SSTRに出走した翌週、感動と疲れが、まだ余韻として残っている中、「ナラハキャンプ 2025」へ参加のために、福島県へバイクを走らせました。
このキャンプイベントは、2017年に雑誌『風まかせ』の読者キャンプミーティングとして第1回を開催。その後、雑誌は休刊となってしまったが、地元有志の方々の手に引き継がれて、イベントは開催されてきました。コロナ禍で、一旦休止となりましたが、2022年から再開しています。
当初は、SSTRでたっぷりバイクで走った後なので、イベントに参加して、1泊2日のキャンプ&ツーリングをのんびり楽しむだけの予定でした。しかし、昭文社のマスキさんから「イベント後に、2023年のと同じく、カソリさんと福島を走りましょう。あ、今回は道案内をよろしくお願いしますね」との申し出が。断る理由はないので、快く快諾です(ちょっと体力が不安でしたが)。福島県内を巡る、3日間のツーリングを楽しみました。
著・中村聡一郎(フィネス)
Route!掲載日:2025年6月30日
【ルート紹介】
一日目は、太平洋岸の「楢葉町」で焚き火を囲むキャンプイベント。
二日目は、阿武隈高地と奥羽山脈を越えて、「会津地方」へ走り、「大内宿」から会津若松、そして猪苗代町の「翁島温泉」で宿泊。
三日目は「裏磐梯」から「磐梯吾妻レークライン」「磐梯吾妻スカイライン」で福島へ。カソリさん、マスキさんと別れて、1人再び阿武隈高地を越えて「楢葉町」でGOALのツーリングです。

【1日目】楢葉町へまっしぐら、常磐道を北へ
「福島3days」とタイトルに書いたものの、出発が遅くなったので、高速道路での移動が中心で、実質半日程度の走行でした。首都高速道路と常磐道で軽く渋滞にはまりましたが、それ以外は順調に走ります。
そろそろ、「梅雨入り」の噂もあったので、心配だった天気も、雨に悩まされた先週のSSTR(サンライズ・サンセット・ツーリング・ラリー)と打って変わって、何とか持ちそうな感じです。

給油が必要になったので、「いわき四倉IC」で高速を降りて、ここからは国道6号で楢葉町へ。前から気になっていた蕎麦店で、昼食をとってから、会場の「天神岬スポーツ公園」[ツーリングマップル東北 P.15(関東甲信越 P.99) M-7]へ到着です。
すでに、マスキさんは、ツーリングマップルのブースの設置を終えていて、ちょっと遅刻したかなと反省です。



16時にイベントの開会宣言があり、第1回の開催に尽力した、斎藤直人さん(雑誌『風まかせ』の元編集長)、カメラマンの武田大祐さん、ライターの谷田貝さんのご挨拶、そして、カソリさんに、マスキさんも加えてのトークショー。記念写真の撮影が終わったら、お楽しみの焚き火まで、思い思いの時間を過ごします。


トークショーでは、人気通販番組のようなセールストークで日本の「旧国名」がわかる「手ぬぐい」もご紹介。この後、続々とブースに購入者が

段々と日が暮れて、空に月も出てきた頃、焚き火がスタート。今年は、場所が変わってキャンプサイトから見えにくい場所だったんですが、それでも、一人二人と集まってきて、燃え上がる炎を見ながら、会話の輪が生まれていく、いつもの光景を見られました。


【2日目】楢葉から会津へ。カソリさんと再会(?)です
明けて日曜日。テントを出れば、今日もいい天気。と、携帯を見るとマスキさんから着信の履歴。
「あ、寝坊してしまった」
あわてて、本人を見つけると、すでに出発の準備が済んでいる様子。
「もう、カソリさんは行ってしまいました。昼ぐらいに合流できるように早く出発しないと」
実はカソリさんは、福島県南会津町で本日開催の「南郷ひめさゆりバイクミーティング」にもゲストとして呼ばれていたので、早朝出発していました。
これは、まずいと、慌ただしくテントを撤収して、天神岬スポーツ公園を出発です。


楢葉町から富岡町を経由して、川内村、小野町と西へ。「あぶくま高原道路」の無料区間を走り、石川町の「パン工房 星の屋」で、モーニング。
会津へは天栄村の「鳳坂峠(ほうさかとうげ)」越えのルートを選択。延長約2.5kmの「鳳坂トンネル」で、あっというまに峠を越えて、下郷町へ。国道121号を会津田島方面へ南下して、どこでカソリさんを待つか、思案していたら、「下郷町物産館」が目に入ったので、ここで待つことにします。





