街を走るバイクを見ていると、昼間でもヘッドライトが点いていることがほとんどです。
実は、かつてはスイッチで消灯できるモデルが一般的でしたが、いまや多くのバイクはキーを回した瞬間からライトが点灯する「常時点灯式」となっています。
では、いったいなぜこのような機能が採用されることになったのでしょうか。
昼間の被視認性を高めるためのライト点灯

バイクのヘッドライトは、もともとスイッチで点灯と消灯を切り替えられるものが多く存在しました。
しかし、現在では道路を行き交うバイクのほとんどが昼夜を問わずライトを点灯させており、バイクにはライトを切るスイッチ自体が存在しないことがほとんどです。
では、この変化はどうして起こったのでしょうか。
この背景には、バイク特有の弱点が関係しているといいます。
そもそも、バイクはクルマに比べて車体が小さく、交通の流れの中では相手から見落とされやすいという弱点を抱えています。
特に、昼間は周囲の光に埋もれて存在感が薄れ、ドライバーが接近に気付かないまま進路を塞いでしまうようなケースも想定されます。
実際、こういった「バイクの被視認性の低さ」が一因となって交通事故が発生した事例もあります。
これにより、昼間でもバイクのヘッドライトを点灯させようという考えのもと、1998年に道路運送車両の保安基準が改正され、二輪自動車の前照灯について次のように明記されました。
「二輪自動車に備える走行用前照灯、すれ違い用前照灯及び配光可変型前照灯は、原動機が作動している場合に常にいずれかが点灯している構造であること。ただし、昼間走行灯が点灯している場合にあっては、この限りでない」
これにより、1998年3月31日以降に製造されたバイクは、昼間でも昼間走行灯や前照灯を点灯させる構造をもつことが義務付けられました。
さらに、同年春には日本自動車工業会が交通安全キャンペーンの一環として「見られるためのライトオン」というキャンペーンを展開しました。
これは、昼間からヘッドライトを点灯させることでバイクの存在を周囲に強調し、四輪ドライバーや歩行者、自転車利用者に気付いてもらうことを目的とした取り組みです。
キャンペーン開始当時、すでにライダーの6割以上が昼間点灯を実践していたとされています。
このような経緯により、今日では新車のバイクは例外なく昼間もライトを点けているというわけです。
一部の車両を除けば、走行中にバイクのライトが消えていたら違反

上述の通り、常時点灯は「バイクが見落とされないための仕組み」として制度化されたものです。
では、もし走行中にライトを消したり、消えていたら違反なのでしょうか。
前述のように、1998年に改正された保安基準により、現在販売されているバイクはエンジンが作動している間は、ライトがついている構造であることが義務付けられています。
そのため、球切れなどで走行中にヘッドライトが消えていると「整備不良」とみなされ、違反点数1点と二輪車で6000円、原付で5000円の反則金が科せられます。
さらに、告示により1998年3月31日以前に製造されたバイクについては、常時点灯構造を備えていなくても違反にはあたりません。
しかし、それ以降に製造されたモデルに後からヘッドライトのオンオフ機構を取り付けることは球切れと同様整備不良とされます。
これは単に違反であるだけでなく、車検に適合しません。
なお、夜間にライトを点けずに走行する「無灯火運転」は年式を問わず違反であり、もし該当した場合は違反点数1点に加えて、二輪車で6000円、原付で5000円の反則金が科せられることになります。
まとめ
このように、バイクの常時点灯は小さな車体の被視認性を高め、事故を予防するために制度化されたしくみです。
もし無理に改造してライトを消せるようにすれば、法令違反や整備不良となるおそれがあるだけでなく、安全面のリスクも増大します。
交通の中で安心して走るためにも、常時点灯の趣旨を理解し、余計な改造は控えることが望ましいといえるでしょう。








