光協会
専務理事 事務局長
内田 俊裕氏

「メグロ・キャノンボール 那須烏山」の運営を担っている内田氏は、同イベントと那須烏山市のかかわりやメグロへの想いを次のように語りました。

「今年で5回目を迎えた『メグロ・キャノンボール』には、全国から464台ものバイクが集結しました。昨年は383台でしたから、81台も増えましたね。このうち新旧メグロは184台に及びます。こうした数字からも、イベントの知名度が年々高まっていることを実感します。

『このイベントに参加したくてメグロS1を買いました!』という声を結構お聞きしました。主催者としても素直に嬉しいですね。カワサキモータースとの協力関係も築け、ともに良い効果を生み出せるようになっていると思います。

第1回は有志による手作りのイベントでしたが、第2回からは観光協会や商工会、市が支援する形になりました。私が携わるようになったのは第3回からで、支援してくれる企業や団体の協力を得ながら継続してきました。来年も皆さんが楽しんでいただける場をご用意できるよう、スタッフみんなで準備していきたいと思います。

このイベントを通じて、市内ではメグロの歴史を初めて知る住民も増え、地域の誇りが再発見されつつあります。さらに、カワサキモータースに寄贈していただいた巨大なメグロ看板の前で『写真を撮りたい』というライダーが全国から訪れるようになり、フォトスポットとして認知されてきました。これまではツーリングの通過点でしたが、今では目的地となり、ライダーの皆さんがほぼ毎日訪れてくれています。

『メグロ・キャノンボール』の会場である山あげ会館は、ユネスコの無形文化遺産に選定された『烏山の山あげ行事(山あげ祭)』のための建物です。その1階にあえてメグロの展示スペースを設けたのは、来訪したライダーに山あげ祭を知ってもらい、また一般の観光客にメグロを知るきっかけになればと考えたからです。

那須烏山市が“バイクで訪れたい町”として、多くのライダーに知られるようになることを願っています」

JMS2025にて、ついにメグロZが実走!

「ジャパンモビリティショー2025」の会場・東京ビッグサイト 東棟屋外臨時駐車場に約50台の新旧メグロが集結しました
蘇ったメグロZが、ついに実走!新旧メグロとともに東京を駆けました

先ごろ11日間に渡って開催された「ジャパンモビリティショー2025」にて、11月8日(土)に屋外イベント「メグロ・キャノンボール那須烏山 in 東京ショーラン」が実施され、レストアされたメグロZが実走しました。戦後の都内を走っていたであろうメグロZが奏でるエンジン音は、脈々と受け継がれてきたバイクの歴史を「大切に次世代へと繋いでいって欲しい」という先人からのメッセージのようでした。

メグロK3、メグロS1と、時代に求められる新しいバイクが生み出されつつも、メグロというブランドは変わらず愛されていくことでしょう。

メグロの聖地 那須烏山
https://meguro-nasukarasuyama.com

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