「下郷町物産館」でのんびり休んでいたら、イベントでの大役を終えたカソリさんが到着。向こうのイベントも、多くのライダーが集まって盛り上がっていたそうです。
さて、物産館には食堂の「ごっつお庵」が併設。ちょうど、時間も良いので、ここで昼食をとっていこう、ということになりました。


さて、お待たせしました。いよいよアフター楢葉キャンプ、3人での福島ツーリングスタートです。今夜の宿は、猪苗代湖の北、磐梯山の山麓、猪苗代町の「翁島温泉」。そこまで、「大内宿」経由で、向かうことにします。
国道121号をもう少し南下して、県道131号で「大内宿」[ツーリングマップル東北 P.13(関東甲信越 P.97)B-5]へ。明治時代に、日本での旅を『日本奥地紀行』として、記した女性探検家のイザベラバードの足跡を辿るように、旧会津西街道を進みます。





中山峠を越えて、道を下ると、古い町並みが保存されている大内宿です。車は有料ですが、オートバイの駐車場は嬉しいことに無料です。
茅葺き屋根の古い建物が残る、街並みの散策を楽しんだら北へ。大内ダムの湖畔で、臨時実走調査を行ないつつ、氷玉峠(ひだまとうげ)を越えて会津盆地へ。なお、イザベラバードは、西側の市野峠を越えて、西会津、そして新潟へ向かっています。




会津若松へ向かう前に、「猫駅長」が人気の会津鉄道の「芦ノ牧温泉駅」に寄ってみましたが、残念ながら、駅長の「さくら」は勤務時間終了で会うことが出来ませんでした。
夕食は、カソリさんに「ご当地グルメを食べたいですね」と相談をしたところ、おすすめされた国道49号沿いの「十文字屋」へ。「十文字ラーメン」にも心が動いたのですが、一番人気という「磐梯かつ丼」を注文。これが、想像以上のボリュームでしたが、私は完食。マスキさん、カソリさんは、食べきれずに持ち帰りになりました。
その後、翁島温泉に到着して、2日目も無事終了です。翁島温泉の名湯で疲れを癒やして、明日は寝坊しないように、早めに就寝です。




【3日目】じつは凄かった「翁島」の歴史に感嘆!そして、絶景のスカイラインへ
天気予報では、今日から関東地域も梅雨入りで、天気は下り坂と聞いていました。東北も好天は望めないかな、と思っていましたが、起きてみれば、青空が広がっていて、ハートフルな一日が始まりそうな予感です。昨夜は、夜で見えなかった磐梯山も、浴場の窓からその姿をしっかりと見られました。
朝食までの時間、旅館周辺を散策です。歩いてすぐの場所には磐越西線のJR翁島駅。この駅は、旧千円札の肖像画が描かれていた「野口英世」の生家の最寄り駅でした。駅前には、当時の様子を伝える掲示があり、そこには米国留学を終えて帰ってきた地元の名士を出迎える人達を「野口英世」本人が撮影した画像もありました。



旅館に戻って朝食です。
「今日は磐梯山ゴールドラインで裏磐梯に登って、磐梯吾妻スカイラインを目指しましょうか」
と、ルートを決めたのですが、ここで旅館のご主人から、「野口英世」の逸話から、周辺の土地の歴史まで、いろいろな話しを聞くことになります。
そして、「JR翁島駅」はかつて猪苗代湖畔にあった別荘(現在の天鏡閣)へ、皇族が行くときに使ったこと。昭和天皇が新婚旅行で来たのも、ここだったことを知ります。そして、貴賓室もあったという当時の駅舎が保存されていると聞いて、
「それはぜひ見ておきましょう!」
と、カソリさんのひと言で、ルートを変更、まずは「緑の村」を目指します。


いなわしろカワセミ水族館や釣り堀もある「緑の村」[ツーリングマップル東北 P.18(関東甲信越 P.103) I-6]の駐車場に入ると、すぐ目の前に移築保存された「旧翁島駅」がありました。現在は食堂として利用されていますが、営業日は週末と休日で、残念ながら、中に入ることは出来ず。貴賓室も見られるそうですが、次は営業日に訪問したいです。


猪苗代町で「鳥居杉」、「猪苗代城(亀ヶ城)」、「見称(みね)の大石」を見学して、さぁ裏磐梯へ。
南側からの姿はしっかりと見た「磐梯山」。
「桧原湖の西岸からみる磐梯山も必見ですよ」
と、カソリさん。桧原湖の西岸を走ってビューポイントにバイクを停めて、爆裂火口の荒々しい景観が印象的な、裏磐梯からの磐梯山を見ます。




道を戻って、「道の駅裏磐梯」[ツーリングマップル東北 P.18(関東甲信越 P.103)H-3]に立ち寄ります。トイレ休憩だけの予定でしたが、カソリさんから特産品の「山塩」を使った料理をおすすめされたので、ここで昼食タイムとすることに。さらに、美味しいジェラートも味わって、元気満タンで、再スタートです。



裏磐梯の剣ヶ峯地区まで戻って、磐梯吾妻レークラインへ入ります。小野川湖と秋元湖に挟まれた尾根の上を走る快走路で、裏磐梯の湖沼や森の景観が楽しめます。東側には「中津川渓谷」[ツーリングマップル東北 P.18(関東甲信越 P.103)K-2]があり、中津川橋から見下ろすこともできます。



国道115号へ出たら、標高1240mの「土湯峠」へ。ここから今回のツーリングのハイライト「磐梯吾妻スカイライン」へ入ります。
残念ながら、青空が消えて、雨が降り出しそうな天候になりましたが、標高が上がるにつれて、景観もダイナミックになっていって、森の向こうには雪が残る「安達太良山」も見えます。路面には標高がところどころに書いてあって、最高地点(1622m)が近づいていることを実感できます。
その、スカイライン最高地点(1622m)を過ぎてしばらく進むと、浄土平です。浄土平レストハウス[ツーリングマップル東北 P.24 B-7]があって、独特の山岳風景と吾妻小富士の姿がじつに印象的です。



浄土平を出ると、すぐに荒涼とした岩場が広がる火山地帯で、さらに進むと「不動沢橋」です。目がくらみそうな深い渓谷にかかる、美しいアーチ橋で、眼下には福島の市街がちらりと見えました。


「不動沢橋」からはノンストップで磐梯吾妻スカイラインを下って福島市へ。東北中央自動車道の福島大笹生(ふくしまおおざそう)ICそばの「道の駅ふくしま」[ツーリングマップル東北 P.24 G-4]で、解散にします。カソリさん、マスキさんを見送ってから、私も道の駅を出発して帰路へ着きました。




【福島3日間の旅を振りかえって】
今年も無事開催された楢葉町でのキャンプイベント。焚き火を囲むひと時に、あらためてキャンプの楽しさを実感しました。思いおこしてみれば、今は「ならはCANvas」にスーパーやホームセンターがあって、買物には不自由しないのですが、当時は確か小さな店舗がひとつだけでした。到着してからの買い出しに難儀したことを思い出します。
いわき市を過ぎると、国道沿いには東日本大震災から、営業を止めたままの店舗やガソリンスタンドがあったりと、まだ復興途上でのイベント開催はかなりのチャレンジだったのだろうと思います。
そんな、楢葉でのキャンプイベントは、多くのライダーが集まるイベントになりました。今年の参加者は170人だったそうです。そして、2026年も同じ時期に開催予定とのことです。SSTRにゴールした後に、能登半島から楢葉を目指すのも面白いかも、とふと思いましたが、果たしてどうなるでしょうか。
そして、イベント後のカソリさん、マスキさんとのツーリングは、予想と反して、天候に恵まれた、「福島」を存分に楽しむ旅になりました。
「旅をしている実感」をひしひしと感じた、会津盆地への旧街道をたどる峠越え。「玉の湯旅館」で思いがけず知ることになった「翁島駅」の歴史。そして、「気分爽快の快走路を走る楽しさ」を存分に感じた「磐梯吾妻レークライン」と「磐梯吾妻スカイライン」。本当に、充実の2日間でした。
〜僕らは今、旅の途中〜 常に進化を遂げてきたライダーのバイブル
ライダーと共に創る地図「ツーリングマップル」は、ライダーの実走取材によるジャンルも内容も多種多様なコメント情報が特徴です。長きに渡り、旅人の信頼を得ています。文字サイズが大きくなったR版(リング版)は、開きやすく使いやすい仕様です。
また、スマホ用アプリ「Route!(ルート)」では、地図の継ぎ目なく表示や自位置確認、走行ログの記録が可能で、書籍とアプリを併用することで、旅の計画から現地での活用まで幅広く対応できます。メディアサイトでも、旅のノウハウやエッセイ、新しい道路・施設・製品のニュースや、編集部セレクトの動画などが閲覧できます。
この記事では「ツーリングマップル」協力のもと、モトメガネ編集部で記事を再編集。今後もさまざまなバイク情報を取り上げていきます。







